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闘技場前の事件
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俺達はバトルシティに到着し、ドロップアイテムから装備を新調すると、闘技場に足を向けていた。
「闘技場楽しみだな!」
闘技場で得られる報酬も、勿論楽しみではあるのだが、強い敵と戦えるのも楽しみだった。
俺ってこんなに戦闘狂だったかな? まぁ昔から剣道をやっていて、負けず嫌いなところはあったな。
高校時代の顧問なんて、「1位以外は意味がない! 」が口癖の人であり、試合が2位の結果に終わると激昂するタイプだった。
少しは、頑張っている生徒に労いの言葉を送れないのだろうかと、何度も思ったことがある。
厳しいことを言う顧問ではあったが、実力はピカイチだったので、誰も文句は言えなかったがな。
「どんな報酬が用意されているのか楽しみだね。」
シャインも、新たな素材で新しい武具が作れると、楽しみにしていた。
「シャインさんの為にも、この俺が報酬をゲットしてみせます!」
「は、はい。」
ヴァンの奴、気合い十分なようだが、盾でどうやって相手を倒すつもりなのだろうか? シールドアタックとシールドブーメランで勝てるのだろうか?
「あっ!? 闘技場の入り口が見えてきましたよ!」
スノウが指差す先には、闘技場への大きな入り口が見えた。
「きゃーーーーーー!?」
突如、女性の叫び声が響き渡る。
「「どうしたっ!?」」
俺とヴァンが、直ぐに叫び声がした方へ向かうと、尻餅をついた女性が裏路地を指差していた。
一体この裏路地に何があるっていうんだ?
俺は、剣を構えながら裏路地に足を踏み入れる。
「なっ!?」
そこには、男性アバターがdead表示で倒れていた。
その身体は、頭部がグチャグチャになっており、頭部、胴体、右腕、左腕、右足、左足とバラバラに斬り裂かれている。
「どうしたのクラウド?」
「来るなシャイン!」
遅れて到着したシャインが裏路地を覗き込もうとしたので、咄嗟に止める。
いくら仮想世界と言えど、妹にこんな現場を見せたくは無い。
モンスターのバラバラならまだしも、人間に似せられているアバターのバラバラ死体なんて、トラウマものだろう。
「スノウは、そこの女性から状況を聞いてくれ。ヴァンは遺体を一目見たら、バトルシティの復活ポイントへ向かってくれ。シャイン、シグレは付近を警戒していてくれ。」
悲鳴を上げた女性から、やった奴の目撃情報でもあればいいんだが。
ヴァンには、このプレイヤーが復活した際に話が聞けるよう、復活ポイントへ行く指示を出した。
それと、まだ付近にコレをやった犯人がいるかも知れない為、シグレとシャインを警戒に当てさせる。
俺は、現場に何か痕跡が残されていないか調べる。
隈なく周囲を見回すと、付近に黒色のカードが落ちていた。
このカードは一体?
よく分からないが、一応カードを回収しておく。
俺はもう一度死体に目を向ける。
頭部の破損は、恐らく鈍器か魔法によるものだろう。
バラバラになっている身体の断面や切り口から、武器は剣の可能性が高いな。
そうなると頭部の破損は剣では無理だから、やはり魔法によるものか。
俺が考えを纏めていると、アバターが光り出して消滅する。
「クラウド。女性から話を聞けました。」
スノウが女性から聴取したところ、「路地裏から物音と男性の悲鳴がしたので、気になり路地裏に入って奥を見たら男性が倒れていたそうです。」
「となると、犯人の顔は見ていないのか?」
「そうなりますね。」
こうなると、やられた本人から聞くしか無いな。
しばらくすると、ヴァンがやられた男性を連れて戻って来た。
「クラウド連れて来たぞ。」
「早くログアウトさせてくれよ!?」
「話を聞けたら、直ぐにログアウトしてもらって構いません。」
俺は、男性に優しく話しかける。
「俺はクラウドと言います。貴方の名前を教えて下さい。」
「ガイだ。」
ガイと名乗った男性は、ぶっきらぼうに答える。
「ガイさんですね。貴方は誰にやられたんですか?」
「全身黒一色の奴だ。声は男の声だったな。」
黒一色か。
