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5. 王族係・マルコ①(過去)
しおりを挟むマルコは小柄な18歳。アッシュグレーの髪と濃いアメジスト色の大きな瞳に整った顔立ちで、顔や手足が小さく、可愛い子猫ちゃんタイプの男子だ。一見すると、可愛さだけが全面に出ているが、マルコは一風変わった環境で育ち、見た目以上に強い子だ。
マルコの実家は王都一、いや大陸一、大きな両替商である。
諸外国との貿易の際、入ってきた外貨はオリアナ国内ではそのまま使用できない。そこで両替が必要になる。マルコの祖先は豪農で土地と金はそこそこあった。何より先見の明があった。これから諸外国との貿易が増えれば、両替商が必要だと目をつけ、いち早く、屋敷の前に「外貨両替できます!」と張り紙を出したのだ。
アフリカで見かける闇両替商(この時点では王宮の許可を得ていなかったため)の誕生である。
その後、王宮に正式に両替商として申請して受理され、マルコの祖先は財を成していった。
現在は貴金属の保管や持ち込まれた貴金属の価値に応じた貸付も行っており、もはや銀行。
しかもマルコの祖父の代からは財務院を引退した貴族を迎え入れ(天下り?)、王宮とのパイプを強固にするという抜かりなさ。
そんな祖父が手塩に掛けて育てたマルコの父は、祖父のさらに上をいき、今では宰相府からの天下り貴族も受け入れるようになって地盤は盤石。
こうした生業から大量の金銭と貴金属を保有するマルコが育った家は、邸宅というより巨大な金庫といった方がしっくりくる。金庫と評したのは堅牢な建物だからというだけではない。マルコの自宅はいわば人間金庫といった方が正しいだろう。
何しろ人様の金銭も預かっているので、マルコの父は自衛として腕の立つ傭兵をこれでもかと集めたのだ。いわゆる用心棒である。
この用心棒たちは、昔の時代劇に出てくる悪徳商人が、正義の味方(現役の将軍様だったり、引退した副将軍だったり、あるいは町奉行だったりと千差万別)が突入してきた際、「先生方、お願いしますよ!」と叫ぶと、突如画面に出てきたものの、あっという間に正義の味方に切られる素浪人風情とはわけが違う、本物の用心棒である。
マルコの父の座右の銘は「人こそ宝!人に勝る宝なし!宝を見分ける目を持て!」である。そんな父が目利きして選んだ用心棒たちの中には、大陸選抜武道大会に3年連続で優勝した強者がゴロゴロいる。
ちなみにこの大会は3年連続で選ばれると「殿堂入り」する、ベストジーニスト賞と同じシステムを取っており、4年連続優勝はない。
こうした強者の容貌はなぜか一様に似ていた。それは入れ墨とスキンヘッドだ。髪は分かる。接近戦になると髪を掴まれる恐れがあるので、剃ったんだねと。問題は入れ墨だ。
「それは何かの呪いですか?」と勘違いしそうな勢いで、用心棒たちは体中に入れ墨があった。むしろ用心棒とは、まっさらな肌を残してはいけない決まりでもあるのか。彼らは剃った頭や顔にまで入れ墨をいれていた。
最初の用心棒30人を父が自宅に連れてきた際、母は「まあ、なんて可愛らしい人たち!」といって慈愛の表情をした。
母の愛はマリアナ海溝より深かった!
用心棒号泣!
彼らは畏怖の目線には慣れているものの純粋な慈愛の目を向けられたことがなかったのだ。
この瞬間、マルコの両親は彼らから「生涯の忠誠」なる重い主従の契りを勝手に結ばれた。
そして30人が50人になり、100人を超えたところでマルコの兄が誕生。双子だった。母は、生まれたばかりで目も開けない赤子二人を最初に用心棒たちに見せた。たいしたもんである、マルコ母。100人超のスキンヘッドと入れ墨集団に赤子たちを抱かせたのだ!
彼らがちょっと力を入れたら壊れそうな赤子たち。それを恐る恐る抱っこする用心棒という謎の構図。その時、なんと初めて赤子たちが目を開いた。
つまり、最初に双子が目したこの地上の生き物は、母ではなく、この用心棒たちだったのだ。大人だったらトラウマになるスキンヘッドと入れ墨集団に囲まれた赤子たちは、しかし笑ったという。
その笑顔は「俺たちがこれまで犯した数々の罪を全て水に流してくれたような笑み」(用心棒談)だったそうで、母の「赤ちゃんを拝まないで!なんで拝むの?」という叫びは、赤子に懺悔する者たちの声にかき消された。もはや宗教。
こうして教団もとい用心棒集団の生涯の忠誠は、マルコの双子の兄たち(名をカイトとカリムという)を巻き込み、マルコが生まれた時には、より強固で頑強な絆で結ばれ、壊したくても壊れない、もし壊したら世界が崩壊するのではないかというほど頑丈なものになっていた。
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