悪役令息は国外追放されたい

真魚

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悪役令息は国外追放されたい

 俺、ギュスターヴ・オーベリュニュは明日、陰謀罪で逮捕され、よくて国外追放、悪ければギロチンの運命だ。
 罪状は、第二王子リュシアン殿下と恋仲にある、聖女エリアーヌを陥れようとした罪。
 未遂なのに厳しい罰が下されるのは、聖女がこの国の平和と豊穣をもたらす存在だからだ。そんな女神を殺そうとする者など、二度と聖女に近づけないよう抹殺されなくてはならない。

 確かに、エリアーヌのことは嫌いだった。
 俺とは違い、純真無垢で朗らか。リュシアンの側にいるのに相応しい女性ひとだ。
 俺は、口を開けば罵詈雑言ばかり。
 というか、そもそも男だ。
 リュシアンの心など手に入れられるはずもない。

 王族貴族が通う学院で、俺とリュシアンは身分は違えど、仲の良い学友だった。
 平民上がりの彼女が転入してくるまでは。

 今までこれといった浮いた話のなかったリュシアンは、彼女に夢中になった。
 彼女を愛おしげに見つめるリュシアンの目に、俺は耐えられなかった。
 だいぶ、彼女をこき下ろすような言動を繰り返してしまった。

 しかし流石に、この間のエリアーヌの誘拐監禁事件の黒幕は、俺ではない。
 でも前世の俺の記憶がはっきりと告げるのだ。
 悪役令息ギュスターヴは、明日断罪されると。


「何を考えている? 口が疎かになってるぞ」
 四つん這いになった俺の前に、立派なペニスを突き出した男が俺の髪を強く掴んで、腰を振る。
 俺はむせびながら、その美味しい肉棒を喉奥に迎え入れた。

 俺には人に言えない性癖がある。
 虐められると感じてしまうのだ。

 最近知ったこの隠れ家的娼館は、秘密厳守かつ色々なプレイを提供している。
 俺の毎回の指名は、SMプレイをしてくれるこのリュカだ。

 黒いマスクをし、革のピタピタのパンツのスリットからその立派なものを出しているリュカが、俺の口からそれを抜き出し、俺の顔に当てる。
 自分の唾液でベトベトになったそれが、何度も俺の顔をベチベチと叩くと、俺の呼吸は犬のように上がっていく。
 あぁ、リュカのペニスの匂いがたまらない。

 なによりリュカは、リュシアンと声が似ている。暗くてよく見えないが、目もリュシアンと同じ深い青色だ。
 黒いマスクをとった素顔を見たことはないが、おそらくかなり整った顔をしているんじゃないかと思う。
 惜しむらくは、金髪ではないことだ。いや、黒髪もエロくていいと思うが、俺はリュシアンの日に透ける金髪が好きだ。

 リュカが、ベッドの上で四つん這いになっている俺を仰向けに押し倒した。
「で、なんであなたはそんなに国外に行きたいんですか?」
 そう言いつつ、リュカは手際よく俺の両腕を革紐で拘束し、ヘッドボードの突起にくくり付ける。

 俺はことあるごとに、リュカに国外に行きたいと話していた。
 だって、ギロチンよりか国外追放の方が、断然マシだろう。

 国外の色々なものを見てみたい。誰も俺のことを知らない人々の中で暮らしてみたい。などと、説明してきたつもりだが、リュカは結構しつこくこの話題をふってくる。
 
 今日はふと、別の理由を言ってみたくなった。
「恋に破れたんだ。もう、この国にいたくない」
「……どんな人を好きだったんだ?」
 リュカが手を止め、こちらを見下ろした。

「太陽のように眩しくて、真っ直ぐで、弱い者に優しい人だ」
「ふうん……」
 リュカが俺の鼠蹊部にそわそわと指を這わせ始めた。
 ゾワゾワと上がってくる快楽に、俺のペニスが期待に震える。