「武器は剣で、ガイさんの頭部を攻撃したのは魔法でしょうか?」
「何故分かるんだ!? 知っている奴なのか!」
ガイは興奮しながらクラウドの胸倉を掴み掛かる。
「知りませんよ。やられた貴方の状態からそう推測しただけです。」
俺はガイの腕を振り解く。
「そ、そうか。わ、悪りぃ。」
「いえ。因みに、NPCでは無いですよね?」
NPCであれば、頭上に名前のアイコンが出ているので分かる筈だが。
「アレは、プレイヤーだ。」
「……そうか。ところで、この黒いカードに見覚えはあるか? 現場に落ちていたんだが?」
俺はそう言って、現場で拾った黒色のカードを取り出す。
「痛みでうろ覚えだが、確かアイツが投げ捨てたカードだった筈。」
「成る程。」
これは、自分の犯行だと示している訳か。
現実世界でも、自分の犯行と敢えて分からせる為に、痕跡を残す奴が居るが、この犯人もその手のタイプか。
「もういいか?」
「あ、ああ。ありがとう。」
ガイは、直ぐにゲームからログアウトした。
この件が気になった俺達は、闘技場は後回しにし、冒険者ギルドへ再び戻り、今回の件の情報収集をしたところ、同様の案件が数件判明する。
内容を纏めると、最初はNPCがバラバラの遺体で見つかり、その後も何度か同様な事件が起こり、最近ではプレイヤーも多く殺害されているそうだ。
この犯人は、最初はNPCで満足していたのが、対象をプレイヤーにシフトしている。
「……何も起きなきゃいいんだが。」
その頃、現実世界の堂平警察署管内で、殺人事件が起きていたのだった。
ーーーーあとがきーーーー
今回はおまけ
クラウド:今日は何の日コーナー!
ヴァン:今日もやるんだな?
クラウド:勿論だ! 今日は『レトルトカレーの日』だ。大塚食品が1968年に日本初のレトルト食品『ボンカレー』を発売した日だ。
ヴァン:何だって!?
作者:何だって!? 昨日ボンカレー喰っちまったよ! 今日は発売日だったのか!? ってことは今日はボンカレーが安いのか!?
クラウド:いや、安くなっているかどうかは知らないぞ? 店に行って確認してくれ。
作者:了解した!
ヴァン:カレーの話したから、クラウドのカレーが喰いたくなって来たな。
クラウド:なら、今日はカレーを作ろうか?
ヴァン:マジか!? やったぜ!
クラウド:その代わり、ちゃんと手伝えよな。
ヴァン:おうよ!
ログアウトし、現実世界へ。
勤務開始よりも早めに職場に到着。
神:てな訳で、食材は持って来てるから早速作るぞ。
風雅:俺は何すれば良いんだ?
大野雪:私も手伝います。
日影時雨:私もやる!
神:じゃあ日影は、人参を切ってくれ。風雅は米を炊いて。大野さんは、玉葱をお願い。俺はジャガイモと肉を切っておくね。
日影時雨:えっと、人参は切ってから皮を剥くんだったよね?
大野雪:ち、違うよ時雨ちゃん!? それじゃあ皮が剥きにくいでしょ? 皮を剥いてから切るんだよ。
日影時雨:そ、そうだよね!? 分かってるってば~。
神:ホントに大丈夫なのか?
風雅:おい神。米は終わったぞ。
神:もうか? 早いな。それなら、ボールに水を溜めておいてくれ。
風雅:あいよ。
大野雪:うぅ~、涙が出てくる。
神:玉葱は、目に来るんだよね~。
大野雪:眼鏡をしてても、余り防げませんね。
神:.....大野さんって、眼鏡してたんだ。(髪で全然見えなかった。)
神は、鍋に油を入れ、切った食材を炒める。
神:風雅、水をくれ。
風雅:あいよ。
野菜が柔らかくなり、カレールーを入れ、カレーが完成した。
神:じゃあ、仕事して昼に食べよう。
昼休憩。
風雅:早く食べようぜ!
神:落ち着け。風雅、皿に米を入れてくれ。
風雅:おう!
風雅は、炊飯器の蓋を開けた。
風雅は、炊飯器の蓋を閉めた。
神:? どうした? 早く米をくれよ。
風雅はいきなり土下座した。
風雅:すまない!
神:何謝ってるんだ? まさか、前みたいに米を炊飯器の目盛りまで入れたんじゃ!?
神は、炊飯器の蓋を開けた。
炊飯器の蓋を開けたのに、湯気が立ち上ることはなく、炊けていない米粒の姿が。
その炊飯器を見た、神・大野・日影が、風雅に冷たい眼差しを向ける。
食べ物の恨みは恐ろしい。
風雅:俺のレンチンご飯を献上します!
