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バート商会 3
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ギルバート……ギルには特技がある。
パッと見るだけで、相手の体型をほぼ的確に当ててしまうのだ。
だから性別が誤魔化せない。服を着ていても、布を巻いたりして誤魔化していても、解ってしまうのだ。
どうして分かるのかと聞いたことがあるが、本人は首をひねりながら、肉の動きじゃない部分はなんとなく分かる。と、答えた。服に入るしわやよれが不自然なのだそうだ。俺には全く不自然に見えないものを見てもそう言った。
その特技のおかげか、貴族のご婦人……特に年配の方によく懇意にされている。何故なら、皆まで言わずとも、的確に、確実に、合うものを見繕ってくれるという信頼からだ。
自分の寸法をうやむやにしておきたいご婦人たちにとって、彼は救世主なのだ。
ついでに、見た目も麗しいのだから、文句なんてあろう筈もない。
ギルの店は、表側が服飾店、裏側が生活の場となっている。
つまり裏側に招かれた俺は、仕事上の付き合いではないという事だ。ギルの家族は、俺にバート商会は、自分の親戚の家だと思えと、言ったことがある。だから、来るのに連絡も遠慮もいらない。いつでも部屋があるから、遊びにおいでと。
親戚だからってその待遇は無いと思うのだが……ありがたく、そうさせてもらっている。遠慮したら一悶着あったのだ。いや、阿鼻叫喚と言うべきか……。
「さっきはごめん……。もうちょっと説明しておくつもりだったんだけど……」
後ろについて来ているサヤに、小声で話しかける。
正直耳元で囁くほどの小声だが、サヤには聞こえているようだ。
「ギルとハインはいつもああなんだ。あれはじゃれ合ってるだけだから、喧嘩じゃない。
はじめにそう伝えておけば、心配しないで良かったのに……気が回らなかった」
俺には日常茶飯事すぎて、問題点にも登らなかったんだよ。
サヤは、クスリと笑った。そして小声で「聞いていても、びっくりしたと思います」という返事が返ってきた。そうか。じゃあ、一緒だったかな……? ならいいや。
裏庭から入り、廊下をしばらく進み、二階に上がる階段を上る。そして大きな扉が案内される先、応接室だ。
ギルが手を挙げると、扉の横に控えていた使用人が、さっと扉を開く。両開きの重い扉だが、軋む音一つしない。
そのまま中に進み、全員が室内に入ると扉が閉められる。
応接室に残った使用人は執事一人。後はギルと、俺たちだけだ。
そこでまた、俺は抱きすくめられた。
ああもう! 鬱陶しいな!
「ギル! それはもうよせよ、さっきもやったろ!」
「さっきはなんだ! 私とか言いやがって! 貴族みたいだったぞ!」
「しょうがないだろ、貴族なんだし!……お前の職場を乱したくないんだよ」
「ここはお前の家も同然だろうが、遠慮される方が気持ち悪ぃ」
「だっ……だってルーシーは初めて見たぞ……。新しい使用人もいるように見えた……。こんな格好してるのに、あまり……良くないだろ……」
「あのなぁ……。そういった、貴族とのやりとりとかの教育は、俺の領分だ。お前が心配することじゃない。お前はここに何しに来た。仕事なら表側から来るよな。なら遠慮すんなよ。いつも通りでいいんだ」
ワッシワッシと俺の頭をかき回す。サヤに整えてもらった髪がぐしゃぐしゃだ。
その手をペイッと剥がして、俺はギルを睨んだ。ほんともうこいつは……そう思うけど口元が歪む。こいつはいつも、俺を甘やかす……。兄みたいな顔をしてくるのだ。
「それで。俺にお願いってのは?
あっ、ハイン! お前ここに来たら仕事すんな! レイが寛げねぇだろ!」
「……上着を掛けるくらいの事で目くじらたてないで下さい」
「あいっかわらず敬語……ああもう聞き飽きた!
お前の頭には敬語以外の言語か入る余地がねぇのか!」
「性分ですのでお気になさらず」
「顔に全然、合わねぇんだよ!」
いつも通りのやりとりだが、サヤには刺激が強すぎるようだ。
またオロオロし始めたので、笑って手招きしたら、急いでこっちにやって来た。
……ん?やっぱり気のせいじゃないな……サヤが近い。なんか、俺に慣れてきたってことか?
