【完結】推しの悪役にしか見えない妖精になって推しと世界を救う話

近藤アリス

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番外編

タイロンと人間になった妖精3

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 村へ戻ると、食堂のすぐ近くにある雑貨屋へ向かう。

「ごめんくださーい」
 
 雑貨屋の中はごちゃっとしており、食品から日用品まで幅広く置いてある。村人の生活必需品は、この店で揃うようになっているみたいだ。

「あれ?さっき麦酒を買ってくれたお嬢さんじゃないか」

 カウンターで店番をしていたヤンが、メガネを掛け直してびっくりしたように言った。

 私は笑顔を浮かべて頭を下げると、アイテムボックスから『忘れられし神の像』を取り出す。

 ヤンは私が手に持つ像を見て驚き、カウンターから出てすぐそばまで急いできた。

「懐かしいな!それ、どこで手に入れたんだい?」

「この像ご存知ですか?」

「酒の神様だろ!うちの親父が信仰してて、小さい頃はよく拝むように言われたよ」

 ちょっといいか?と言われ、これ以上壊れないようにそっと像を手渡す。

「直したいんですが、どなたに頼めばいいか分かりますか?」

「もしかして、また酒好きの親父さんに渡すのかい?」

 ちょうどよく勘違いをしてくれたので、笑顔で頷く。

「うーん。そうだな。隣の村に親父が住んでて、綺麗な形の石像があるから、それを元に隣村の鍛冶屋に依頼をすると……最短で1週間くらいか?」

 1週間なら夏休み前に間に合いそうだ。

「お父様と鍛冶屋さんの名前。あ、あと。隣村の名前と場所も教えてくださいますか?」

 私の言葉にヤンは頷き、すぐに教えてくれる。

 村や人の名前は記憶力の良いベルるんに任せよう。そう思ってベルるんを見ると、にっこり笑ってくれる。

「大丈夫。覚えたよ」

「さすがベルるん!以心伝心だね!」

 何も言わなくても意図を察してくれる私の推しは、最高だと思う!

 ありがたやー。とベルるんに手を合わせると、ヤンやタイロンの困惑した目線を感じたので、すぐ止めた。

 ヤンにお礼を言い、隣村へとすぐに向かう。ヤンの紹介だと伝えると、スムーズに修理まで依頼することができた。

「では、また一週間後にお伺いしますね」

 石像を鍛冶屋さんに渡し、私たちは一度学園へと帰ることにした。










 一週間後。私たちは再び、土の国の村を訪れている。

「これが依頼の品だぜ」

 そう言って渡されたのは、身長の小さな男神。そう、この酒の神様は、ドワーフがモチーフとされているのだ。

 鍛冶屋さんに依頼料を渡し、村から離れるとタイロンへ石像を渡す。

「この前渡したお酒と、この石像を使えば和解ができるはずだよ。ちょっと作戦会議をしようか」

「それなら、学園近くの喫茶店はどう?アリサが好きそうなケーキが置いてあるらしいよ」

「いいね!タイロンもいいかな?」

「問題ない」

 タイロンの同意も取れたので、ベルるんおすすめの喫茶店へ場所を移すことにする。

 喫茶店でケーキと飲み物を頼むと、早速ドワーフの長と和解する方法について伝える。

「元々何でドワーフたちが土の国を出ていったのか、その話は分かる?」

 タイロンが首を振る。

「今回修理してもらった酒の神様の信仰を、土の国が変えさせようとしたのがきっかけみたい。だから、信仰を守ってあげることを約束すれば、土の国に帰ってきてくれるはずだよ」

 そこまで言うと、ちょうど注文していた飲み物やケーキが運ばれてきた。

 ちなみに私は、フルーツたっぷりのタルトに、香り高い紅茶にした。キラキラ光るフルーツがとっても美味しそうだ。

「あの酒は?」

「あれはね。元々は男神に捧げるお酒として造られたものなんだよ。今ではその話は伝わってなくて、ただ美味しいお酒として村で造られてるみたいだけど」

 フォークを手に取り、ケーキへと突き刺す。底のタルト生地がさくっと切れたので、口へと運ぶ。

「うん!美味しい!」

 思わずそう言うと、隣に座るベルるんが嬉しそうにしている。

「それで、ドワーフと話す手順について話そうか。当日の詳しい流れを説明するね」

 私はフォークを一度置いて、タイロンに向き合う。夏休み休暇の前日を逃すと大変なので、ここはしっかりと確認する必要があった。

 私の説明をタイロンは真剣な顔で聞き、頷いてくれる。

「と、まぁ。当日の流れはこんな感じだね!」

 一気に話すと喉の渇きを感じたので、紅茶を一口飲む。私の話を頭の中で確認しているのか、タイロンばじっと黙っている。

「なるほどな。アリサ、感謝する」

「まだ成功してないから、お礼言うのは早いよ!当日上手くいくように頑張ろう」

 タイロンにそう返し、「さあ、食べよう」と言ってフォークを手に取る。

「ところで、タイロン。それ全部食べるの?」

 実はタイロンの前にはケーキの皿が5皿ほどある。真剣な顔をしているので聞きにくかったが、ついに聞いてみる。

「ああ。好きなんだ。ケーキ」

 タイロンはそう言うと大きな体で、ケーキをちょこちょこと食べ出した。真顔だが、なんとなく嬉しそうな雰囲気を感じる。

「アリサ。土の国の観光できなかったから、上手くいったら観光に行こうね」

 頬杖をつきながら私とタイロンの会話を見守っていたベルるん、そう言って私の頬を突っついた。

「うん!とりあえず当日頑張るね!」

 にっこりベルるんに言うと、タイロンが店員さんを呼び止めて追加のケーキを注文した。
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