結局、風雅のレンチンご飯に、カレーを掛けて食べたのだった。
※職業と禁止行為に関する感想をいただき、『チュートリアル』と『復讐には復讐を』を加筆訂正しましたm(__)m
「闘技場楽しみだな!」
闘技場で得られる報酬も、勿論楽しみではあるのだが、強い敵と戦えるのも楽しみだった。
俺ってこんなに戦闘狂だったかな? まぁ昔から剣道をやっていて、負けず嫌いなところはあったな。
高校時代の顧問なんて、「1位以外は意味がない! 」が口癖の人であり、試合が2位の結果に終わると激昂するタイプだった。
少しは、頑張っている生徒に労いの言葉を送れないのだろうかと、何度も思ったことがある。
厳しいことを言う顧問ではあったが、実力はピカイチだったので、誰も文句は言えなかったがな。
「どんな報酬が用意されているのか楽しみだね。」
シャインも、新たな素材で新しい武具が作れると、楽しみにしていた。
「シャインさんの為にも、この俺が報酬をゲットしてみせます!」
「は、はい。」
ヴァンの奴、気合い十分なようだが、盾でどうやって相手を倒すつもりなのだろうか? シールドアタックとシールドブーメランで勝てるのだろうか?
「あっ!? 闘技場の入り口が見えてきましたよ!」
スノウが指差す先には、闘技場への大きな入り口が見えた。
「きゃーーーーーー!?」
突如、女性の叫び声が響き渡る。
「「どうしたっ!?」」
俺とヴァンが、直ぐに叫び声がした方へ向かうと、尻餅をついた女性が裏路地を指差していた。
一体この裏路地に何があるっていうんだ?
俺は、剣を構えながら裏路地に足を踏み入れる。
「なっ!?」
そこには、男性アバターがdead表示で倒れていた。
その身体は、頭部がグチャグチャになっており、頭部、胴体、右腕、左腕、右足、左足とバラバラに斬り裂かれている。
「どうしたのクラウド?」
「来るなシャイン!」
遅れて到着したシャインが裏路地を覗き込もうとしたので、咄嗟に止める。
いくら仮想世界と言えど、妹にこんな現場を見せたくは無い。
モンスターのバラバラならまだしも、人間に似せられているアバターのバラバラ死体なんて、トラウマものだろう。
「スノウは、そこの女性から状況を聞いてくれ。ヴァンは遺体を一目見たら、バトルシティの復活ポイントへ向かってくれ。シャイン、シグレは付近を警戒していてくれ。」
悲鳴を上げた女性から、やった奴の目撃情報でもあればいいんだが。
ヴァンには、このプレイヤーが復活した際に話が聞けるよう、復活ポイントへ行く指示を出した。
それと、まだ付近にコレをやった犯人がいるかも知れない為、シグレとシャインを警戒に当てさせる。
俺は、現場に何か痕跡が残されていないか調べる。
隈なく周囲を見回すと、付近に黒色のカードが落ちていた。
このカードは一体?
よく分からないが、一応カードを回収しておく。
俺はもう一度死体に目を向ける。
頭部の破損は、恐らく鈍器か魔法によるものだろう。
バラバラになっている身体の断面や切り口から、武器は剣の可能性が高いな。
そうなると頭部の破損は剣では無理だから、やはり魔法によるものか。
俺が考えを纏めていると、アバターが光り出して消滅する。
「クラウド。女性から話を聞けました。」
スノウが女性から聴取したところ、「路地裏から物音と男性の悲鳴がしたので、気になり路地裏に入って奥を見たら男性が倒れていたそうです。」
「となると、犯人の顔は見ていないのか?」
「そうなりますね。」
こうなると、やられた本人から聞くしか無いな。
しばらくすると、ヴァンがやられた男性を連れて戻って来た。
「クラウド連れて来たぞ。」
「早くログアウトさせてくれよ!?」
「話を聞けたら、直ぐにログアウトしてもらって構いません。」
俺は、男性に優しく話しかける。
「俺はクラウドと言います。貴方の名前を教えて下さい。」
「ガイだ。」
ガイと名乗った男性は、ぶっきらぼうに答える。
「ガイさんですね。貴方は誰にやられたんですか?」
「全身黒一色の奴だ。声は男の声だったな。」
黒一色か。
「武器は剣で、ガイさんの頭部を攻撃したのは魔法でしょうか?」
「何故分かるんだ!? 知っている奴なのか!」
ガイは興奮しながらクラウドの胸倉を掴み掛かる。
「知りませんよ。やられた貴方の状態からそう推測しただけです。」
俺はガイの腕を振り解く。
「そ、そうか。わ、悪りぃ。」
「いえ。因みに、NPCでは無いですよね?」
NPCであれば、頭上に名前のアイコンが出ているので分かる筈だが。
「アレは、プレイヤーだ。」
「……そうか。ところで、この黒いカードに見覚えはあるか? 現場に落ちていたんだが?」
俺はそう言って、現場で拾った黒色のカードを取り出す。
「痛みでうろ覚えだが、確かアイツが投げ捨てたカードだった筈。」
「成る程。」
これは、自分の犯行だと示している訳か。
現実世界でも、自分の犯行と敢えて分からせる為に、痕跡を残す奴が居るが、この犯人もその手のタイプか。
「もういいか?」
「あ、ああ。ありがとう。」
ガイは、直ぐにゲームからログアウトした。
この件が気になった俺達は、闘技場は後回しにし、冒険者ギルドへ再び戻り、今回の件の情報収集をしたところ、同様の案件が数件判明する。
内容を纏めると、最初はNPCがバラバラの遺体で見つかり、その後も何度か同様な事件が起こり、最近ではプレイヤーも多く殺害されているそうだ。
この犯人は、最初はNPCで満足していたのが、対象をプレイヤーにシフトしている。
「……何も起きなきゃいいんだが。」
その頃、現実世界の堂平警察署管内で、殺人事件が起きていたのだった。
ーーーーあとがきーーーー
今回はおまけ
クラウド:今日は何の日コーナー!
