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晴天の霹靂 5
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「だからってお前……唐突にも程があるだろう……」
動揺のあまり普段の言葉遣いになっているオブシズ。
俺は敢えてヴィルジールの名で呼ぶことで、彼の本当の名をクレフィリア殿に伝えた。
それと同時に、オゼロに連なり、公爵様に望まれる身であることも、グラヴィスハイド様に示唆。
「おや。オゼロ公に所縁のある身か」
「ええ。まぁごたついていた時期はあるのですが、今はもう大丈夫なのでご安心ください。
それよりも問題なのは、オゼロ様が未だ彼を望んでいることなんですよ。戻って来いと再三言われているみたいなんですよね……」
「それは断ってる!」
「分かっているよ。だけどただ断るより、こちらで所帯を持つ予定だからって言った方が、オゼロ様も納得してくれると思う」
「そんな理由で婚姻⁉︎」
「政略的な理由が嫌ならば、そういうの抜きで彼女のこと、真面目に考えておくれよ。俺はどっちでも良いんだ。
言っておくけど、俺の配下になると結婚できないなんて悪評、困るんだからな。みんなして結託したみたいに婚期逃して……。
ヴィルジールが最年長なんだから、皆の手本にならなきゃだろ。お前が婚姻してくれないと、皆がそれを理由に逃げそうだ。
で。どうかなクレフィリア殿は。
俺もヘイスベルトも、凄く良い話だと思ってるんだけど。
若くて器量良しで働き者で絵が上手くて、しかもお前のこと、好ましく思ってくれているんだよ?」
そう言うと、クレフィリア殿の顔が一気に赤く染まった。
グラヴィスハイド様のことで動揺していたところに、不意打ちで気持ちをバラされたものだから、取り繕う暇が無かったのだろう。
それを見たオブシズまで真っ赤になる。
そういう反応されるとは思っていなかったといった様子。え、うそ本気⁉︎ 数回顔を合わせた程度で、なんでそんなことに⁉︎ と、暴れている思考が見えるようだ。
「クレフィリア殿。彼は草紙の通り、とても優しい、良い男だよ。
幼い頃、俺を守ってくれたのは彼なんだ。後継予定のなかった庶子を、見返りもないのにね……。
つまりそれくらい包容力があるし、変な趣味もないし、剣の腕も一流だし、経済面も苦労させないと思うし、血に囚われないから余計な悪縁持ってないし、傷だらけだけどそこはむしろ男らしさだと思うし……」
「おっ、お、まっ、黙って⁉︎」
「黙りません。こんなに良い人なかなかいないんだからな?
もし考えもせず断るなんて言ったら、オブシズの恋人を募集したいって草紙に大きく書いて欲しいって、クオン様にお願いするよ?」
「やめてくれ!」
「オブシズ……お前はもう、こういうことを望んで良いんだ。
傭兵は命懸けだから……それでどうしたって家庭を望まない思考になるのだって、ヘルガーも言ってた。その上で、お前のことを頼むとも、彼は言ったよ……。
傭兵仲間だって、お前の幸せを願っているし、オゼロ様が望んでいるものも、最終的にはお前の幸せだ」
そう言うと、頭を抱えて俯いてしまった。
けれど……耳まで赤いから、別に悪い気はしていないのだと思う。
グラヴィスハイド様を見ると、なにやら満足そうな顔。オブシズの気持ちが見えているだろうから、感触は良いということだろう。
その反面……クレフィリア殿は、火照った顔で縮こまっているものの、どこか表情が冴えない。
これは、先程のグラヴィスハイド様の発言が、どこまで本気なのかを悩んでいるのだろう……。
茶化され、誤魔化された雰囲気になっているけれど、また異国に赴くと言ったグラヴィスハイド様の真意を、聞き出したい……と、そう思ってる。
うん、大丈夫。この方をそんな風に旅立たせはしない。やるからにはね。
「クレフィリア殿。グラヴィスハイド様の遊学は、多分アギー公爵様のご指示です」
そう口にした俺に、ピクリと反応したサヤとグラヴィスハイド様。
