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18話
しおりを挟むクレアの侍女ニケによる悪質な行為は、クレアが謝罪文とともにニケの首を王城へ届けることで終わった。
アルゼリアは正式にクレアに抗議の文を送ったが、それに対して謝罪が返ってくることはなかった。クレアは全てニケの嫉妬による愚行だとし、彼女自身は裁かれることはなかった。
王城では侍女1人の死は、大きな問題にはならなかった。それよりも、ジェレマイアが公表した、眠り病の治し方の方が注目されたのだ。
王都にある平民が住むエリア。貴族や裕福な商人たちが住む場所とはがらりと雰囲気が異なり、隙間風の通りそうな木製の家たちが立ち並ぶ。
「リリー!ああ。そんな」
そんな家の中で1人の女性が幼い我が子を抱き上げ、涙を流している。女性の肩を抱きしめる夫も涙を流し、周りに集まった村人たちも沈痛な面持ちだ。
「リリーは神に選ばれたんだよ」
泣きながら夫がそう言う。眠り病は聖女でも治せない病であり、安らかに寝たように亡くなることから神に選ばれたと心を慰める親が多くいた。
「私たちにこの子はまだ必要よ!この子にだって神じゃなくて私のそばに居たいはずだわ!」
夫の言葉は心に届かず、ただただアンナは涙を流す。部屋中が重たい雰囲気に満たされ、出直そうと村人たちが部屋を出ようとした時。
「あ、アンナ!お城から眠り病の薬が発表されたって!しかも、村の薬師様がすぐに作れるものらしい」
部屋に飛び込んできた男性は走ってきたのか、ぜえぜえと肩で息をしながら言った。
遅れてやってきた村の薬師が王城から公表された通りの薬を、アンナの娘に飲ませる。
「これで3日から5日すれば目を覚まします。その間に湿らした布でたえずに水分をとらせるように」
「ああ!薬師様。本当にありがとうございます!」
わあわあと泣きながらアンナが薬師の足元に縋り付く。
「アンナ。この薬はジェレマイア殿下の第三妃であるアルゼリア様が知らせてくれたものらしい。感謝はアルゼリア様にしよう」
そう言って薬師はアンナの肩をぽん、と叩くと家から出ていく。村にはまだ眠り病にかかった幼い子がおり、そちらに向かったのだ。
「アルゼリア様。感謝いたします」
アンナはふらふらと家の外に出ると、王城の方角を見て跪き、地面に唇を落とした。
ビオラの考えた薬は王都の貴族、そして平民が住む全ての村に伝えられ、眠り病に怯える人々は消えた。
ジェレマイアから偉業を報告された王は、ジェレマイアに褒美を取らせ、そしてアルゼリアを王城に呼び出し謁見を行うことにした。
そして、謁見の日。
王へと謁見が終わった後に、姿を見せると聞いた多くの平民たちがお城前の広場に集まっていた。たくさんの出店が出て、みんなが眠り病から解放された喜びを爆発させていた。
「アルゼリア様。お綺麗です」
馬車で共にお城まで着いて行ったビオラは、着飾ったアルゼリアをうっとりと見つめて言う。
「本当はビオラが行くはずなのよ?」
「来たか?」
城の前で停めた馬車から降りると、ジェレマイアが二人を出迎えた。すぐに周りの兵士たちが跪き、アルゼリアと遅れてビオラも頭を下げた。
「お前はこっちだ」
「えええ?」
ジェレマイアはつかつかと真っ直ぐビオラの方に歩くと、腕を掴んでそのまま歩き出した。
ビオラが慌ててアルゼリアの方を振り向くと、アルゼリアは顔を上げて微笑む。
「殿下!どこに行くんですか!アルゼリア様はあっちです!」
腕を掴まれているビオラが早口で言うと、ジェレマイアはおかしそうに声を出して笑う。
周りがジェレマイアの行動に驚く中、アルゼリアはジェレマイアが連れてきた男性にエスコートされて、王城へと入った。
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