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やっぱり、婚約破棄はお断りします
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それからレオは忙しくなってしまい、主に手紙のやりとりで二人は仲を深めた。
会えないことは寂しかった。けれど、初めての恋に浮かれているヴァレンティーナには手紙のやりとりですら楽しかったので、そんなに不安になることもなかった。
しかし、大きな不安はそういうときに突如として外からやってくるものなのだ。
――数日後。
ここはウォーレス公爵邸の応接室。細やかな輝きを放つ小ぶりのシャンデリアが窓から入る朝の日差しを受け、キラキラと光を放っている。
その下で、この家の長男であるアンドレイ・ウォーレスが二人の客人を前に緊張した面持ちで紅茶を飲んでいる。
麗しい金髪は手入れ不足で少々艶を損なっているようだが、蒼白となっている顔の造形はすこぶる良い。
目の前にいる客人の夕暮れと夜のあわいを氷柱に映したような、透き通った紫色をした瞳が鋭くアンドレイを捉えたとき、彼は腹を括った。
ごくりと生唾を飲み込んでこう切り出したのだ。
「ヴァレンティーナ、婚約を破棄してほしい」
「……お」
ヴァレンティーナが彼の言葉に答えようとしたとき、応接室に来客の知らせが届いた。
部屋に控えていたウォーレス公爵家の執筆が扉を開けると、入ってきたのはそこにいる全員がよく知る人物だった。
「え……なぜレオニードがここに……」
ヴァレンティーナは驚きに言葉を失っていたが、アンドレイの呟きはしっかりと耳に入っていた。
「レオニード……様……?」
ヴァレンティーナは聞こえた単語を繰り返した。確かにその名前は知っている。
でも、目の前に突然現れた人物とは結びつかない。頭の中での情報処理が追いついていなかった。
「ティーナ、隠していてごめんね。僕はレオニード・ウォーレス。この家の次男。そこにいるアンドレイの弟だ」
ヴァレンティーナがレオと呼んでデートして、想いを通わせて手紙を送り合っていた人物は婚約者の弟だったということだ。
「レオニード、どういうことだ」
「あとで説明する」
アンドレイの問いかけに応えるレオニードは、視線と身体は変わらずヴァレンティーナに向けたままだ。
「おい、お前、兄に向かって……」
それが気に入らなかったのか、アンドレイはレオニードの肩を掴み、自分のほうへと身体を向けようと腕に力を入れた。
……が、レオニードの鍛え上げられた屈強な身体はびくともしなかった。
「弟の幸せを思うなら」
レオニードは仕方なさそうな顔を兄に向けて言った。
「ちょっと黙っててくれる?」
今までレオニードは兄を敬ってきたし、このように雑に扱ったことはなかった。
公爵家の後継となる長男と何も持たない次男の間には大きな壁があり、それを理解していたレオニードはいつも兄を立てていた。
弟の突然の変化に戸惑ったアンドレイは息を呑んで黙り込んだ。話の主導権を渡すしかなかった。
「ヴァレンティーナ、これをあなたに」
レオニードはヴァレンティーナの前に跪き、背に隠し持っていた花束をヴァレンティーナの目の前に恭しく掲げて見せた。
レオニードがアンドレイに抗い、頑として身体の向きを変えようとしなかったのはこのためだったのだ。
ヴァレンティーナを驚かせ、喜ぶ顔が見たいがために――。
「どうか、私と結婚してください」
ヴァレンティーナは突然のできごとに驚いていたが、答えは考えずとも出ていた。
――そうだった。この人に常識なんて通用しないのだったわ。
ヴァレンティーナは満面の笑みで可愛らしくラッピングされた真っ白なユリの花束を手に取った。
「はい。よろしくお願いいたします」
二人はお互いを見つめ合い、微笑み合った。
胸が温かくなるような光景を目にして、ヴァレンティーナの父親はハンカチを手に静かに号泣していた。
娘の嫁入り先にここを選んでよかったと――。
アンドレイは状況を呑み込めず、ただ呆然としていた。
本気でデクスター侯爵家から援助してもらった金を返すつもりで動いていて、最近ようやくその目処が立ったところだった。主に弟がよく働いていてくれたおかげで――。
レオニードはヴァレンティーナの耳元に口を寄せ、何かを嬉しそうに囁いた。それを聞いたヴァレンティーナは瞳を輝かせ、レオに向けて一層美しい笑みを浮かべた。
そしてその光景をただ眺めているアンドレイに向けて、先ほど伝えようとした言葉の続きを紡いだ。
「婚約破棄はお断りいたします」
✳︎✳︎✳︎
実はウォーレス公爵家とデクスター侯爵家の契約では、「ウォーレス公爵家の後継となる者にデクスター侯爵家の長女を嫁がせる」となっていたのだ。
ヴァレンティーナを好きになってからその事実を知ったレオニードは腹を括り、兄に代わってウォーレス公爵家を継ぐことにした。
元々兄より素養があったレオニードは、領地で「レオ・アダム」として復興に心血を注ぎ、高い評価を得ていた。
その功績が認められ、父親から後継になってくれと何度も打診を受けていたのだ。
婚約破棄をせずとも婚約者となったヴァレンティーナとレオニードは、その後なんの障害もなく結婚した。
ユリアと結婚したアンドレイも、ウォーレス公爵領で今後の水害対策についての研究で成果を出し、二人を大いに助けることとなった。
ヴァレンティーナが手に入れたものは、彼女が思い描いていた以上の、常識はずれな幸せだったという――。
Fin.
