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学園編
元婚約者と妖精
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学園での授業は一般教養から、魔法、剣術、貴族の多いSクラスは帝王学、など多岐にわたるものだ。
初日ということもあり、先生たちの自己紹介や進める授業の概要だけだが難しそうなことが伝わる。
隣に座るベルるんは涼しい顔で聞いており、主要キャラはリン以外は余裕がありそうだった。高位貴族で家庭教師をつけていれば、それほど苦労をしない内容のようだ。
その後は学園内の案内などが終わる。寮生活のため、昼ごはん以外に夜ご飯も学食で食べる必要がある。
学食が食べられる食堂には、安くて量の多いところと、美味しいが値段もそれなりの2か所がある。
学園内では身分を越えて、がコンセプトの学園なので、生徒たちは自由に2つの学食へいける。が、奨学金を借りる多くの平民やお金のない貴族は、安い方の学食へ行くのが常だった。
と、いうわけで。
「結婚式場ぽい!」
ベルるんと行くのはもちろん、高い方の食堂だ。床がピカピカに磨かれており、シャンデリアがキラキラと輝く。
「しょ、食堂とは?」
「さあ、アリサ。座ろうか」
そう言ってテーブル席に私をエスコートして座ると、すぐに給仕の人が注文を聞きに来てくれる。
そう。学食なのにオーダー制なのだ!
「アリサは何を食べる?」
「ベルるんと同じやつで!」
「分かったよ。本日のディナーBセットを2つで」
何もないところに話しかけて、当たり前のように2人前を注文するベルるん。給仕の男性は私の存在を知っているのか、知らないのか。表情には何も出さずにオーダーを受けていた。
「基本的にはセットになってるんだね」
「学食だからね」
メニューには値段がなく、A~Eまで5種類のセットが載っている。どれも一律料金にすることで、集金を簡単にしているようだ。
しばらくするとカトラリーが2つセットされて、美味しそうな料理が運ばれてきた。
1つのお盆の上に、生ハムサラダやスープ、鶏のオーブン焼き、小さなプリンのようなものまで揃っている。
「美味しそう!」
くるんっと喜びで一回転すると、ベルるんが嬉しそうに笑う。
「さあ、食べようか。デザートが足りなかったら僕のをあげるから教えてね」
ふふ、と笑い合ってご飯を食べる。ちなみに透明化は解いてないので、周りから見ると、カトラリーが宙を舞い料理が空間に消えていく、中々の恐怖映像だ。
「ベルンハルト様!こちらの席よろしいですか?」
和気あいあいとご飯を食べていると、途中で頭に響く大声を出す女性が現れる。
「席は他にも空いているから、別のところへ行ってくれないか」
「た、縦髪ロール!!」
冷たく言い放つベルるん。赤い髪がぐるんぐるんとドリルのように巻かれている、その髪を見て私はつい興奮してしまう。
「元婚約者にそんな態度はないのでは?」
「あ、ヘレナ?」
かっと頬を赤くして怒りを表す女性がヘレナだと気がつき、ベルるんに耳打ちをする。ベルるんは私の方を見て、少しうんざりした顔で頷いた。
「君との婚約はとうの昔に終わった話だ。用がないなら、さっさと消えてくれないか」
「そんな。ベルンハルト様!私たちは愛し合っていたのに、妖精様のご機嫌を損ねないために、解消されただけじゃないですか!」
