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花梨が見つめる時計の針は、ちょうど9時を差している。
「何とか……良くやったぞ、私」
うんうんと腕を組みながら、自分を褒める。
何とかあの後授業もこなし、この時間まで一度も眠ることなく来れたのだ。途中、女生徒達に呼び出しを貰うというトラブルはあったのだが。
女生徒達の顔を思い出して、花梨は顔を顰めた。
「絶対、怒ってるよね」
あはは、と乾いた笑いを漏らした後で、軽くため息。そう、呼び出しを無視したのだ。
空色のクッション。それをぎゅっと抱きしめ、そのままベットに倒れこむ。
「あ~、とにかく寝るっ」
誰に言うでも無しに、そう花梨は呟くと目を閉じた。再び、あの少年に会えますように。と祈りながら。
「花梨さん」
「わぁっ」
前回同様、背後から掛けられた声に驚きの声を上げる。
「ヴィ、ヴィラ君。今度からは声を出す前に姿を見せて」
激しく動機を刻む心臓を、右手で押さえながらそう頼んだ。
「分かりました。でも、久しぶりで嬉しくて」
はにかむように笑うヴィラに、思わず花梨の頬も緩むが何だかヴィラの言葉に引っかかりを感じた。
「久しぶり?」
「はい。半年も前ですからね」
にっこにことするヴィラは本当に嬉しそうだ。心なしか声も弾んでいるようだ。
「半年ぃっ?!」
その花梨の大声に驚くヴィラの顔を、花梨はじっと見つめる。
(――確かに、良く見れば大人びてる……)
「あの?」
戸惑ったようなヴィラの言葉に、ようやく我に変える。
「え、あ。なんでもないよ。時間の進みが違うんだろうね」
「え? そうなんですか……う~ん。でも僕と花梨さんの服装から見ても文化は全く異なるでしょうし」
そう言ったヴィラの服装は、ゆったりとした青い布をまとったような格好。
そして花梨の方は、上下セットで500円だった半そでのパジャマだ。
「ヴィラ君の世界ってどんな感じなの?」
その言葉にヴィラは少しだけ、ほんの少しだけだが悲しそうに笑った。
「元々は平和な世界でしたよ。ただ、僕が生まれた事から分かるように、今は世界中が混乱してる。
僕の世界は二つの国で分かれてるんです。一つはイガー。もう一つはツザカ。この両国が今戦争を始め始めたんですよ」
そう言って俯いた顔は辛そうで、花梨は思わず目をそらしそうになった。
(――私のいる世界でも戦争は起きてるけど……あれ? 僕が生まれた事からってどういう意味だろう?)
ヴィラの一言が気になって、花梨は考える。しかし、考えてみたところで浮かんだ答えは『いい間違い』か『自分の知らないこと』の二つのみだ。
「ねぇ。ヴィラ君が生まれた事から分かるって、どういう意味?」
「あ……」
少し言い難そうに、ヴィラの視線が宙を舞う。その様子を見て、やっぱり良いと言おうとするが、それよりも先にヴィラが口を開いた。
「僕達の国では、世界に混乱があるときに王族の者から青色の瞳の者が生まれる、と言われています。
そして、実際に今まで世界で混乱が起きた時には、青色の者が生まれていました」
眉をぎゅっと寄せて、悲痛な表情を浮かべるヴィラに、軽々しく聞くんじゃなかったと花梨は後悔した。
「綺麗なのに」
ぽつり、と言ってしまった言葉。花梨は初めてこの癖を直したいと思うほどに後悔する。おそるおそる、ヴィラの反応を伺う。
「花梨さんみたいな人が、龍の娘だったら……」
泣き笑いの表情で言った言葉に、再び分からない言葉が有り、花梨は首をかしげた。
「あ、龍の娘とは。混乱が起きたときに現れると言われてる娘です。娘と言われていますが、実際には男性だった例もあります。
本当に彼女らが龍の娘だったのかは確認されてませんけれど。ただ、一人だけ龍の娘として認められている人も居ました」
「龍の娘かぁ。まぁ、私は残念だけど違うと思うよ。両親ともに人間だから……ん?龍って存在するの?」
まさかなぁと思いたずねたが、ヴィラはしっかりと頷いた。
「はい。姿を見せるのは稀ですが。花梨さんの世界には居ないんですか?」
「勿論!凄い。いるんだぁ……ま、魔法とかは無いよね?」
「それは無いですよ」
苦笑するヴィラに、残念半分、安堵半分のため息を吐いた。
「花梨さんの世界は……」
そうヴィラがいいかけたとき、花梨の視界が光った。
(――凄い、中途半端だよ!)