「でも、失恋してしまったんだろ。さっさと忘れて、次に行けばいい」
 リュカは俺の腹の陰毛をなぞるが、なかなか俺のペニスには触ってくれない。
「……忘れようと思って忘れられるなら、とっくにそうしている」
 そう言った俺を冷たく見下ろしたリュカが、乳首に手を伸ばし、軽くつねる。
「あっ……」
 痛みのはずなのに快楽が俺の腰に響き、ペニスがビクリと跳ねる。

「その人は俺みたいに、あなたのいいところを虐めてくれたりしないだろ」
 リュカが今度は優しく乳首の周りに指を回す。
 肝心な乳首の先端に触れてくれないその指がもどかしく、なんとか触ってもらえないかと胸が勝手にモゾモゾと動く。

「……いいんだ。俺はその人が一瞬笑いかけてくれるだけで……十分幸せなんだ」
 俺の言動がイマイチ気に入らないのか、リュカが不機嫌な様子で顔を近づけてきた。
 両腕を固定されて動けない俺の唇を、リュカが荒々しく啄んだ。
 
 ……ええっ?
 いつもは冷静なリュカが、今日は様子が少しおかしい。
 今まで性器を虐めてはもらっていたが、キスなどしたことはない。

 リュカの舌が容赦なく俺の口内を貪る。
 お互いの唾液があふれて、俺の口横から垂れていく。

 ……あぁ、これ、俺のファーストキスってやつなんじゃないかな……
 SM男娼に奪われるなんて、笑ってしまう。
 一度でいいから、リュシアンとキスをしてみたかった……
 どっかで、ふざけて頬にでも口付けておけばよかったなぁ……

 心はずっと好きだったリュシアンを思い浮かべるが、体はリュカの性技にどんどん反応していく。
 口の中って、こんなに感じるのか……
 激しく動くリュカの舌を俺の舌で追いかける。
 
 長い口付けを終わらせたリュカは、ギラギラした目で俺を見下ろした。
 いつもの冷たく見下ろす視線もいいが、どこか怒りを含むような熱い視線もなかなか刺激的だ。
 
「脚をかかえろ」
 リュカに命令されて、両膝を抱える。
 俺のペニスとアヌスがみっともなくリュカの目にさらされる。
 
 俺の亀頭にローションがたっぷりと垂らされた。
 尻まで流れ落ちたそれが、俺のアヌスに溜まっていく。
 
 リュカが俺のアヌスのローションをくるくると塗り込め始めた。
 時々蕾の中心をちょっと押すその指先に、俺のアヌスがクパクパと物欲しげに口を開ける。
 
 ここに通っている間にすっかりアヌスを開発されてしまった俺は、リュカの指が前立腺を裏からさすってくれるのが待ち遠しくてたまらない。
 それなのにリュカは、なかなかその節張った長い指を俺に挿れてくれない。

「……挿れて」
 そう懇願するも、リュカは意地悪そうに笑いながら、俺のアヌスの入り口をたださする。

「リュカ、挿れてくれ……」
 俺の腰が、物欲しげにリュカの指にアヌスを押し付ける。

「ふふ……」
 リュカはみっともなく彼の指を欲しがる俺を見て、楽しそうだ。

 散々焦らした挙句、やっとリュカは俺のアヌスに中指をゆっくり挿入し始めた。
「あぁ……」
 入り込んでくるその指に押されて、俺のペニスに精子が込み上げてくる。

 射精しそうになっている俺をみて、リュカがもう一方の手で俺のペニスの根本をグッと抑え付けた。

 出したくても出せない状態で、リュカがアヌスの中の指をいやらしく抜き差しする。
 抜く時に俺の前立腺をコリコリと弄るのも忘れない。

「あ゛ぁっ……リュカ! あ゛ぁっ!!」

 気が狂いそうな快楽に、俺の腰が暴れる。

「出したい! 出させて!」

 俺の必死の懇願を、リュカはいつものように無視する。

 リュカが俺のアヌスから指を抜いた。
 俺は上がった息を整える。

 普段は次は、ディルドやビーズをリュカが挿れてくれるのだが、リュカがなんの道具も持たず、俺の上に跨った。
「おい。リュカ?」
 嫌な予感の通り、リュカが自身のペニスを手に持ち、俺のアヌスにあてがってきた。
「ちょっ。やめろっ!」