なんとびっくり。ヘレナの頭の中ではそんなストーリーになっているようだ。ベルるんをいじめていたことなど忘れて、目をうるうるさせている。
おそらく、ベルるんとの婚約破棄から、ベルるん以上の地位や見た目の男性が現れなかったのだろう。当たり前だ。
「ねー。デコピンして追い払う?」
指をぴんぴん、と弾いてみせると、ベルるんが笑って首を振る。
「相手にするだけ無駄だよ。さ、アリサ。冷めないうちに食べないと」
そう言うとベルるんは本当にヘレナを居ないもの、として扱い出した。
キャンキャンと話しかけるヘレナをガン無視して、私にニコニコと笑顔で話しかけながらご飯を食べていく。段々とヘレナが可哀想になるほどだ。
「ベルンハルト様。その態度はあんまりじゃないですか?」
ついに泣き出したヘレナを見てられなくなったのか、ヘレナの友達らしき女性が現れた。
「あ、いじわるデコピン少女!」
その女性は入学式でリンをいじめており、私がデコピンを食らわせて少女だ。
「うーん。まさに類は友を呼ぶってやつだね」
「初めて聞いた。どんな意味?」
ベルるんは新しく現れた女子生徒も無視する気のようで、私に話しかける。
「ベルンハルト様!」
「僕。君の名前も知らないんだけど?」
あまりにもうるさいからか、そうベルるんが声をかける。
「私はヘレナの友人のチェルシーですわ!」
「そう。それじゃあ、そこのヘレナをどこかにやってくれないか?」
うんざりとした様子でベルるんが言うと、さらにヘレナは声を上げて泣きはじめた。
これは収拾がつかないな、と判断して私はみんなから自分が見えるようにする。
「ねえ。ベルるんの言うことが分からない?私もご飯食べたいんだけど」
わざと傲慢に見えるようにそう言うと、効果はてきめんだ。
まだ何か言いたげなチェルシーや泣くヘレナに、周りの人がサッと集まってどこかへ誘導していく。
「まだお話が!」
「いや。やばいって。早く行こ」
傍観していた人も妖精を怒らせるのはまずい、と判断をしてくれたようだ。私は怒った表情のまま、透明化をする。
「ごめんね。アリサにやらせちゃって」
これ、お詫び。と言ってデザートのプリンをくれたベルるん。ちなみにプリンはちょっと硬めで、上に生クリームがちょんと乗ってる絶品プリンだった!
ヘレナが同じ学校かー。先が思いやられそうだな、とスプーン口に入れたまま思った。
初日ということもあり、先生たちの自己紹介や進める授業の概要だけだが難しそうなことが伝わる。
隣に座るベルるんは涼しい顔で聞いており、主要キャラはリン以外は余裕がありそうだった。高位貴族で家庭教師をつけていれば、それほど苦労をしない内容のようだ。
その後は学園内の案内などが終わる。寮生活のため、昼ごはん以外に夜ご飯も学食で食べる必要がある。
学食が食べられる食堂には、安くて量の多いところと、美味しいが値段もそれなりの2か所がある。
学園内では身分を越えて、がコンセプトの学園なので、生徒たちは自由に2つの学食へいける。が、奨学金を借りる多くの平民やお金のない貴族は、安い方の学食へ行くのが常だった。
と、いうわけで。
「結婚式場ぽい!」
ベルるんと行くのはもちろん、高い方の食堂だ。床がピカピカに磨かれており、シャンデリアがキラキラと輝く。
「しょ、食堂とは?」
「さあ、アリサ。座ろうか」
そう言ってテーブル席に私をエスコートして座ると、すぐに給仕の人が注文を聞きに来てくれる。
そう。学食なのにオーダー制なのだ!