会えないことは寂しかった。けれど、初めての恋に浮かれているヴァレンティーナには手紙のやりとりですら楽しかったので、そんなに不安になることもなかった。
しかし、大きな不安はそういうときに突如として外からやってくるものなのだ。
――数日後。
ここはウォーレス公爵邸の応接室。細やかな輝きを放つ小ぶりのシャンデリアが窓から入る朝の日差しを受け、キラキラと光を放っている。
その下で、この家の長男であるアンドレイ・ウォーレスが二人の客人を前に緊張した面持ちで紅茶を飲んでいる。
麗しい金髪は手入れ不足で少々艶を損なっているようだが、蒼白となっている顔の造形はすこぶる良い。
目の前にいる客人の夕暮れと夜のあわいを氷柱に映したような、透き通った紫色をした瞳が鋭くアンドレイを捉えたとき、彼は腹を括った。
ごくりと生唾を飲み込んでこう切り出したのだ。
「ヴァレンティーナ、婚約を破棄してほしい」
「……お」
ヴァレンティーナが彼の言葉に答えようとしたとき、応接室に来客の知らせが届いた。
部屋に控えていたウォーレス公爵家の執筆が扉を開けると、入ってきたのはそこにいる全員がよく知る人物だった。
「え……なぜレオニードがここに……」
ヴァレンティーナは驚きに言葉を失っていたが、アンドレイの呟きはしっかりと耳に入っていた。
「レオニード……様……?」
ヴァレンティーナは聞こえた単語を繰り返した。確かにその名前は知っている。
でも、目の前に突然現れた人物とは結びつかない。頭の中での情報処理が追いついていなかった。
「ティーナ、隠していてごめんね。僕はレオニード・ウォーレス。この家の次男。そこにいるアンドレイの弟だ」
ヴァレンティーナがレオと呼んでデートして、想いを通わせて手紙を送り合っていた人物は婚約者の弟だったということだ。
「レオニード、どういうことだ」
「あとで説明する」
アンドレイの問いかけに応えるレオニードは、視線と身体は変わらずヴァレンティーナに向けたままだ。
「おい、お前、兄に向かって……」
それが気に入らなかったのか、アンドレイはレオニードの肩を掴み、自分のほうへと身体を向けようと腕に力を入れた。
……が、レオニードの鍛え上げられた屈強な身体はびくともしなかった。
「弟の幸せを思うなら」
レオニードは仕方なさそうな顔を兄に向けて言った。
「ちょっと黙っててくれる?」
今までレオニードは兄を敬ってきたし、このように雑に扱ったことはなかった。
公爵家の後継となる長男と何も持たない次男の間には大きな壁があり、それを理解していたレオニードはいつも兄を立てていた。
弟の突然の変化に戸惑ったアンドレイは息を呑んで黙り込んだ。話の主導権を渡すしかなかった。
「ヴァレンティーナ、これをあなたに」
レオニードはヴァレンティーナの前に跪き、背に隠し持っていた花束をヴァレンティーナの目の前に恭しく掲げて見せた。
レオニードがアンドレイに抗い、頑として身体の向きを変えようとしなかったのはこのためだったのだ。
ヴァレンティーナを驚かせ、喜ぶ顔が見たいがために――。
「どうか、私と結婚してください」
ヴァレンティーナは突然のできごとに驚いていたが、答えは考えずとも出ていた。
――そうだった。この人に常識なんて通用しないのだったわ。
ヴァレンティーナは満面の笑みで可愛らしくラッピングされた真っ白なユリの花束を手に取った。
「はい。よろしくお願いいたします」
二人はお互いを見つめ合い、微笑み合った。
胸が温かくなるような光景を目にして、ヴァレンティーナの父親はハンカチを手に静かに号泣していた。
娘の嫁入り先にここを選んでよかったと――。
アンドレイは状況を呑み込めず、ただ呆然としていた。
本気でデクスター侯爵家から援助してもらった金を返すつもりで動いていて、最近ようやくその目処が立ったところだった。主に弟がよく働いていてくれたおかげで――。
レオニードはヴァレンティーナの耳元に口を寄せ、何かを嬉しそうに囁いた。それを聞いたヴァレンティーナは瞳を輝かせ、レオに向けて一層美しい笑みを浮かべた。
そしてその光景をただ眺めているアンドレイに向けて、先ほど伝えようとした言葉の続きを紡いだ。
「婚約破棄はお断りいたします」
✳︎✳︎✳︎
実はウォーレス公爵家とデクスター侯爵家の契約では、「ウォーレス公爵家の後継となる者にデクスター侯爵家の長女を嫁がせる」となっていたのだ。
ヴァレンティーナを好きになってからその事実を知ったレオニードは腹を括り、兄に代わってウォーレス公爵家を継ぐことにした。
元々兄より素養があったレオニードは、領地で「レオ・アダム」として復興に心血を注ぎ、高い評価を得ていた。
その功績が認められ、父親から後継になってくれと何度も打診を受けていたのだ。
婚約破棄をせずとも婚約者となったヴァレンティーナとレオニードは、その後なんの障害もなく結婚した。
ユリアと結婚したアンドレイも、ウォーレス公爵領で今後の水害対策についての研究で成果を出し、二人を大いに助けることとなった。
ヴァレンティーナが手に入れたものは、彼女が思い描いていた以上の、常識はずれな幸せだったという――。
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