俺の座る長椅子の隣を指し示すと、緊張した面持ちで座り、ギルにぺこりとお辞儀をする。
「サヤのことでお願いに来たんだよ。
ちょっと、おかしな話をすることになるんだけど……聞く?
ギルには、どうせ誤魔化せないと思うから、全部話すつもりで来たけど……正直、ちょっと信じれるような話じゃないと思う」
俺がそう前置きすると、ギルは片眉を上げ、俺とサヤを交互に見比べた。
「……聞かないって言ったらどうなる?」
「当たり障りない方の話をする」
「可愛くねぇな! お願いだから聞いて下さいくらい言えよ! 俺がお前の話信じないとでも⁉︎」
「そう言うと思うからこんな話してるんだろ」
俺たちのやりとりを、執事……ワドルは微笑ましく見つめて、お茶を入れだした。
サヤとの出会いから、俺はギルに話した。
泉から出てきた異界の娘。どういった理屈か、泉の中には戻れなかったこと。サヤの世界とこことでは何かが違うらしく、力が強くなったり、耳が良くなったりしていること。不埒なことをされかけた経験があり、男性が苦手なこと。そして、帰り方を探す間、俺が保護すると決めたことだ。
「俺としては何の問題も無いんだけど……兄上のことがある。
だから、サヤを男装させて傍に置こうって話になってるんだけど……その準備をギルにお願いしたいんだよ」
サヤとの出会いを話し終えたら、時間は夜になっていた。
途中で夕食も準備され、食事をしながらの長い話だった。
その全てを執事のワドルが取り仕切る。俺が来た時は、俺が寛げるようにと、余計な使用人は入れず、彼が一人で仕事をこなすのだ。ワドルは……ハインの師でもある。
今は食後のお茶の時間だ。応接室に設えてある長椅子に座っている。ワドルは壁際に控え、人形のように微動だにしない。
話を聞き終えたギルは、ふぅ……と、大きく息を吐き、サヤを見て言った。
「異界の娘……ねぇ。異界人はみんなこんな美人なのか? 俺が行きたい」
「知らないよ。サヤを女として見るの却下って言ったろ」
「それ、正直無理だろ……今も相当努力してますよ俺は。
……男装の準備や、家具の手配は良い。それは任せろ。だけどな……俺にサヤを預けるとか、そっちの方が良いんじゃねぇ?
異界の人間んだなんてことは他言しねぇし、ここの常識だってきちんと教えてやれる」
お前の兄貴は信用ならん。ぼそりとギルがそう言って、鼻息を荒くする。
ギルもハインも……兄上が嫌いだ。特に、俺に怪我をさせたことで、その辺はもう収集つかなくなっている。
兄上や異母様のことを考えると、サヤはあそこにいない方が良いと思う……けど……。
「私が、あそこに居たいのです! 泉から、離れたくありません……」
懇願するように、サヤは俺にそう訴えた。ギルに預けると言う話が再熱するとでも思っているのか必死だ。その様子を見て、ギルはまた溜息を吐く。
「……だよなぁ……。ここは近いってもセイバーンまで半日かかるし……すぐに行ける距離じゃねぇよな……」
胡座をかき、座褥を抱きかかえるようにして、思案顔だ。男前だからどんな状態でも男前に見える……特だよなぁと思う。
俺なんか二年ほど前まで何やっても女みたいだって言われてた。なんなんだこの差……。
「それに……レイシール様は……ハインさんと二人でお仕事をされてます……。
その……私では、たいして役に立てないと思うのですが……お手伝いしたいと、思うのです。
幸い、ここでの私は、強いみたいなので、力仕事とか、護衛とか、お力になれるかなって。
ただ、お世話になるだけなのは、嫌なんです」
神妙な顔で、膝の上で拳を握りしめたサヤが、決意表明のように言う。
そして、恥ずかしそうに俯いてしまった。
その姿がなんともいじらしい。ギルがまた目をギラつかせたので、俺はギルの目を両手で塞いだ。
「くっ……! なんの拷問だ……」
その俺の手を引き剥がして、ギルが頭を掻き毟る。うんうん、そうだよね。ギルには相当な拷問だ。
「それだけどな……お前ら本気で、サヤを護衛にする気か?いくら強いって言っても女性だぞ?
