20 / 21
第四章 新製品の開発と絆
進路
しおりを挟む
それから、私と両親の関係も改善され、今では私も本邸へ移り住み、父と義母と、それからお腹の中の弟か妹と四人で過ごすことも増えた。
時々そこにお休みをもらって帰省したソフィアお姉様も加わり、家族団欒の幸せな時を過ごしている。
前世から望み続け、叶うことはないと諦めていた光景がここに実現していた。
そして何も苦労することなく学園に通い、もうすぐ卒業を迎える。卒業後の進路は既に心に決めている。
――もちろん天職であるビューティーアドバイザーとして就職すること!
家族との関係改善が見込めないならさっさとどこかの家に妻として引き取ってもらう道を模索するつもりだったけれど、その必要もなくなってしまった。
それに、両親も「急いで結婚する必要もなければ、家のために結婚する必要もない」と断言してくれた。さらに「今まで苦労させてしまった分、好きに生きていい」との言質をとっている。
これまでも好きに生きてきたけれど、そう言ってもらえるなら素直にお言葉に甘えるまでだ。
それに、最近ずっと考えていることがあるのだ――。
✳︎✳︎✳︎
「いらっしゃいませ!」
「今日も来てしまいました! 昨日教えていただいたファンデーションのつけ方なのですが、もし殿下がご面倒でなければ、もう一度……」
「喜んで! ではこちらにおかけくださいなー!」
「ありがとうございます……!」
ここ、ヴィタリーサには私の他にもう一人ビューティーアドバイザーが増えた。皆さまお察しの通り、王女殿下のラヴィーちゃんである。
私がメイク技術を教えたあと、それをネタに王宮の侍女たちに話しかけまくっていたそうなのだが、そのおかげでみるみるうちに上達してしまったそうだ。
コミュニケーションをとることが目的だったけれど、話ついでにみんなで研鑽し合って高め合えたとのこと。さすが王宮で働くだけあって、みんな向上心が高いのだなぁと感心した。
ラヴィーちゃんには、お陰で王宮の使用人たちとは仲良くなれたし、メイク技術も格段に上達したし、一石二鳥だったと大変感謝された。
ラヴィーちゃんは今まで引きこもっていたとは思えないほどのコミュ力の高さを見せているし、メイク技術は一朝一夕で身につくものでもない。
私はきっかけを与えたにすぎず、それを元に自分で考え、行動を起こしたことが素晴らしいことなのだと私は思う。
コミュ力に関しては元々ポテンシャルが高かったのだろうし、メイク技術に関してもそうだ。
刺繍が得意だったと聞くし、何をするにも器用な人は存在する。さすがエミリオ様の妹だと感心した。
――さてと。そのエミリオ様を探さないと……。
結局、貴族との交流目的でラヴィーちゃんがヴィタリーサに顔を出すようになって、必然的にエミリオ様の正体は知れ渡ることになった。
――幼いラヴィーちゃんが出入りするのに、身分的にも保護者となれる人がいないと危ないもんね。それで、完成したのがこの状況ね……。
エミリオ様は今日も独身の貴族令嬢たちに囲まれてちやほやされていた。
ヴィタリーサの化粧品は全てエミリオ様が開発したこと、店の運営で莫大な利益をあげていることが周知され、今まで隠していた彼の有能さが露呈してしまった形だ。
――エミリオ様のすごさは、私だけが知っていたのになぁ……。
実際は彼の家族である王族もみんな知っていたけれど、いつまでも「家族以外で知っているのは私だけ」という優越感に浸っていたかったのだ。短い夢だった。
「あーあ、私だけのエミリオ様じゃなくなっちゃったなぁ」
私は胸のうちに溜まっていくモヤモヤをどう発散していいのか分からず、途方に暮れていた。
「大丈夫ですわよ。私がいますわ」
「私も……いるわよ」
私の独り言に答えてくれたのは、イザベラ様とアンブローズ公爵令嬢だった。
「イザベラ様~! あ、アンブローズ公爵令嬢も! お会いしたかったです~!」
そう言って私は久しぶりに会うイザベラ様たちに抱きついた。
「私も会いたかったから、来ちゃった」
「私のことはマーガレットと呼びなさいと言ったはずです。もう……何度言ったらわかるのかしら」
――イザベラ様が美しかわいい……! マーガレット様のツンデレかわいい……!
私が二人の美女に抱きついて癒されていると、モヤモヤの元があちらからやってきた。
「仕事中になにしてるんだ」
「お得意様と話していただけです。店長だって……」
「僕はちゃんと仕事していただろう」
「仕事? 美しいご令嬢方に囲まれるのがお仕事なんですか?」
少し棘のある言葉が思わず出てしまった。
不貞腐れたような物言いになってしまったことも自覚する。
――ああ、こんなこと言いたかったわけじゃないのに……。
私が自分の発言を省みて後悔に苛まれていると、エミリオ様の小さくて大きな呟きが耳に飛び込んできた。
「アイリーン……僕は期待していいのか?」
「…………っ」
最近こうしてよく真剣な表情で尋ねられる。
私はその度にドキドキしてしまって何も言えなくなってしまうのだ。
だんだんわかってきてはいるのだ。私がエミリオ様に対して抱く気持ちについても。でも――。
「ふふふ。青春ですわね」
「はぁ……。私たち、何を見せられているのよ……」
イザベラ様とマーガレット様がそう言って笑ったり呆れたりしているのも、私の目には入っていなかった。
時々そこにお休みをもらって帰省したソフィアお姉様も加わり、家族団欒の幸せな時を過ごしている。
前世から望み続け、叶うことはないと諦めていた光景がここに実現していた。
そして何も苦労することなく学園に通い、もうすぐ卒業を迎える。卒業後の進路は既に心に決めている。
――もちろん天職であるビューティーアドバイザーとして就職すること!