そのタイミングの悪さに、何となく笑ってしまった。
(――また、明日話そう)
不思議と、会えることを確証していた。
「何とか……良くやったぞ、私」
うんうんと腕を組みながら、自分を褒める。
何とかあの後授業もこなし、この時間まで一度も眠ることなく来れたのだ。途中、女生徒達に呼び出しを貰うというトラブルはあったのだが。
女生徒達の顔を思い出して、花梨は顔を顰めた。
「絶対、怒ってるよね」
あはは、と乾いた笑いを漏らした後で、軽くため息。そう、呼び出しを無視したのだ。
空色のクッション。それをぎゅっと抱きしめ、そのままベットに倒れこむ。
「あ~、とにかく寝るっ」
誰に言うでも無しに、そう花梨は呟くと目を閉じた。再び、あの少年に会えますように。と祈りながら。
「花梨さん」
「わぁっ」
前回同様、背後から掛けられた声に驚きの声を上げる。
「ヴィ、ヴィラ君。今度からは声を出す前に姿を見せて」
激しく動機を刻む心臓を、右手で押さえながらそう頼んだ。
「分かりました。でも、久しぶりで嬉しくて」
はにかむように笑うヴィラに、思わず花梨の頬も緩むが何だかヴィラの言葉に引っかかりを感じた。
「久しぶり?」
「はい。半年も前ですからね」
にっこにことするヴィラは本当に嬉しそうだ。心なしか声も弾んでいるようだ。
「半年ぃっ?!」
その花梨の大声に驚くヴィラの顔を、花梨はじっと見つめる。
(――確かに、良く見れば大人びてる……)
「あの?」
戸惑ったようなヴィラの言葉に、ようやく我に変える。
「え、あ。なんでもないよ。時間の進みが違うんだろうね」
「え? そうなんですか……う~ん。でも僕と花梨さんの服装から見ても文化は全く異なるでしょうし」
そう言ったヴィラの服装は、ゆったりとした青い布をまとったような格好。
そして花梨の方は、上下セットで500円だった半そでのパジャマだ。
「ヴィラ君の世界ってどんな感じなの?」
その言葉にヴィラは少しだけ、ほんの少しだけだが悲しそうに笑った。
「元々は平和な世界でしたよ。ただ、僕が生まれた事から分かるように、今は世界中が混乱してる。
僕の世界は二つの国で分かれてるんです。一つはイガー。もう一つはツザカ。この両国が今戦争を始め始めたんですよ」
そう言って俯いた顔は辛そうで、花梨は思わず目をそらしそうになった。
(――私のいる世界でも戦争は起きてるけど……あれ? 僕が生まれた事からってどういう意味だろう?)
ヴィラの一言が気になって、花梨は考える。しかし、考えてみたところで浮かんだ答えは『いい間違い』か『自分の知らないこと』の二つのみだ。
「ねぇ。ヴィラ君が生まれた事から分かるって、どういう意味?」
「あ……」
少し言い難そうに、ヴィラの視線が宙を舞う。その様子を見て、やっぱり良いと言おうとするが、それよりも先にヴィラが口を開いた。
「僕達の国では、世界に混乱があるときに王族の者から青色の瞳の者が生まれる、と言われています。
そして、実際に今まで世界で混乱が起きた時には、青色の者が生まれていました」
眉をぎゅっと寄せて、悲痛な表情を浮かべるヴィラに、軽々しく聞くんじゃなかったと花梨は後悔した。
「綺麗なのに」
ぽつり、と言ってしまった言葉。花梨は初めてこの癖を直したいと思うほどに後悔する。おそるおそる、ヴィラの反応を伺う。
「花梨さんみたいな人が、龍の娘だったら……」
泣き笑いの表情で言った言葉に、再び分からない言葉が有り、花梨は首をかしげた。
「あ、龍の娘とは。混乱が起きたときに現れると言われてる娘です。娘と言われていますが、実際には男性だった例もあります。
本当に彼女らが龍の娘だったのかは確認されてませんけれど。ただ、一人だけ龍の娘として認められている人も居ました」
「龍の娘かぁ。まぁ、私は残念だけど違うと思うよ。両親ともに人間だから……ん?龍って存在するの?」
まさかなぁと思いたずねたが、ヴィラはしっかりと頷いた。
「はい。姿を見せるのは稀ですが。花梨さんの世界には居ないんですか?」
「勿論!凄い。いるんだぁ……ま、魔法とかは無いよね?」
「それは無いですよ」
苦笑するヴィラに、残念半分、安堵半分のため息を吐いた。
「花梨さんの世界は……」
そうヴィラがいいかけたとき、花梨の視界が光った。
(――凄い、中途半端だよ!)
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(――また、明日話そう)
不思議と、会えることを確証していた。
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