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恐怖のゾンビ

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 俺達は、プルクラさんから『アンデット討伐』依頼を受け、現在はネクスト東側に位置する墓地へと来ていた。

 ゾンビが目撃された時間が夜であったことから、時間指定があり、現在は真夜中である。

 周囲は真っ暗であり、月明かりが真っ暗な墓地を照らしているが、月明かりで照らされている墓地は、薄暗く、余計恐怖心を煽る状況となっている。

「シャイン大丈夫か?」
「……う、うん。」
 シャインは身体を丸めて身を低くし、周囲をキョロキョロと警戒している。

 かなり萎縮してしまっているようだな。

 この薄気味悪さじゃ、無理もないよな。

「な、中々雰囲気あるじゃねぇか。」
 ヴァンも強がっているが、顔が怖いと物語っている。

「何だ?  ヴァンもこういうのは苦手だったのか?」
 お前のような大男がビビってどうする。

「に、苦手じゃねぇし!  寧ろ、楽しくなってきたところだ!」
 そんなに声を震わせて、棒読みの台詞でよく言うよ。

「何だか、寒気がするわね。」
 シグレも自分の腕で身体を抱きしめていることから、恐怖を感じているようだ。

「そうだね。リアルにあるお化け屋敷よりも怖いね。」
 スノウは、剣を構えていつでもゾンビを迎撃する態勢を整えている。

「それにしても、アンデット討伐依頼なのにモンスターと遭遇しないな。」
 俺達が墓地に着いてからしばらく経つのだが、未だにアンデットに遭遇していない。

「俺らにビビって逃げ出したんだろぜ!」
 そんな訳ないだろ?  それじゃクエストにならないし。

 ガサガサガサガサ

「うおっ!?」
 突然強風が発生し、墓地の草木を激しく揺らし、大きな音を発生させる。

 ヴァン、お前が一番ビビってるじゃねぇかよ!

「ビビらせやがって!  只の風じゃねぇか。」
 ヴァンの大声の方がびっくりだよ。

 俺達が墓地の真ん中に到着するが、何も発生しない。

「どうするか?  何も出て来ないな。」
 何故何も起こらないのだろうか?  出現する曜日や細かい時間設定でもあるのだろうか?

「取り敢えず、付近を探してみるか?」
 このまま手ぶらで帰るのも何だしな。

 俺達は、少し間隔を広げて、周囲の検索を始めた。

 この後、俺は間隔を広げたことを後悔することとなる。

「「「「「ガアァ!」」」」」
 俺達が別行動を開始した途端に、突如としてゾンビが襲いかかって来たのである。

 まさか、出現条件に単独行動や、仲間との一定の距離が必要だったのか?

 それにしても、何とも醜悪な面をしているゾンビだ。

 ゾンビの見た目は、目玉が飛び出している者や、片腕が無い者、血だらけになっている者、歯が鋭くなっている者、皮膚の色が赤紫にドス黒い者など、多種多様だった。

「いやーー!?」
 シャインが突然目の前に現れたゾンビに、気が動転してしまい、走って墓地の奥へと進んでしまう。

「待てシャイン!?  聞こえてないのか。」
 このまま一人にしておくのは危険過ぎる。

「ちょっと来ないでよ!?」
 シグレも急に目の前にゾンビが現れた為、間合いを確保出来ずに苦戦していた。

 ゾンビがシグレの身体に手を伸ばし、絡み付こうとする。

「シャインも追いかけなきゃだってのに!?」
 俺は、直ぐにシグレへと迫るゾンビを斬り倒そうと駆け出すのだが。

 ガシッ!

「うおぉ!?  な、なんだ!?」
 足を躓いたのか、前のめりに倒れてしまった俺は、躓いた原因を確認しようと、足下へと目を向ける。

「なっ!?」
 俺の足首を、地中から生えている手が掴んでいたのだ。

 そして、手の生えている部分の土が盛り上がり、地中からゾンビが姿を現わす。

「ガァーー!」
 俺は、足首を掴まれたまま、身体を投げ飛ばされ、墓石に身体を打ち付ける。

「いってぇ!?  やりやがったな!」
 俺は、俺を投げ飛ばしたゾンビを倒そうと、身体を起こす。

「なっ!?  くそっ!?  離せ!」
 起き上がった俺は、背後から迫っていた2体のゾンビに羽交い締めにされ、身動きが取れない。

 ゾンビの顔が俺を覗き込み、俺の手足に噛み付いて来る。

「があぁあああああああ!?」
 何だこの痛みは!?  通常のモンスターの攻撃でもこれ程の痛みは感じたことはないぞ!