家族との関係改善が見込めないならさっさとどこかの家に妻として引き取ってもらう道を模索するつもりだったけれど、その必要もなくなってしまった。
それに、両親も「急いで結婚する必要もなければ、家のために結婚する必要もない」と断言してくれた。さらに「今まで苦労させてしまった分、好きに生きていい」との言質をとっている。
これまでも好きに生きてきたけれど、そう言ってもらえるなら素直にお言葉に甘えるまでだ。
それに、最近ずっと考えていることがあるのだ――。
✳︎✳︎✳︎
「いらっしゃいませ!」
「今日も来てしまいました! 昨日教えていただいたファンデーションのつけ方なのですが、もし殿下がご面倒でなければ、もう一度……」
「喜んで! ではこちらにおかけくださいなー!」
「ありがとうございます……!」
ここ、ヴィタリーサには私の他にもう一人ビューティーアドバイザーが増えた。皆さまお察しの通り、王女殿下のラヴィーちゃんである。
私がメイク技術を教えたあと、それをネタに王宮の侍女たちに話しかけまくっていたそうなのだが、そのおかげでみるみるうちに上達してしまったそうだ。
コミュニケーションをとることが目的だったけれど、話ついでにみんなで研鑽し合って高め合えたとのこと。さすが王宮で働くだけあって、みんな向上心が高いのだなぁと感心した。
ラヴィーちゃんには、お陰で王宮の使用人たちとは仲良くなれたし、メイク技術も格段に上達したし、一石二鳥だったと大変感謝された。
ラヴィーちゃんは今まで引きこもっていたとは思えないほどのコミュ力の高さを見せているし、メイク技術は一朝一夕で身につくものでもない。
私はきっかけを与えたにすぎず、それを元に自分で考え、行動を起こしたことが素晴らしいことなのだと私は思う。
コミュ力に関しては元々ポテンシャルが高かったのだろうし、メイク技術に関してもそうだ。
刺繍が得意だったと聞くし、何をするにも器用な人は存在する。さすがエミリオ様の妹だと感心した。
――さてと。そのエミリオ様を探さないと……。
結局、貴族との交流目的でラヴィーちゃんがヴィタリーサに顔を出すようになって、必然的にエミリオ様の正体は知れ渡ることになった。
――幼いラヴィーちゃんが出入りするのに、身分的にも保護者となれる人がいないと危ないもんね。それで、完成したのがこの状況ね……。
エミリオ様は今日も独身の貴族令嬢たちに囲まれてちやほやされていた。
ヴィタリーサの化粧品は全てエミリオ様が開発したこと、店の運営で莫大な利益をあげていることが周知され、今まで隠していた彼の有能さが露呈してしまった形だ。
――エミリオ様のすごさは、私だけが知っていたのになぁ……。
実際は彼の家族である王族もみんな知っていたけれど、いつまでも「家族以外で知っているのは私だけ」という優越感に浸っていたかったのだ。短い夢だった。
「あーあ、私だけのエミリオ様じゃなくなっちゃったなぁ」
私は胸のうちに溜まっていくモヤモヤをどう発散していいのか分からず、途方に暮れていた。
「大丈夫ですわよ。私がいますわ」
「私も……いるわよ」
私の独り言に答えてくれたのは、イザベラ様とアンブローズ公爵令嬢だった。
「イザベラ様~! あ、アンブローズ公爵令嬢も! お会いしたかったです~!」
そう言って私は久しぶりに会うイザベラ様たちに抱きついた。
「私も会いたかったから、来ちゃった」
「私のことはマーガレットと呼びなさいと言ったはずです。もう……何度言ったらわかるのかしら」
――イザベラ様が美しかわいい……! マーガレット様のツンデレかわいい……!