もし怪我でもして傷が残ってみろ……どう責任を取るつもりだ」
そう言われてウッとなる。
……うん……考えなかった訳ではない。それはそうなんだが……。
「サヤは本当に、強いのか?」
「相当強い。……はずだ。俺には確認できないけど」
「私は瞬殺されました。ギルも瞬殺ですよ。保証します」
ギルの懐疑的な視線にも怯まず、ハインがお茶を啜る。
ハインはギルの実力をよく知っている。二人でよく喧嘩してた。真剣でやり合ったことすらあるのだ。実力ではギルの方が上。卑怯さではハインが上だ。ハインはどんな手でも使う。勝てば良いと割り切りがすごい。
そして、ハインの保証はギルに火を付けた。喧嘩を売られたと受け取ったようだ。多分売ったのだが。
「はぁん……俺が瞬殺?女だからって容赦しねぇぞゴルァ」
「してられませんよ。そこまで時間も掛かりません。瞬殺ですから」
バチバチと視線で刺し合う二人。そしてギルは、座褥(クッション)を投げ捨てて立ち上がった。大股で歩き、壁に飾られてた装飾の剣を掴む。二本ともだ。それの一つをサヤに投げてよこすが、サヤはそれを危なげなく受け取って、床に置いた。
「いえ、要りません。私、無手なので」
「はぁ⁈」
「剣は扱えません」
「をいをいをぃ……お前ら本気で護衛をやらせるつもりか⁉︎」
「剣は扱えなくとも、サヤは強いですよ。良いからさっさとやってください」
ギルの方に視線すらよこさずハインが言い捨てる。
それでブチっとギルの神経が焼き切れた。後でお前もシバく! そう言ってから剣を構える。
「宜しくお願い致します」
律儀にお辞儀をして、長椅子から距離を取るサヤ。
そして、構えた。キッと、視線も鋭くなる。そして……。
ハインの宣言通り、瞬殺だった。
パッと見るだけで、相手の体型をほぼ的確に当ててしまうのだ。
だから性別が誤魔化せない。服を着ていても、布を巻いたりして誤魔化していても、解ってしまうのだ。
どうして分かるのかと聞いたことがあるが、本人は首をひねりながら、肉の動きじゃない部分はなんとなく分かる。と、答えた。服に入るしわやよれが不自然なのだそうだ。俺には全く不自然に見えないものを見てもそう言った。
その特技のおかげか、貴族のご婦人……特に年配の方によく懇意にされている。何故なら、皆まで言わずとも、的確に、確実に、合うものを見繕ってくれるという信頼からだ。
自分の寸法をうやむやにしておきたいご婦人たちにとって、彼は救世主なのだ。
ついでに、見た目も麗しいのだから、文句なんてあろう筈もない。
ギルの店は、表側が服飾店、裏側が生活の場となっている。
つまり裏側に招かれた俺は、仕事上の付き合いではないという事だ。ギルの家族は、俺にバート商会は、自分の親戚の家だと思えと、言ったことがある。だから、来るのに連絡も遠慮もいらない。いつでも部屋があるから、遊びにおいでと。
親戚だからってその待遇は無いと思うのだが……ありがたく、そうさせてもらっている。遠慮したら一悶着あったのだ。いや、阿鼻叫喚と言うべきか……。
「さっきはごめん……。もうちょっと説明しておくつもりだったんだけど……」
後ろについて来ているサヤに、小声で話しかける。
正直耳元で囁くほどの小声だが、サヤには聞こえているようだ。
「ギルとハインはいつもああなんだ。あれはじゃれ合ってるだけだから、喧嘩じゃない。
はじめにそう伝えておけば、心配しないで良かったのに……気が回らなかった」
俺には日常茶飯事すぎて、問題点にも登らなかったんだよ。
サヤは、クスリと笑った。そして小声で「聞いていても、びっくりしたと思います」という返事が返ってきた。そうか。じゃあ、一緒だったかな……? ならいいや。
裏庭から入り、廊下をしばらく進み、二階に上がる階段を上る。そして大きな扉が案内される先、応接室だ。
ギルが手を挙げると、扉の横に控えていた使用人が、さっと扉を開く。両開きの重い扉だが、軋む音一つしない。
そのまま中に進み、全員が室内に入ると扉が閉められる。
応接室に残った使用人は執事一人。後はギルと、俺たちだけだ。
そこでまた、俺は抱きすくめられた。
ああもう! 鬱陶しいな!