 まさか噛まれたらゾンビになったりするとかないよな?

 俺は、ダメージ量が多いのかと思い、HPゲージを確認するが、ダメージ量は確かに多いが、それでも通常遭遇するモンスターより少し多いという程度である。

 考えられるとすれば、通常よりもプレイヤーの感じる痛みの設定が上げられていることぐらいだろう。

 何とか振り解こうとしながら、シグレとヴァン、スノウの状況を見ると、全員ゾンビに絡みつかれてしまい、身動きが取れない状況に陥っていた。

「や、やめてくれ!?  さ、触るんじゃねぇ! 気色悪りぃ!  ああーー!?」
「ちょっと、どこ触ってんのよ!?  いやーー!」
「数が多過ぎます。このままじゃ!」

 このままじゃ全滅になる。

「くぅ、離れろって言ってんだよ!  『サンダーバースト』!」
 俺は強化魔法を発動し、能力を上昇させたことで、ゾンビの拘束から何とか脱出する。

「これでも喰らってろ!  『ブルージェット』!」
 地上へと剣を突き刺し、大地から夜空へと向かって、青い稲妻が迸り、付近にいたゾンビ達へダメージを与える。

「流石にアント達みたいに、この技だけでは倒せないか。」
 しかし、拘束されていたヴァン、シグレ、スノウの3人はゾンビの拘束から逃れられた。

   「助かったぜクラウド。何だよそのスゲェ技はよ。」
「助かったわ。これが終わったらお風呂に入りたいわね。汚されちゃったわ。」
「助かりました。一気に殲滅しましょう。」
 俺達は一箇所に集まり、敵を迎え撃つ。

「『シールドアタック』!」
「『クイックアロー』!」
「『連撃』!」
 身体の自由を取り戻した、ヴァン達は一気に攻勢に出る。

 俺も魔力回復薬でMPを回復し、サンダースラッシュで敵を斬り伏せる。

 粗方ゾンビを倒し終えた俺達は、傷付いた身体を回復する為に、体力回復薬を使用した。

「シャインを探さないと。」
 一人で走って行ってしまったが、何処まで行ってるか分からんな。

 行動を開始せようとしていた、俺の顔は驚愕の色に染まる。

 倒した筈のゾンビは、消滅エフェクトを発生させていた筈なのに、至る所から再び地面から手が生えて来ていたのだ。

「またゾンビが来る!  走り抜けるぞ!」
 俺達は、シャインが走って行った方へ駆け出した。



「ぐすん。お兄ちゃん何処?  一人は怖いよ。」
 シャインの周りには、墓石が立ち並んでおり、シャインの背後の地面からは手が生え始めていたのだった。


ーーーーあとがきーーーー
今回のおまけ

クラウド:毎度おなじみ、『今日は何の日』コーナー!

リン:おまけ初登場のアルよ。

クラウド:さぁて、リン。今日は何の日か分かるかなぁ?

リン:何の日って、1月31日は『愛妻家の日』アルよ。

クラウド:な、何だと!?

リン:日本愛妻家協会が制定したアル。理由は、1月の1を英語のI(アイ)に見立てて、31日(さい)で、あいさいの語呂合わせアル。

クラウド:く、詳しいじゃないか。

リン:因みに、日本愛妻家協会は、地球温暖化よりも家庭寒冷化現象を気にしているそうアル。

クラウド:家庭寒冷化も重要な課題なんだな。

リン:それと、その協会が夫婦でたまにはハグしようと発売したのが、ハグマットというものらしいアル。

クラウド:ハグマット?

リン:よく分からんアルが、足型が向かい合ってるマットだった気がするアル。

クラウド:へぇ~買う人っているのか?

リン:そこまでは知らないアル。

シャイン:直ぐに買いに行かなきゃ!

クラウド:え?  シャイン?  そんなに父さんと母さんの夫婦関係を気にして!

シグレ:違うと思うわよ。

シャイン:売り切れてたよーー!

リン:たまには夫婦でハグして、家庭温暖化してみるアルよ。でも熱くなり過ぎて、家庭爆破しないように気をつけるアル!
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