これくらいの内容なら、特に問題は無いだろう……。
「今、他国が色々気になる時期なんです。
グラヴィスハイド様は異国経験が豊富ですし、あちらに知人も多い。だから少し、情報収集をしてきてほしいと、そう望まれたのだと思います。
先程の俺の呼び出しも、それに関することだったので、俺も合点がいきました」
言ったことは、当たらずとも遠からずだと思っている。
きっとグラヴィスハイド様は、不穏な様子を見せる異国の状況を探ってくるようにという、指示を受けたのだろう。
先程俺たちの様子を見て、心配そうな素振りを見せたのもきっと、そのためだ。
俺たちも引き込まれたこと、この方は直ぐに察したのだろう。
……あのアギー公爵様が、陛下の事情を察しているだろうグラヴィスハイド様を、息子可愛さで手元に残し置いておくなんてことは、きっと無い。
使えるならば、使うだろう。グラヴィスハイド様のお気持ちがどうであれ、それが国のために必要なことならば。
この方も、それが断れないとなったから身辺整理を……と、そう考えたのだと思う。
だけどそれは、孤独に身を置く理由にはなりませんよ。
クレフィリア殿の反応からして、もう少し何か裏事情が潜んでそうな気はしたけれど、分からないことを悩んでも仕方がない。
まずは無理やりにでも、約束を取り付けてやる。
「陛下の御代になり、まだたったの三年です。女性の王政ですからね……色々と気を使うのです。
まだ公には口にできないことなので、内容は伏せさせて頂きますが……この春より、国で行う新たな政策の準備を進めることになりました。そのための情報収集なのでしょう。
何せ大きなものでね。異国を刺激しかねないというか……だからアギー公爵様も内々で話を進められた。
大っぴらに他国の情報収集を公爵家で行うなんて言えば、逆に他国への刺激になってしまいますからね。
正直、この派遣がどれくらいの期間になるか見当がつかないし、期間不明で異国にまた出向くなんて言えば、貴女を心配させるし、また長い期間を縛ることになる。
だから貴女の今後を考える気になって俺からの打診を受けられたのでしょう……まぁ、愚策だったわけですが」
ブンカケンが国の研究機関となることは、春の会合で発表されるのだから、ここまでならば良いだろう。
陛下のご懐妊に関してを伏せることが最優先だものな。
ぺらぺらと喋る俺に、サヤは慌て、そわそわしていたけれど、そこは敢えて放置した。
国の新たな政策にセイバーンが関わるとなれば、慌てもするだろうし、サヤの反応に違和感は無いだろうから。
「新たな……政策、ですの?」
「うちも関わるのでね……。正直大役すぎてほんと……場違い感が凄いんですが……。
でも、グラヴィスハイド様と共に職務に当たれるというのは、俺としても嬉しいことなので、頑張ろうと思っていますよ」
縁は切らないよと、言葉裏で示す。
俺の口にしてしまったことを否定するわけにもいかず、グラヴィスハイド様は苦笑顔。
それはクレフィリア殿も察したようで、それまでの不安がやっと少し、払拭できたのだろう。
「そう、だったのですか……」
「内緒です。春の会合までは」
「えぇ、はい……。申し訳ございません。つい動揺してしまいまして……」
「無理もないですよ。この方の言葉が悪すぎました。
ねぇグラヴィスハイド様。
この際だから、もう一つお約束ください。
毎月とは申しません。最低半年に一度で良いので、セイバーン宛に手紙を認めてください。
オブシズとクレフィリア殿が婚姻となりました場合、直接のやりとりはそのほうが早いですし。
どうせアギー公爵様への定期連絡があるのでしょうから、そのついでに。ね?」
クレフィリア殿とも、俺とも、縁は切らせません。
さぁどうしますか? ここで納得しかけている彼女をまた、不安にさせますか?
とりあえず今は、是とするべきだと思いますよ。
彼女の今後を思うならば……。
俺の思考は読み取れていたろう。グラヴィスハイド様は俺を見た。
それで良いの? お前の見せたくないものを、私は見るかもしれないよ?