ヴァン:今日もやるんだな?
クラウド:勿論だ! 今日は『レトルトカレーの日』だ。大塚食品が1968年に日本初のレトルト食品『ボンカレー』を発売した日だ。
ヴァン:何だって!?
作者:何だって!? 昨日ボンカレー喰っちまったよ! 今日は発売日だったのか!? ってことは今日はボンカレーが安いのか!?
クラウド:いや、安くなっているかどうかは知らないぞ? 店に行って確認してくれ。
作者:了解した!
ヴァン:カレーの話したから、クラウドのカレーが喰いたくなって来たな。
クラウド:なら、今日はカレーを作ろうか?
ヴァン:マジか!? やったぜ!
クラウド:その代わり、ちゃんと手伝えよな。
ヴァン:おうよ!
ログアウトし、現実世界へ。
勤務開始よりも早めに職場に到着。
神:てな訳で、食材は持って来てるから早速作るぞ。
風雅:俺は何すれば良いんだ?
大野雪:私も手伝います。
日影時雨:私もやる!
神:じゃあ日影は、人参を切ってくれ。風雅は米を炊いて。大野さんは、玉葱をお願い。俺はジャガイモと肉を切っておくね。
日影時雨:えっと、人参は切ってから皮を剥くんだったよね?
大野雪:ち、違うよ時雨ちゃん!? それじゃあ皮が剥きにくいでしょ? 皮を剥いてから切るんだよ。
日影時雨:そ、そうだよね!? 分かってるってば~。
神:ホントに大丈夫なのか?
風雅:おい神。米は終わったぞ。
神:もうか? 早いな。それなら、ボールに水を溜めておいてくれ。
風雅:あいよ。
大野雪:うぅ~、涙が出てくる。
神:玉葱は、目に来るんだよね~。
大野雪:眼鏡をしてても、余り防げませんね。
神:.....大野さんって、眼鏡してたんだ。(髪で全然見えなかった。)
神は、鍋に油を入れ、切った食材を炒める。
神:風雅、水をくれ。
風雅:あいよ。
野菜が柔らかくなり、カレールーを入れ、カレーが完成した。
神:じゃあ、仕事して昼に食べよう。
昼休憩。
風雅:早く食べようぜ!
神:落ち着け。風雅、皿に米を入れてくれ。
風雅:おう!
風雅は、炊飯器の蓋を開けた。
風雅は、炊飯器の蓋を閉めた。
神:? どうした? 早く米をくれよ。
風雅はいきなり土下座した。
風雅:すまない!
神:何謝ってるんだ? まさか、前みたいに米を炊飯器の目盛りまで入れたんじゃ!?
神は、炊飯器の蓋を開けた。
炊飯器の蓋を開けたのに、湯気が立ち上ることはなく、炊けていない米粒の姿が。
その炊飯器を見た、神・大野・日影が、風雅に冷たい眼差しを向ける。
食べ物の恨みは恐ろしい。
風雅:俺のレンチンご飯を献上します!
結局、風雅のレンチンご飯に、カレーを掛けて食べたのだった。
※職業と禁止行為に関する感想をいただき、『チュートリアル』と『復讐には復讐を』を加筆訂正しましたm(__)m
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