「ギル! それはもうよせよ、さっきもやったろ!」
「さっきはなんだ! 私とか言いやがって! 貴族みたいだったぞ!」
「しょうがないだろ、貴族なんだし!……お前の職場を乱したくないんだよ」
「ここはお前の家も同然だろうが、遠慮される方が気持ち悪ぃ」
「だっ……だってルーシーは初めて見たぞ……。新しい使用人もいるように見えた……。こんな格好してるのに、あまり……良くないだろ……」
「あのなぁ……。そういった、貴族とのやりとりとかの教育は、俺の領分だ。お前が心配することじゃない。お前はここに何しに来た。仕事なら表側から来るよな。なら遠慮すんなよ。いつも通りでいいんだ」
ワッシワッシと俺の頭をかき回す。サヤに整えてもらった髪がぐしゃぐしゃだ。
その手をペイッと剥がして、俺はギルを睨んだ。ほんともうこいつは……そう思うけど口元が歪む。こいつはいつも、俺を甘やかす……。兄みたいな顔をしてくるのだ。
「それで。俺にお願いってのは?
あっ、ハイン! お前ここに来たら仕事すんな! レイが寛げねぇだろ!」
「……上着を掛けるくらいの事で目くじらたてないで下さい」
「あいっかわらず敬語……ああもう聞き飽きた!
お前の頭には敬語以外の言語か入る余地がねぇのか!」
「性分ですのでお気になさらず」
「顔に全然、合わねぇんだよ!」
いつも通りのやりとりだが、サヤには刺激が強すぎるようだ。
またオロオロし始めたので、笑って手招きしたら、急いでこっちにやって来た。
……ん?やっぱり気のせいじゃないな……サヤが近い。なんか、俺に慣れてきたってことか?
俺の座る長椅子の隣を指し示すと、緊張した面持ちで座り、ギルにぺこりとお辞儀をする。
「サヤのことでお願いに来たんだよ。
ちょっと、おかしな話をすることになるんだけど……聞く?
ギルには、どうせ誤魔化せないと思うから、全部話すつもりで来たけど……正直、ちょっと信じれるような話じゃないと思う」
俺がそう前置きすると、ギルは片眉を上げ、俺とサヤを交互に見比べた。
「……聞かないって言ったらどうなる?」
「当たり障りない方の話をする」
「可愛くねぇな! お願いだから聞いて下さいくらい言えよ! 俺がお前の話信じないとでも⁉︎」
「そう言うと思うからこんな話してるんだろ」
俺たちのやりとりを、執事……ワドルは微笑ましく見つめて、お茶を入れだした。
サヤとの出会いから、俺はギルに話した。
泉から出てきた異界の娘。どういった理屈か、泉の中には戻れなかったこと。サヤの世界とこことでは何かが違うらしく、力が強くなったり、耳が良くなったりしていること。不埒なことをされかけた経験があり、男性が苦手なこと。そして、帰り方を探す間、俺が保護すると決めたことだ。
「俺としては何の問題も無いんだけど……兄上のことがある。
だから、サヤを男装させて傍に置こうって話になってるんだけど……その準備をギルにお願いしたいんだよ」
サヤとの出会いを話し終えたら、時間は夜になっていた。
途中で夕食も準備され、食事をしながらの長い話だった。
その全てを執事のワドルが取り仕切る。俺が来た時は、俺が寛げるようにと、余計な使用人は入れず、彼が一人で仕事をこなすのだ。ワドルは……ハインの師でもある。
今は食後のお茶の時間だ。応接室に設えてある長椅子に座っている。ワドルは壁際に控え、人形のように微動だにしない。
話を聞き終えたギルは、ふぅ……と、大きく息を吐き、サヤを見て言った。
「異界の娘……ねぇ。異界人はみんなこんな美人なのか? 俺が行きたい」
「知らないよ。サヤを女として見るの却下って言ったろ」
「それ、正直無理だろ……今も相当努力してますよ俺は。
……男装の準備や、家具の手配は良い。それは任せろ。だけどな……俺にサヤを預けるとか、そっちの方が良いんじゃねぇ?