挑発的な視線。だけどそれはもう、怖くないんです。
王家を拠点村に入れるしかなくなった以上、そこはもう、拒んでも仕方がない。
それにそれ以上に、グラヴィスハイド様との縁を切りたくなかった。この方の孤独を長年見てきていたからこそ、俺は、繋ぎ続けていくべきなのだと思う。
「旅の補佐も、我々が担いますよ。丁度良いものが色々とあります。
保存食に関してもお食べいただいた通りですし、検証に協力してくれている行商団でも、旅の食事が豊かになると評判なんです。
一年以上を保たせるという面に関してはまだ試行錯誤の最中なのですが、半年程度ならば問題もございませんしね。
簡易かまどや改良馬車等、役立ちそうな検証品は多くあります。
あぁそうだ。旅の料理なんかも身につけておくと良いかもしれません。
その辺はうちのサヤが、簡単で美味しいのをいくつも知ってますから」
サクサクと決定事項のように口にしていく。
サヤは目を白黒させていたけれど、俺とグラヴィスハイド様が、なにかしらの攻防を繰り広げている結果なのだろうと思ったよう。
グッと拳を握って「任せてください!」と、気合の入った声。
俺たち二人が全く引かないのだと理解した様子のグラヴィスハイド様は、やれやれと息を吐き……。
「仕方ないなぁ……」
と、その場はとりあえず、それで収めた。
動揺のあまり普段の言葉遣いになっているオブシズ。
俺は敢えてヴィルジールの名で呼ぶことで、彼の本当の名をクレフィリア殿に伝えた。
それと同時に、オゼロに連なり、公爵様に望まれる身であることも、グラヴィスハイド様に示唆。
「おや。オゼロ公に所縁のある身か」
「ええ。まぁごたついていた時期はあるのですが、今はもう大丈夫なのでご安心ください。
それよりも問題なのは、オゼロ様が未だ彼を望んでいることなんですよ。戻って来いと再三言われているみたいなんですよね……」
「それは断ってる!」
「分かっているよ。だけどただ断るより、こちらで所帯を持つ予定だからって言った方が、オゼロ様も納得してくれると思う」
「そんな理由で婚姻⁉︎」
「政略的な理由が嫌ならば、そういうの抜きで彼女のこと、真面目に考えておくれよ。俺はどっちでも良いんだ。
言っておくけど、俺の配下になると結婚できないなんて悪評、困るんだからな。みんなして結託したみたいに婚期逃して……。
ヴィルジールが最年長なんだから、皆の手本にならなきゃだろ。お前が婚姻してくれないと、皆がそれを理由に逃げそうだ。
で。どうかなクレフィリア殿は。
俺もヘイスベルトも、凄く良い話だと思ってるんだけど。
若くて器量良しで働き者で絵が上手くて、しかもお前のこと、好ましく思ってくれているんだよ?」
そう言うと、クレフィリア殿の顔が一気に赤く染まった。
グラヴィスハイド様のことで動揺していたところに、不意打ちで気持ちをバラされたものだから、取り繕う暇が無かったのだろう。
それを見たオブシズまで真っ赤になる。
そういう反応されるとは思っていなかったといった様子。え、うそ本気⁉︎ 数回顔を合わせた程度で、なんでそんなことに⁉︎ と、暴れている思考が見えるようだ。
「クレフィリア殿。彼は草紙の通り、とても優しい、良い男だよ。
幼い頃、俺を守ってくれたのは彼なんだ。後継予定のなかった庶子を、見返りもないのにね……。
つまりそれくらい包容力があるし、変な趣味もないし、剣の腕も一流だし、経済面も苦労させないと思うし、血に囚われないから余計な悪縁持ってないし、傷だらけだけどそこはむしろ男らしさだと思うし……」
「おっ、お、まっ、黙って⁉︎」
「黙りません。こんなに良い人なかなかいないんだからな?
もし考えもせず断るなんて言ったら、オブシズの恋人を募集したいって草紙に大きく書いて欲しいって、クオン様にお願いするよ?」
「やめてくれ!」
「オブシズ……お前はもう、こういうことを望んで良いんだ。
傭兵は命懸けだから……それでどうしたって家庭を望まない思考になるのだって、ヘルガーも言ってた。その上で、お前のことを頼むとも、彼は言ったよ……。
傭兵仲間だって、お前の幸せを願っているし、オゼロ様が望んでいるものも、最終的にはお前の幸せだ」
そう言うと、頭を抱えて俯いてしまった。
けれど……耳まで赤いから、別に悪い気はしていないのだと思う。
グラヴィスハイド様を見ると、なにやら満足そうな顔。オブシズの気持ちが見えているだろうから、感触は良いということだろう。
その反面……クレフィリア殿は、火照った顔で縮こまっているものの、どこか表情が冴えない。
これは、先程のグラヴィスハイド様の発言が、どこまで本気なのかを悩んでいるのだろう……。
茶化され、誤魔化された雰囲気になっているけれど、また異国に赴くと言ったグラヴィスハイド様の真意を、聞き出したい……と、そう思ってる。
うん、大丈夫。この方をそんな風に旅立たせはしない。やるからにはね。
「クレフィリア殿。グラヴィスハイド様の遊学は、多分アギー公爵様のご指示です」
そう口にした俺に、ピクリと反応したサヤとグラヴィスハイド様。
これくらいの内容なら、特に問題は無いだろう……。
「今、他国が色々気になる時期なんです。
グラヴィスハイド様は異国経験が豊富ですし、あちらに知人も多い。だから少し、情報収集をしてきてほしいと、そう望まれたのだと思います。