私が二人の美女に抱きついて癒されていると、モヤモヤの元があちらからやってきた。
「仕事中になにしてるんだ」
「お得意様と話していただけです。店長だって……」
「僕はちゃんと仕事していただろう」
「仕事? 美しいご令嬢方に囲まれるのがお仕事なんですか?」
少し棘のある言葉が思わず出てしまった。
不貞腐れたような物言いになってしまったことも自覚する。
――ああ、こんなこと言いたかったわけじゃないのに……。
私が自分の発言を省みて後悔に苛まれていると、エミリオ様の小さくて大きな呟きが耳に飛び込んできた。
「アイリーン……僕は期待していいのか?」
「…………っ」
最近こうしてよく真剣な表情で尋ねられる。
私はその度にドキドキしてしまって何も言えなくなってしまうのだ。
だんだんわかってきてはいるのだ。私がエミリオ様に対して抱く気持ちについても。でも――。
「ふふふ。青春ですわね」
「はぁ……。私たち、何を見せられているのよ……」
イザベラ様とマーガレット様がそう言って笑ったり呆れたりしているのも、私の目には入っていなかった。
25
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。
【完結済】冷血公爵様の家で働くことになりまして~婚約破棄された侯爵令嬢ですが公爵様の侍女として働いています。なぜか溺愛され離してくれません~
北城らんまる
恋愛
**HOTランキング11位入り! ありがとうございます!**
「薄気味悪い魔女め。おまえの悪行をここにて読み上げ、断罪する」
侯爵令嬢であるレティシア・ランドハルスは、ある日、婚約者の男から魔女と断罪され、婚約破棄を言い渡される。父に勘当されたレティシアだったが、それは娘の幸せを考えて、あえてしたことだった。父の手紙に書かれていた住所に向かうと、そこはなんと冷血と知られるルヴォンヒルテ次期公爵のジルクスが一人で住んでいる別荘だった。
「あなたの侍女になります」
「本気か?」
匿ってもらうだけの女になりたくない。
レティシアはルヴォンヒルテ次期公爵の見習い侍女として、第二の人生を歩み始めた。
一方その頃、レティシアを魔女と断罪した元婚約者には、不穏な影が忍び寄っていた。
レティシアが作っていたお守りが、実は元婚約者の身を魔物から守っていたのだ。そんなことも知らない元婚約者には、どんどん不幸なことが起こり始め……。
※ざまぁ要素あり(主人公が何かをするわけではありません)
※設定はゆるふわ。
※3万文字で終わります
※全話投稿済です
白い結婚のはずが、旦那様の溺愛が止まりません!――冷徹領主と政略令嬢の甘すぎる夫婦生活
しおしお
恋愛
政略結婚の末、侯爵家から「価値がない」と切り捨てられた令嬢リオラ。
新しい夫となったのは、噂で“冷徹”と囁かれる辺境領主ラディス。
二人は互いの自由のため――**干渉しない“白い結婚”**を結ぶことに。
ところが。
◆市場に行けばついてくる
◆荷物は全部持ちたがる
◆雨の日は仕事を早退して帰ってくる
◆ちょっと笑うだけで顔が真っ赤になる
……どう見ても、干渉しまくり。
「旦那様、これは白い結婚のはずでは……?」
「……君のことを、放っておけない」
距離はゆっくり縮まり、
優しすぎる態度にリオラの心も揺れ始める。
そんな時、彼女を利用しようと実家が再び手を伸ばす。
“冷徹”と呼ばれた旦那様の怒りが静かに燃え――
「二度と妻を侮辱するな」
守られ、支え合い、やがて惹かれ合う二人の想いは、
いつしか“形だけの夫婦”を超えていく。
異世界転生公爵令嬢は、オタク知識で世界を救う。
ふわふわ
恋愛
過労死したオタク女子SE・桜井美咲は、アストラル王国の公爵令嬢エリアナとして転生。
前世知識フル装備でEDTA(重金属解毒)、ペニシリン、輸血、輪作・土壌改良、下水道整備、時計や文字の改良まで――「ラノベで読んだ」「ゲームで見た」を現実にして、疫病と貧困にあえぐ世界を丸ごとアップデートしていく。
婚約破棄→ザマァから始まり、医学革命・農業革命・衛生革命で「狂気のお嬢様」呼ばわりから一転“聖女様”に。
国家間の緊張が高まる中、平和のために隣国アリディアの第一王子レオナルド(5歳→6歳)と政略婚約→結婚へ。
無邪気で健気な“甘えん坊王子”に日々萌え悶えつつも、彼の未来の王としての成長を支え合う「清らかで温かい夫婦日常」と「社会を良くする小さな革命」を描く、爽快×癒しの異世界恋愛ザマァ物語。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
【完結】悪役令嬢は折られたフラグに気が付かない〜王子たちは悪役令嬢の平穏を守れるのか!?〜【全23話+おまけ2話】
早奈恵
恋愛
エドウィン王子から婚約破棄されて、修道院でいじめ抜かれて死んでしまう予知夢を見た公爵令嬢アデリアーナは、男爵令嬢のパナピーアに誘惑されてしまうはずの攻略対象者との出会いを邪魔して、予知夢を回避できるのか試そうとする。
婚約破棄への道を自分で潰すつもりなのに、現実は何だか予知夢の内容とどんどんかけ離れて、知らないうちに話が進んでいき……。
宰相インテリ子息、騎士団長の脳筋子息、実家を継ぐために養子になったわんこ系義弟、そして婚約者の王太子エドウィンが頑張る話。
*リハビリに短編を書く予定が中編くらいになってしまいましたが、すでにラストまで書き終えている完結確約作品です。全23話+おまけ2話、よろしくお願いします。
*短い期間ですがHOTランキング1位に到達した作品です。
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる