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強くなるために

国王からの依頼

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 カノンのお陰で命拾いした男性を背負い、俺達はギルドへと戻った。

 なんでも、ゴブリン討伐依頼を達成し、もう少しやれるだろうと森の奥へ歩いていたところを、オークに襲われたそうだ。

 身の丈に合わないことはするもんじゃないね、と救った女性が苦笑いしていた。

 この二人は、まだ駆け出しの冒険者らしく、早く実力を上げて、お金を稼ぎたかったらしい。

「それにして、二人ともお強いですね。」

 俺達は、最近冒険者になったばかりの駆け出しだと答えた。

 駆け出しにCクラスのオークは、荷が重すぎるだろう。

「あれだけの力を持っていて、駆け出しなんて。」

 まぁ、俺達は駆け出しと言っても、レベルはかなり高いけどね。

 そんなたわい無い話をしていると、森を抜けて王都ヘと辿り着いた

 丁度よく男性も目を覚まし、二人にお礼を言われた俺達は、その足でギルドに向かう。

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「カノン様も腕を上げられましたね。今回の依頼達成で、カノン様はCクラスとなりました。」
 グラシアさんが、カノンにカードを返す。

「ありがとうございます!」
 カノンは自身の成長を喜んでいるのか、フサフサな尻尾がユサユサと揺れている。

 俺は、左右に揺れるカノンの尻尾を目で追い掛ける。

 そして、俺の手は自然とカノンの尻尾に伸びて行く。

 だ、ダメだ!?
 俺は何とか欲望を抑え込む。

 俺が一人で葛藤していたので、後ろを振り返ったカノンに不思議がられてしまう。

 ま、まだ、な、何もしてないぞ!?

「クレシェンド様に、国王様から伝言があります。依頼を出したいので、王城まで来て欲しいとのことです。」

 自問自答していた俺に、グラシアさんが伝言を言う。

 国王からの呼び出し?

 報酬なら貰ったけど?
 まさか!?

 返せとか言わないよな?

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 そんな不安を抱えながら、王城へと足を向けた俺は、カノンと共に国王の前に通される。

「よく来てくれた。先ずは、この前の王妃の非礼を詫びよう。すまなかった。」
「いえ。」
 今日は、王妃はいないようだな。

 まぁ、今日も発狂されたら溜まったもんじゃないからな。
 お互いに。

「それで、今日呼び出した用件なのだが、魔王復活の件だ。」
 やっぱり、その件だよな。

 この国一の王国騎士や本部ギルマスが勝てなかった魔族を俺が倒したんだ。

 現状、魔王を倒すなら俺の力は絶対必要になるだろう。

 もしかして、俺を国に抱え込みたいとか?

「魔王は、かつて各種族の英雄達の力によって封印された。魔族の話では魔王の復活が近いらしい。」
 それは、俺も魔族から聞いているし、ボケ神様からも聞かされている。

 その魔王を倒すために、俺はこの世界に飛ばされたらしいからな。

「現状では、魔王はおろか、その配下である魔族にも我々は手を焼いている状況だ。」

 国王の話では、王国騎士や冒険者の更なる戦闘能力の向上を図って行くらしい。

 まぁ、必要だろうな。
 今迄は魔王復活なんて考えたこともなかっただろうけど、魔王復活と聞いてみんな死ぬ気で修行するだろう。

「クレシェンド。君だけが魔王に対抗出来ると私は考えている。」
「……はい。」

 魔族を倒したからな。

「しかし、君一人で魔王に対抗出来ても、勝利するのは厳しいかも知れない。かつての英雄達ですら、封印するのがやっとだったらしいからな。だから、君には他種族の仲間を集めて欲しい。」
「仲間ですか?」

 仲間ならカノンがいますけど?

「ああ。かつて魔王を封印した英雄も、仲間を集め、魔王と戦った。人族では、君の力になれる人物は見つからないかも知れないが、他種族になら、君の力になれる者がいるかも知れない。強き者の下には自然と仲間が集まるものだ。」
「……なるほど。」
 つまり、世界を旅して仲間を集めて来いってことか?

「私から君への依頼は魔王討伐だ。その為に、世界を周り、仲間を集めて欲しい。」
 国王が深々と頭を下げたため、周りの大臣が騒ぎ出す。

 国王様が簡単に頭を下げてはいけません、などと騒いでいたが。

「魔王討伐などと言う、無理難題を頼むのだぞ!?  私の頭など、幾らでも下げよう!」
 国王の必死さが伝わったのか、大臣達が押し黙る。

「分かりました。魔王討伐依頼、引き受けます。」
 国王から何度も感謝の言葉が送られた。

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 宿屋へと戻った俺達は、今後の方針について話し合うことにした。

 現在、この世界の地図を購入して、地図とにらめっこ中だ。

「どのルートが一番効率が良いかな?」
「獣人族の国、ヴォルフガング王国はどうかな?  ここから一番近い距離だし。」
 んーー、獣人族ならカノンがいるからなぁ。

 でも、各種族一人って決まってる訳でもないか。

 よし!

「なら、最初の目的地は、獣人族の国、ヴォルフガング王国だ。」
 こうして俺達は、魔王討伐の為に世界を回ることになったのだった。
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