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番外編
タイロンと人間になった妖精1
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「おはようございますアリサ!」
「うん。リンおはよう」
目の前でにこにこと微笑むリンに、私は走り寄る。人間の体になってから、私は学園への入学が許されて、今は女子寮に住んでいる。
ちょうどリンの隣の部屋が空いており、毎朝リンと一緒に登校することが増えた。
「アリサ。おはよう。昨日はよく眠れた?」
教室に入ると、すぐベルるんが私に気がついて声をかけてくれる。
写真を倒してから初めての春を迎え、もうすぐ夏休み前だ。ベルるんはローレンやパーシヴァル、アーサーだけではなく、最近はタイロンとも一緒にいることが増えた。
なんとなく男たち5人の中で、共に邪神を倒して絆が芽生えたのかもしれない。私がリンと過ごす時間が増えると同時に、ベルるんも彼らと過ごす時間が増えた。
「タイロン、パーシヴァルおはよ!」
「おはようでござるよ」
「ああ。おはよう」
私の挨拶にパーシヴァルはニコニコ笑顔で、タイロンは少しぶっきらぼうに答える。口数が少なく寡黙なタイロンは、一見近寄りがたい雰囲気がある。
じっと見ていると、ん?とタイロンが不思議そうな表情を浮かべる。
「何かあったか?」
「なんでもないよ」
冷たい雰囲気があるイケメンだが、そう言ってくれる茶色の目は温かみがある。ゲームだとヒロインにだけ、照れたり最高の笑顔見せたりするんだよね!
「アリサ?」
ゲーム中のタイロンが、真っ赤な顔で照れながら笑うスチル(一枚絵)を思い出していると、ぐいっとベルるんに頬を挟まれる。
「浮気者」
「えええ!なんで!」
ベルるんはそう言うと、強引にベルるんの方へ私の顔を向けさせて、鼻をぴんっと指で弾いた。
「あ、アリサ。授業始まるよ」
リンの言葉に慌てて席について、教科書などを引っ張り出す。こういうときに、すぐリンは声をかけてくれる、本当に優しいヒロインだ。
春に行われたお祭りで、すでにローレンとの婚約を発表したリン。つまり、次期水の国の王妃になる予定なのに、まだ私に敬語で話しかけてくる。
どうにか頼み込んで、名前を呼び捨てにはしてもらえたけど、敬語を無くすのは難しそうだな。
じっとリンを見つめると、にこっと笑顔を浮かべてくれたので、私も笑顔を返す。
邪神教徒もいなくなり、世界はすっかり平和を取り戻していた。
「アリサ殿。少し良いか?」
1日の授業が終わり、リンと女子寮へ帰ろうとしたところ、タイロンに呼び止められる。隣にはにこにこ笑顔のベルるんもいる。
「リン、ごめんね。先に戻ってもらっても良いかな?」
「大丈夫ですよ。また、後で」
リンと別れ、タイロンとベルるんのところへいく。話があるようで、人気の少ない中庭へと向かった。
夕方の噴水前は中々雰囲気があるため、ぽつぱつとカップルらしき二人組がいる。静かなことには間違いないので、ここで話をするようだ。
周りに聞こえないように、タイロンは少し声のトーンを抑えて話し出した。
「邪神復活の後にベルンハルトから、俺から出るという土の珠の存在を聞いてな。夏休みが近くなったときに、アリサ殿に聞けと言われたので待っていた」
ちら、とベルるんの方を見ると、うんうんと頷いている。今まで何も言われなかったので、私自身すっかり土の珠について忘れていた。
「それじゃあ、夏の休暇が始まる前日までにやらないといけないことがあるんだけど。今週の休みの日を利用して、土の国に行こうか」
妖精姿でないものの、魔法はそのまま使える。そのため、テレポートを利用すれば、週末の休みだけで土の珠入手の下準備はできそうだ。
私の言葉に、ぱっとタイロンの表情が明るくなる。防御力が上がる土の珠は、邪神がいなくても欲しくなる価値があるものだ。
タイロンに呼び出された理由がわかったけれど、なぜここにベルるんがいるか分からない。ベルるんの方を不思議そうに見ると、ベルるんが私の手をぎゅっと握る。
「まさか婚約中の僕がいるのに、他の男と二人きりで出かけるつもり?」
ぶんぶん、と首を横に振ると、ベルるんは満足そうだ。
「妖精の時と違って姿が消せないでしょう?タイロンと二人でいれば悪い噂が立つかもしれないし、心配だから僕もついて行くよ」
前もってベルるんがついて行く話をしていたのか、タイロンは「助かる」と一言ベルるんに返している。
「早く終わったら土の国の観光もして行こう。美味しいものもたくさんあるみたいだよ」