 この店は本番なしのはずだ。
 俺はこんなところで、セックスなんてするつもりはない。

 俺は逃げようと足をばたつかせるが、リュカが俺を抑える力は思ったよりも強い。
 太ももをがっしりとホールドされ、それが俺の中にめり込んでくる。

 太い杭が俺の体を貫いていく。
 嫌なのに、その圧迫感が気持ちいい。

 リュカは少しづつ腰を揺らしながら、根本までそれを挿し入れた。

「ギュスターヴ、全部入った」
 リュカが再び俺に口付ける。

 おかしい。俺はこの店で本名など名乗ってない。

「ギュスターヴ。俺のギュスターヴ……」
 リュカはいったい何を言っているんだ?

 でも、リュカの声はものすごくリュシアンに似ているのだ。
 目を瞑ると、まるでリュシアンに抱かれているみたいだ。

「ギュスターヴ……」
 リュカが切ない声で俺を呼びながら、ペニスをゆっくりと抽送する。

 気持ちがいい……
 本当は、リュシアンに抱かれたかったのだが、リュカのペニスが俺の中をさすり、快楽が這い上がってくる。

 あぁ、どうせこれが最後だ。
 明日にはギロチンか国外か俺の行く末も分かっていることだろう。

 明日、俺を断罪するリュシアンの顔を見たら、リュシアンに会うことも二度とない。
 リュシアンに声が似ているリュカに抱かれて、本望じゃないか……

 あぁ、リュシアン……
 俺、何やってるのかな……
 俺、男娼に挿入されて、気持ちよくなっちゃてるよ……

 肉体の気持ちの良さと、心の負荷で、涙が滲んでくる。

 リュカが戸惑った顔でこちらを見下ろし、俺の涙を拭う。
「ギュスターヴ、すまない……」
 なんだか、リュカの仕草がリュシアンそっくりだ。

「ギュスターヴ……でも俺は、お前を……」
 リュカが俺の太ももを持って、激しく腰を打ちつけてきた。
 出すつもりか……
 もしかして、中に出されてしまうのか……

 でも、俺の腹の中も、快楽が上り詰めてきている。
 リュカの汗が滴る胸も、躍動する下腹も、俺を押さえつける太ももも見惚れるほど男らしく、重みのある陰嚢が俺の股間にベチベチとぶつかる。

 ダメだ……イってしまう……

 リュカが腰を俺にギュッと押し付け、体を震わすと、俺の体内にリュカの熱い奔流が次々に注ぎ込まれた。
 あぁ、穢されてしまった……
 俺の被虐精神はこの状況を喜び、自分の腹の上に、びゅくびゅくと精液が溢れ出す。
 あぁ……なんてことだ……

 俺は恍惚と後悔がない混ぜのまま、薄らいでいく意識に沈んでいった。

  ※

 結局のところ、俺はギロチンを免れることができた。
 今朝警備隊が屋敷を取り囲み、俺は後ろ手に拘束され、王城に連れて行かれた。
 
 王城で待ち受けていたリュシアンとその手を握る聖女エリアーヌの前に引きずり出され、国外追放が言い渡された。
 
 俺を見るリュシアンの目には何の感慨も宿っておらず、三年に及ぶ俺とリュシアンの友情など、ただの幻影だったと突きつけられる。
 
 願った通りの国外追放だ。
 以前から準備も万端にしてある。
 これから、新しい世界に度立つのだ。
 
 そう思おうとしても、俺の心には、最後に目にしたリュシアンの冷たい顔ばかりが浮かぶ。
 
 俺はその日のうちに粗末な馬車につめこまれ、国境に向かって送られることになった。
 
 スプリングの硬い馬車は酷い揺れのまま、かなりのスピードで道を進んでいく。
 罪人の輸送くらいのんびりやれば良いのに、と馬車を導く騎士にケチをつけたくなる。
 
 王都から十日馬車を走らせ、たどりついたのは、広大な草地が広がる隣国ストレジアとの国境だった。
 ここからは自分の足でどこへなりとも行け。ただし、母国の国境を越えることは二度と許されぬ。と言い渡され、馬車を降ろされた。
 
 一ヶ月ほど生きて行ける手荷物と金が入った荷袋を背負い、母国の方を振り返る。
 さよなら、リュシアン。
 彼の地で幸せに微笑んでいるであろう友を想う。
 
 俺、別にギロチンでもよかったのかもしれない。
 これから、この寂しさを抱えて生きていくのか……
 
 母国を背にし、与えられた馬にまたがり、草原をゆっくり進む。
 この道は隣国ストレジアと母国を結ぶ重要な道だが、通る人は少ない。
 日が暮れぬうちに、中継の宿までたどりつかなければ……
 
 なんとか一つ目の宿にたどりつき、その扉を開ける。チャリンとドアの鈴音が鳴った。
 そこそこ広い宿の建物の中を見渡すと、宿の受付の横の椅子にもたれていた男がこちらを振り向いた。
 
「リュシアン……」
 いる訳がない人がそこに座っている。
「ギュスターヴ、待っていた」
 リュシアンが太陽のように明るい笑顔で立ち上がった。
 
「な……なんでこんなところにいるんだ?」
 俺はリュシアンの所までふらふらと足を進めた。
「聖女から逃げてきた」
 そう言ってリュシアンは俺の手を握った。
 
「部屋は取ってある。行こう」
 リュシアンに手を引かれ、二階に上っていく。
 
 宿のベッドに二人腰掛け、全くつかめない状況をリュシアンに説明してもらう。
「エリアーヌの目を見ると、彼女のことしか考えられなくなるんだ」
 リュシアンが深刻そうな顔で話し始めた。
「それは、恋なんじゃないか?」
 いや、恋だろう。
 リュシアンは何を言っているんだろうか。
 
「違う。俺が好きなのは、ギュスターヴ、お前だけだ」
 手をギュッと握られ、面食らう。
 なんだって?
 今、リュシアンは何て言った?
 
「あろうことか、彼女はお前をギロチンにかけた方がいいと、俺に囁いてきた。そんなことできる訳ないのに、俺は彼女を前にすると、思わず頷きそうになってしまうんだ」
 リュシアンが必死に訴えてくる。

「エリアーヌは、魅了の力を持っているということか?」
「あぁ」
 情報量が多くて、頭が処理しきれない。
 なんかさっき、リュシアンが俺のことを好きだと言った気もする。
 
「お……追いかけてくるんじゃないか? 彼女」
「大丈夫だ。エリアーヌは、ラシュール帝国の皇子と引き合わせておいた」
 あ。隠しキャラルートだ。
 俺の前世の記憶がそう答える。
 
「ギュスターヴ……俺と一緒に、ストレジアに行ってくれないか?」
 リュシアンが握る手に力を込めた。
 
「あぁ。すごく嬉しい」
 俺が答えると、リュシアンが泣きそうな笑顔を見せた。
 リュシアンが俺の後頭部に片手を当て、ゆっくりと顔を近づけてくる。
 
 リュシアンの温かい唇が俺の唇を塞いだ。
 俺は白昼夢でも見ているのだろうか……
 
 しかし、リュシアンの舌が俺の口内に入って喉奥をさする様は、生々しい。
 そして、俺はこのキスを知っている。
 リュカのキスと同じだ。
 
 唇を離して俺をベッドに押し倒すリュシアンに尋ねる。
「リュカ?」
 
「もしかして、全然気が付いてなかった?」
 リュシアンがおかしそうに笑った。
 
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