異界の人間んだなんてことは他言しねぇし、ここの常識だってきちんと教えてやれる」
お前の兄貴は信用ならん。ぼそりとギルがそう言って、鼻息を荒くする。
ギルもハインも……兄上が嫌いだ。特に、俺に怪我をさせたことで、その辺はもう収集つかなくなっている。
兄上や異母様のことを考えると、サヤはあそこにいない方が良いと思う……けど……。
「私が、あそこに居たいのです! 泉から、離れたくありません……」
懇願するように、サヤは俺にそう訴えた。ギルに預けると言う話が再熱するとでも思っているのか必死だ。その様子を見て、ギルはまた溜息を吐く。
「……だよなぁ……。ここは近いってもセイバーンまで半日かかるし……すぐに行ける距離じゃねぇよな……」
胡座をかき、座褥を抱きかかえるようにして、思案顔だ。男前だからどんな状態でも男前に見える……特だよなぁと思う。
俺なんか二年ほど前まで何やっても女みたいだって言われてた。なんなんだこの差……。
「それに……レイシール様は……ハインさんと二人でお仕事をされてます……。
その……私では、たいして役に立てないと思うのですが……お手伝いしたいと、思うのです。
幸い、ここでの私は、強いみたいなので、力仕事とか、護衛とか、お力になれるかなって。
ただ、お世話になるだけなのは、嫌なんです」
神妙な顔で、膝の上で拳を握りしめたサヤが、決意表明のように言う。
そして、恥ずかしそうに俯いてしまった。
その姿がなんともいじらしい。ギルがまた目をギラつかせたので、俺はギルの目を両手で塞いだ。
「くっ……! なんの拷問だ……」
その俺の手を引き剥がして、ギルが頭を掻き毟る。うんうん、そうだよね。ギルには相当な拷問だ。
「それだけどな……お前ら本気で、サヤを護衛にする気か?いくら強いって言っても女性だぞ?
もし怪我でもして傷が残ってみろ……どう責任を取るつもりだ」
そう言われてウッとなる。
……うん……考えなかった訳ではない。それはそうなんだが……。
「サヤは本当に、強いのか?」
「相当強い。……はずだ。俺には確認できないけど」
「私は瞬殺されました。ギルも瞬殺ですよ。保証します」
ギルの懐疑的な視線にも怯まず、ハインがお茶を啜る。
ハインはギルの実力をよく知っている。二人でよく喧嘩してた。真剣でやり合ったことすらあるのだ。実力ではギルの方が上。卑怯さではハインが上だ。ハインはどんな手でも使う。勝てば良いと割り切りがすごい。
そして、ハインの保証はギルに火を付けた。喧嘩を売られたと受け取ったようだ。多分売ったのだが。
「はぁん……俺が瞬殺?女だからって容赦しねぇぞゴルァ」
「してられませんよ。そこまで時間も掛かりません。瞬殺ですから」
バチバチと視線で刺し合う二人。そしてギルは、座褥(クッション)を投げ捨てて立ち上がった。大股で歩き、壁に飾られてた装飾の剣を掴む。二本ともだ。それの一つをサヤに投げてよこすが、サヤはそれを危なげなく受け取って、床に置いた。
「いえ、要りません。私、無手なので」
「はぁ⁈」
「剣は扱えません」
「をいをいをぃ……お前ら本気で護衛をやらせるつもりか⁉︎」
「剣は扱えなくとも、サヤは強いですよ。良いからさっさとやってください」
ギルの方に視線すらよこさずハインが言い捨てる。
それでブチっとギルの神経が焼き切れた。後でお前もシバく! そう言ってから剣を構える。
「宜しくお願い致します」
律儀にお辞儀をして、長椅子から距離を取るサヤ。
そして、構えた。キッと、視線も鋭くなる。そして……。
ハインの宣言通り、瞬殺だった。
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