妖怪ダンジョン運営記

メグミ

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無事に飲み水と食料候補を見つけた俺たちはダンジョンへの帰路についた。
「真っ暗になっちゃいましたね~。」
「そうだね。こけて怪我をしたりしないように足元には気を付けてね。」
「私は夜に生きる妖怪ですよ?これくらいの暗闇なんてへっちゃらです。ね?ドクロン?」
がしゃ髑髏は由利の問い掛けに頷く。
昼間だったから何とか耐えられたけど、巨大な骸骨が動いているのを夜に見ると流石に恐怖心が勝つな。
できるだけがしゃ髑髏の方は見ないようにしよう。
そう思って視線を逸らした瞬間にがしゃ髑髏に肩を叩かれた。
振り返ると何やら言いたいことがあるようでノートを俺の方に向けている。
「...悪いんだけど暗すぎて何が書いてあるか分からない。」
「この程度で見えないなんて人間は不便ですね~。私が代わりに読んであげますよ。何々....。」
ノートを読んだ由利は今までの楽しそうな表情を一転して真剣な表情を浮かべる。
「どうしたの?」
「私たちは今囲まれているようです。」
「囲まれてるって何に?」
「分かりません。ただドクロンの様子から察するに友好的な相手ではなさそうです。要は敵ってことです。」
敵と聞いてこの世界に来てすぐに襲われた時の光景が頭をよぎる。
あの時はダンジョン内で扉もあったから何とかなったけど、今回は身を守る物が一切ない状態。
今襲われようものなら何の抵抗もできずに殺される自信がある。
「落ち着いてください。余程の敵ではない限りドクロンが何とかしてくれますから。」
がしゃ髑髏の方を見ると任せろとばかりに力強く頷いた後に前方を力強くにらみつける。
「グルゥ.....。」
がしゃ髑髏がにらみつけている前方、木々の影から姿を現したのはオオカミだった。
それもこの世界に来てすぐに見た物より一回りも大きい。
「あれの対処はドクロンに任せて私たちは移動しましょう。」
由利は俺の手を引いて近くにあった大きな岩まで連れて行く。
「なんで離れるの?近くにいた方が安全なんじゃないの?」
「逆です。私たちが近くにいたら私たちの事を気にしてドクロンが全力で戦えなくなっちゃうんです。それに、ドクロンは囲まれているっていったんですよ?と言うことは敵はドクロンが相手にしている奴だけじゃなくて姿を現していないだけで他にもいるってことで...。」
不意に由利が茂みの方に視線を向ける。
「噂をすればですね。すぐに全身を覆い隠せるぐらいの大きさの盾を出してください!」
「わ、わかった!」
俺は慌てて本に大きくて丈夫な盾と書いて出現させる。
「ガァ!」
出現した鉄製の大きな盾を構えたのと同時に何かがぶつかってきて俺は岩にたたきつけられる。
「痛っ....。」
痛みをこらえつつ盾から顔を出して何が突撃してきた確認してみると案の定がしゃ髑髏が戦っている相手と同種と思われるオオカミだった。
大きさはこの世界に来てすぐに見たオオカミと同じくらいの大きさで、がしゃ髑髏が相手にしているものよりも小さ目だ。
だからと言って安心はできない。
どれほど小さくてもオオカミであることは変わりないのだ。
それに....。
「複数はヤバいって....」
俺に突撃を仕掛けてきたと思われるやつ以外にもう1頭。
....流石に死んだかな?
恵、お兄ちゃんはもうすぐそっちに行くよ....。
「所詮相手は動物です!岩を背にしてその盾で守っていれば少しの間は耐えられるはず!すぐにドクロンが来てくれるなので諦めないでください!生きて帰って叶えたい願いがあるのでしょう!」
諦めかけていた俺に由利からの激励が飛んでくる。
そうだ。
俺はこんなところで諦めるわけにはいかない。
生きて帰って妹を生き返らせるんだ!
俺は落としかけていた盾を構えなおしてオオカミと相対する。
「わかった。何とかあがいてみるよ。そっちは大丈夫...じゃないよね。」
岩に叩きつけられたときに離れてしまった由利の方を見ると由利もオオカミに囲まれて絶体絶命と言った様子。
なんとか助けに行きたいけどオオカミが目の前にいる現状で下手に動こうものなら自分の命が危ない。
「私なら大丈夫です。」
「大丈夫ってそんなわk」
「グラァ!」
俺とのやり取りの隙をついて由利を囲んでいた内の一体が由利に飛びかかる。
「由利!」
「だから大丈夫ですって。」
焦る俺と対照的に由利は余裕の笑みを浮かべている。
その間にもオオカミは由利に迫っていく。
そして由利にあと数センチでその牙が届くといった時にそれは起きた。
瞬間的な突風が吹き、その勢いに負けた木が由利とオオカミの間に倒れてきたのだ。
「ギャン!」
残念なことに倒れてきた木にオオカミが巻き込まれることはなかったが、警戒心を煽ることはできたようでオオカミは由利から距離を取った。
「幸運を司る座敷童に敵対したらどうなるか...。拓斗さんもさっき川で身をもって体験したでしょう?そういう訳なんで私は大丈夫ですから拓斗さんは自分の身を守ることに集中してください。」
由利はそう言って不敵な笑みを浮かべながらオオカミに一歩、また一歩と近づいていく。
オオカミも負けじと由利に攻撃を仕掛けようとするが、地面から生えていた石に躓いたり等の不運に寄ってその全ては失敗に終わる。
座敷童の力すげぇ..。
って、感心してる場合じゃない。
由利が全く問題ないことが分かったのだから今は自分のことに集中するべきだ。
俺は改めて目の前のオオカミを睨みつけた。
オオカミは由利の方を見て呆然としていたようだが俺の視線に気づいて威嚇のために唸り声をあげる。
「く、来るなら来いよ!返り討ちにしてやる!」
「ガァ!」
俺の言っていることを理解したわけではないだろうけど、オオカミは一瞬溜めた後に俺に向かって飛びかかってきた。
「ぐっ....。」
俺は盾でオオカミの攻撃をなんとか受け止めて押し返す。
さっきは不意を突かっる形だったから岩に叩きつけられるような失態をさらしたけど、襲い掛かってくる方向とタイミングが分かっていれば何とか防ぐことぐらいはできる。
この調子ならがしゃ髑髏が助けに来てくれるまで耐えられるのではないか。
そんな淡い希望を抱いた瞬間、正面ではなく右方向から何かが迫ってくる気配を感じた。
「っ!」
咄嗟に気配を感じた方向に盾を構える。
と同時に盾越しに衝撃が襲ってきた。
「あ...。」
咄嗟のことで盾を持つ力が緩まっており衝撃に負けて盾を手放してしまった。
手元から離れていく盾、それをあざ笑うかのような表情を浮かべながら俺に牙を突き立てようとするオオカミ。
その全てがスローモーションに見える。
由利が慌てて俺の方に駆け寄ろうとしているのが見えるけど、その距離からだとどうあがいても間に合いそうにない。
抗うことのできない死を前に俺は諦めて目を閉じた。
しかし、予想していた痛みが襲ってくることはなく、何かが傍を通ったような風を感じるのみ。
一体何が起きているのかと恐る恐る目を開くと目の前にいたはずのオオカミはいなくなっており、代わりに腕を振りぬいた状態で静止したがしゃ髑髏が立っていた。
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