先程の俺の呼び出しも、それに関することだったので、俺も合点がいきました」
言ったことは、当たらずとも遠からずだと思っている。
きっとグラヴィスハイド様は、不穏な様子を見せる異国の状況を探ってくるようにという、指示を受けたのだろう。
先程俺たちの様子を見て、心配そうな素振りを見せたのもきっと、そのためだ。
俺たちも引き込まれたこと、この方は直ぐに察したのだろう。
……あのアギー公爵様が、陛下の事情を察しているだろうグラヴィスハイド様を、息子可愛さで手元に残し置いておくなんてことは、きっと無い。
使えるならば、使うだろう。グラヴィスハイド様のお気持ちがどうであれ、それが国のために必要なことならば。
この方も、それが断れないとなったから身辺整理を……と、そう考えたのだと思う。
だけどそれは、孤独に身を置く理由にはなりませんよ。
クレフィリア殿の反応からして、もう少し何か裏事情が潜んでそうな気はしたけれど、分からないことを悩んでも仕方がない。
まずは無理やりにでも、約束を取り付けてやる。
「陛下の御代になり、まだたったの三年です。女性の王政ですからね……色々と気を使うのです。
まだ公には口にできないことなので、内容は伏せさせて頂きますが……この春より、国で行う新たな政策の準備を進めることになりました。そのための情報収集なのでしょう。
何せ大きなものでね。異国を刺激しかねないというか……だからアギー公爵様も内々で話を進められた。
大っぴらに他国の情報収集を公爵家で行うなんて言えば、逆に他国への刺激になってしまいますからね。
正直、この派遣がどれくらいの期間になるか見当がつかないし、期間不明で異国にまた出向くなんて言えば、貴女を心配させるし、また長い期間を縛ることになる。
だから貴女の今後を考える気になって俺からの打診を受けられたのでしょう……まぁ、愚策だったわけですが」
ブンカケンが国の研究機関となることは、春の会合で発表されるのだから、ここまでならば良いだろう。
陛下のご懐妊に関してを伏せることが最優先だものな。
ぺらぺらと喋る俺に、サヤは慌て、そわそわしていたけれど、そこは敢えて放置した。
国の新たな政策にセイバーンが関わるとなれば、慌てもするだろうし、サヤの反応に違和感は無いだろうから。
「新たな……政策、ですの?」
「うちも関わるのでね……。正直大役すぎてほんと……場違い感が凄いんですが……。
でも、グラヴィスハイド様と共に職務に当たれるというのは、俺としても嬉しいことなので、頑張ろうと思っていますよ」
縁は切らないよと、言葉裏で示す。
俺の口にしてしまったことを否定するわけにもいかず、グラヴィスハイド様は苦笑顔。
それはクレフィリア殿も察したようで、それまでの不安がやっと少し、払拭できたのだろう。
「そう、だったのですか……」
「内緒です。春の会合までは」
「えぇ、はい……。申し訳ございません。つい動揺してしまいまして……」
「無理もないですよ。この方の言葉が悪すぎました。
ねぇグラヴィスハイド様。
この際だから、もう一つお約束ください。
毎月とは申しません。最低半年に一度で良いので、セイバーン宛に手紙を認めてください。
オブシズとクレフィリア殿が婚姻となりました場合、直接のやりとりはそのほうが早いですし。
どうせアギー公爵様への定期連絡があるのでしょうから、そのついでに。ね?」
クレフィリア殿とも、俺とも、縁は切らせません。
さぁどうしますか? ここで納得しかけている彼女をまた、不安にさせますか?
とりあえず今は、是とするべきだと思いますよ。
彼女の今後を思うならば……。
俺の思考は読み取れていたろう。グラヴィスハイド様は俺を見た。
それで良いの? お前の見せたくないものを、私は見るかもしれないよ?
挑発的な視線。だけどそれはもう、怖くないんです。
王家を拠点村に入れるしかなくなった以上、そこはもう、拒んでも仕方がない。
それにそれ以上に、グラヴィスハイド様との縁を切りたくなかった。この方の孤独を長年見てきていたからこそ、俺は、繋ぎ続けていくべきなのだと思う。
「旅の補佐も、我々が担いますよ。丁度良いものが色々とあります。
保存食に関してもお食べいただいた通りですし、検証に協力してくれている行商団でも、旅の食事が豊かになると評判なんです。
一年以上を保たせるという面に関してはまだ試行錯誤の最中なのですが、半年程度ならば問題もございませんしね。
簡易かまどや改良馬車等、役立ちそうな検証品は多くあります。
あぁそうだ。旅の料理なんかも身につけておくと良いかもしれません。
その辺はうちのサヤが、簡単で美味しいのをいくつも知ってますから」
サクサクと決定事項のように口にしていく。
サヤは目を白黒させていたけれど、俺とグラヴィスハイド様が、なにかしらの攻防を繰り広げている結果なのだろうと思ったよう。
グッと拳を握って「任せてください!」と、気合の入った声。
俺たち二人が全く引かないのだと理解した様子のグラヴィスハイド様は、やれやれと息を吐き……。
「仕方ないなぁ……」
と、その場はとりあえず、それで収めた。
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