王宮の書類作成補助係

春山ひろ

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4. 王宮の書類作成補助係④

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 書類作成補助係の朝は、朝礼で業務が始まる。

「みなさん、おはようございます」

 書類作成補助係の最高責任者、ダダン公爵メイ閣下だ。
 公爵は30代、隙のない服装でいかにも大貴族そのものだが、その腕にはしっかり腕抜きが装着済。責任者といえども実働メンバーとして頭数に入っているのだ。

 というのは、公爵は国王陛下の甥にあたるので、ダダン公爵にも王家の血脈「書類はしっかり自分で確認すべし」の遺伝子が受け継がれている。

 由緒正しい部署の最高責任者ともなれば、優雅に自分のオフィスで紅茶を飲みながら、仕事という名の時間潰しをしてそうなイメージであるが、ダダン公爵においては皆無。
 むしろ係員が「後方3ライン」と呼んでいる、なかなか捌ききれず長蛇の列と化したところに、すぐにヘルプに入れるように別の係員が待機する後方3列目で右に左に大忙し。お声がかかれば瞬時に最前列に出るというフットワークの軽さ。

 初孫の誕生に目をうるうるさせながら出生届の書き込む大工のおじいちゃんは、「ここにお孫さんのお名前を書いてくださいね」と、優しく教えてくれた人が、まさか国王陛下の甥だとは夢にも思わないだろう。

 その人柄と責任感の強さ、そして「皆さんが補助して作成した書類に、万が一、不備があったとしても、責任を取るのは私です」と言い切る懐の深さ!これぞ理想の上司そのものである。はあ、羨ましい。

「では、今日予想される書類について、ンゴンゴ伯爵から情報共有を」

 ダダン公爵に名指しされたのは、信じられないが「ン」から始まる姓のンゴンゴ伯爵。いわば中間管理職、公爵の右腕だ。20代後半の既婚者でパートナーは元係員という社内もとい職場恋愛。公爵と同じく隙のない服装だが、お約束の腕抜きは装着済。伯爵も当然、実働メンバー。

「本日から恒例の王都商店街主催のサマーフェスティバルの舞台製作、参加者のテント設営申請が始まります。こちらの窓口は王都担当の建築係と土木係になりますので、ヘルプ担当は3列目で待機をお願いします。例年、初日に最も申請書類の補助が集中します。それぞれの担当は集中して滞りなく行ってください。
 また王族係では、宰相府より王妃様が夏の晩餐会の予算申請を本日行うと連絡がきています。王族担当のマルコとレオナルドはしっかりお願い致します」


「はい!」
 元気に返事をしたのがマルコ、本編の主人公である。やっと、やっと主人公登場までこぎ着けた!


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