にこっと笑う推しの笑顔に、思わず眩しい!と目を細める。いつまでも推しの尊さになれない私に、ベルるんが声を出して笑った。
「うん。リンおはよう」
目の前でにこにこと微笑むリンに、私は走り寄る。人間の体になってから、私は学園への入学が許されて、今は女子寮に住んでいる。
ちょうどリンの隣の部屋が空いており、毎朝リンと一緒に登校することが増えた。
「アリサ。おはよう。昨日はよく眠れた?」
教室に入ると、すぐベルるんが私に気がついて声をかけてくれる。
写真を倒してから初めての春を迎え、もうすぐ夏休み前だ。ベルるんはローレンやパーシヴァル、アーサーだけではなく、最近はタイロンとも一緒にいることが増えた。
なんとなく男たち5人の中で、共に邪神を倒して絆が芽生えたのかもしれない。私がリンと過ごす時間が増えると同時に、ベルるんも彼らと過ごす時間が増えた。
「タイロン、パーシヴァルおはよ!」
「おはようでござるよ」
「ああ。おはよう」
私の挨拶にパーシヴァルはニコニコ笑顔で、タイロンは少しぶっきらぼうに答える。口数が少なく寡黙なタイロンは、一見近寄りがたい雰囲気がある。
じっと見ていると、ん?とタイロンが不思議そうな表情を浮かべる。
「何かあったか?」
「なんでもないよ」
冷たい雰囲気があるイケメンだが、そう言ってくれる茶色の目は温かみがある。ゲームだとヒロインにだけ、照れたり最高の笑顔見せたりするんだよね!
「アリサ?」
ゲーム中のタイロンが、真っ赤な顔で照れながら笑うスチル(一枚絵)を思い出していると、ぐいっとベルるんに頬を挟まれる。
「浮気者」
「えええ!なんで!」
ベルるんはそう言うと、強引にベルるんの方へ私の顔を向けさせて、鼻をぴんっと指で弾いた。
「あ、アリサ。授業始まるよ」
リンの言葉に慌てて席について、教科書などを引っ張り出す。こういうときに、すぐリンは声をかけてくれる、本当に優しいヒロインだ。
春に行われたお祭りで、すでにローレンとの婚約を発表したリン。つまり、次期水の国の王妃になる予定なのに、まだ私に敬語で話しかけてくる。
どうにか頼み込んで、名前を呼び捨てにはしてもらえたけど、敬語を無くすのは難しそうだな。
じっとリンを見つめると、にこっと笑顔を浮かべてくれたので、私も笑顔を返す。
邪神教徒もいなくなり、世界はすっかり平和を取り戻していた。
「アリサ殿。少し良いか?」
1日の授業が終わり、リンと女子寮へ帰ろうとしたところ、タイロンに呼び止められる。隣にはにこにこ笑顔のベルるんもいる。
「リン、ごめんね。先に戻ってもらっても良いかな?」
「大丈夫ですよ。また、後で」
リンと別れ、タイロンとベルるんのところへいく。話があるようで、人気の少ない中庭へと向かった。
夕方の噴水前は中々雰囲気があるため、ぽつぱつとカップルらしき二人組がいる。静かなことには間違いないので、ここで話をするようだ。
周りに聞こえないように、タイロンは少し声のトーンを抑えて話し出した。
「邪神復活の後にベルンハルトから、俺から出るという土の珠の存在を聞いてな。夏休みが近くなったときに、アリサ殿に聞けと言われたので待っていた」
ちら、とベルるんの方を見ると、うんうんと頷いている。今まで何も言われなかったので、私自身すっかり土の珠について忘れていた。
「それじゃあ、夏の休暇が始まる前日までにやらないといけないことがあるんだけど。今週の休みの日を利用して、土の国に行こうか」
妖精姿でないものの、魔法はそのまま使える。そのため、テレポートを利用すれば、週末の休みだけで土の珠入手の下準備はできそうだ。
私の言葉に、ぱっとタイロンの表情が明るくなる。防御力が上がる土の珠は、邪神がいなくても欲しくなる価値があるものだ。
タイロンに呼び出された理由がわかったけれど、なぜここにベルるんがいるか分からない。ベルるんの方を不思議そうに見ると、ベルるんが私の手をぎゅっと握る。
「まさか婚約中の僕がいるのに、他の男と二人きりで出かけるつもり?」
ぶんぶん、と首を横に振ると、ベルるんは満足そうだ。
「妖精の時と違って姿が消せないでしょう?タイロンと二人でいれば悪い噂が立つかもしれないし、心配だから僕もついて行くよ」
前もってベルるんがついて行く話をしていたのか、タイロンは「助かる」と一言ベルるんに返している。
「早く終わったら土の国の観光もして行こう。美味しいものもたくさんあるみたいだよ」
にこっと笑う推しの笑顔に、思わず眩しい!と目を細める。いつまでも推しの尊さになれない私に、ベルるんが声を出して笑った。
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