「アリサは何を食べる?」
「ベルるんと同じやつで!」
「分かったよ。本日のディナーBセットを2つで」
何もないところに話しかけて、当たり前のように2人前を注文するベルるん。給仕の男性は私の存在を知っているのか、知らないのか。表情には何も出さずにオーダーを受けていた。
「基本的にはセットになってるんだね」
「学食だからね」
メニューには値段がなく、A~Eまで5種類のセットが載っている。どれも一律料金にすることで、集金を簡単にしているようだ。
しばらくするとカトラリーが2つセットされて、美味しそうな料理が運ばれてきた。
1つのお盆の上に、生ハムサラダやスープ、鶏のオーブン焼き、小さなプリンのようなものまで揃っている。
「美味しそう!」
くるんっと喜びで一回転すると、ベルるんが嬉しそうに笑う。
「さあ、食べようか。デザートが足りなかったら僕のをあげるから教えてね」
ふふ、と笑い合ってご飯を食べる。ちなみに透明化は解いてないので、周りから見ると、カトラリーが宙を舞い料理が空間に消えていく、中々の恐怖映像だ。
「ベルンハルト様!こちらの席よろしいですか?」
和気あいあいとご飯を食べていると、途中で頭に響く大声を出す女性が現れる。
「席は他にも空いているから、別のところへ行ってくれないか」
「た、縦髪ロール!!」
冷たく言い放つベルるん。赤い髪がぐるんぐるんとドリルのように巻かれている、その髪を見て私はつい興奮してしまう。
「元婚約者にそんな態度はないのでは?」
「あ、ヘレナ?」
かっと頬を赤くして怒りを表す女性がヘレナだと気がつき、ベルるんに耳打ちをする。ベルるんは私の方を見て、少しうんざりした顔で頷いた。
「君との婚約はとうの昔に終わった話だ。用がないなら、さっさと消えてくれないか」
「そんな。ベルンハルト様!私たちは愛し合っていたのに、妖精様のご機嫌を損ねないために、解消されただけじゃないですか!」
なんとびっくり。ヘレナの頭の中ではそんなストーリーになっているようだ。ベルるんをいじめていたことなど忘れて、目をうるうるさせている。
おそらく、ベルるんとの婚約破棄から、ベルるん以上の地位や見た目の男性が現れなかったのだろう。当たり前だ。
「ねー。デコピンして追い払う?」
指をぴんぴん、と弾いてみせると、ベルるんが笑って首を振る。
「相手にするだけ無駄だよ。さ、アリサ。冷めないうちに食べないと」
そう言うとベルるんは本当にヘレナを居ないもの、として扱い出した。
キャンキャンと話しかけるヘレナをガン無視して、私にニコニコと笑顔で話しかけながらご飯を食べていく。段々とヘレナが可哀想になるほどだ。
「ベルンハルト様。その態度はあんまりじゃないですか?」
ついに泣き出したヘレナを見てられなくなったのか、ヘレナの友達らしき女性が現れた。
「あ、いじわるデコピン少女!」
その女性は入学式でリンをいじめており、私がデコピンを食らわせて少女だ。
「うーん。まさに類は友を呼ぶってやつだね」
「初めて聞いた。どんな意味?」
ベルるんは新しく現れた女子生徒も無視する気のようで、私に話しかける。
「ベルンハルト様!」
「僕。君の名前も知らないんだけど?」
あまりにもうるさいからか、そうベルるんが声をかける。
「私はヘレナの友人のチェルシーですわ!」
「そう。それじゃあ、そこのヘレナをどこかにやってくれないか?」
うんざりとした様子でベルるんが言うと、さらにヘレナは声を上げて泣きはじめた。
これは収拾がつかないな、と判断して私はみんなから自分が見えるようにする。
「ねえ。ベルるんの言うことが分からない?私もご飯食べたいんだけど」
わざと傲慢に見えるようにそう言うと、効果はてきめんだ。
まだ何か言いたげなチェルシーや泣くヘレナに、周りの人がサッと集まってどこかへ誘導していく。
「まだお話が!」
「いや。やばいって。早く行こ」
傍観していた人も妖精を怒らせるのはまずい、と判断をしてくれたようだ。私は怒った表情のまま、透明化をする。
「ごめんね。アリサにやらせちゃって」
これ、お詫び。と言ってデザートのプリンをくれたベルるん。ちなみにプリンはちょっと硬めで、上に生クリームがちょんと乗ってる絶品プリンだった!
ヘレナが同じ学校かー。先が思いやられそうだな、とスプーン口に入れたまま思った。
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