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第四章 逆行の真相
予兆
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奨学生寮に引っ越したその日、ロザリア様に温室でお茶をご馳走になったあと、私は気づいたら割り当てられた部屋の中にいた。
「リリアーヌお嬢様、こちらをどうぞ」
目の前に置いてあるテーブルに音もなくティーカップとソーサーが置かれる。温かそうな湯気がたつカップからはいつもと同じ香りがしてほっとする。シエンナが私の好きな紅茶を淹れてくれたらしい。
「ありがとう。私、どうやって帰ってきたんだっけ?」
「つい先ほどのことですのに、もうお忘れになってしまったのですか?」
とぼけたような質問をしてしまって焦ったが、私がぼーっとしていたのを見ていたからなのか、シエンナはくすくす笑いながら答えをくれた。
「リリアーヌお嬢様はロザリア様と一緒に戻られましたよ。とても丁寧にご挨拶をいただきました。素敵なご令嬢ですよね。いつの間に仲良くなったのですか?」
「そうだったわね。……さっき、寮内の施設を確認しに出たときに出会って、おいしい紅茶をご馳走になったのよ」
シエンナに教えてもらって思い出した。顔を真っ青にした私を心配したロザリア様が自ら送ると名乗り出て、部屋まで付き添ってくれたのだった。
――最後まで素晴らしい方だった……。
「リリアーヌお嬢様は社交的でいらっしゃいますね。素晴らしいことです」
「うん。ありがとうシエンナ。悪いのだけど、少し一人にしてもらっていい?」
「もちろんです。では、失礼いたしますね」
侍女用の部屋は私が今いる居間を挟み、私が寝室として使う部屋とは反対側の扉を開いたところにある。侍女用の部屋の扉の向こうへとシエンナが姿を消すまで見送り、私は紅茶を持って立ち上がり自分の寝室のほうへと足を向けた。
――ルイ様にはずっと想っている方がいる。ロザリア様のような見た目も性格も完璧な女性に見向きもしなかったルイ様が、昔からひたむきに想っている方……。
ルイ様に想う方がいるという事実は、私にとってはとても衝撃的だった。当然、ルイ様に想うお相手がいる可能性を考えたことがないわけではない。それでも、心のどこかで「それはもしかしたら私なのかもしれない」とおこがましくも期待する気持ちがあったのだ。それがロザリア様の一言で打ち砕かれてしまったから、私はこんなにもショックを受けているに違いないのだが……。
――どうして、他に好きな人がいるのに私にキスされたのだろう……。
私がルイ様にあの日キスされて舞い上がってしまったのは、「ルイ様も私のことを少なからず好ましく思ってくださっている」とその瞬間実感できたからだ。
でも、他に好きな女性がいるのだとしたら……。
――わからない。わからないけれど、ルイ様はクラウスのように不誠実なことをする方ではないわ。それだけは間違いない。
きっと理由があるのだと思った。
ドアを開けて寝室に入った私は、ベッドに腰掛けながら紅茶を口に含む。いつもより長く苦味が舌に残った気がした。茶葉の苦味に叱咤激励されるように、荒れそうになる心を落ち着かせながら考えをまとめる。
――憶測で決めつけるのはよくないわ。本人に聞いてみないと。……少し怖いけど。
不安に思う気持ちは頭の隅に追いやり、私はいつもの自分を取り戻した。
――くよくよするのは私らしくないわ。本人に直接確認しないと。悩むのはそれからでも遅くないもの。
そう決意した私は、翌日からルイ様に会える機会を窺っていたのだけれど。それからルイ様もアラスター様も学園に姿を現さなくなった。
一日だけアラスター様の姿を確認できた日があったけれど、その日も私にルイ様からの手紙を託すと、すぐに王宮へと戻っていったようだった。
手紙にはしばらく公務で多忙になるので学園には通えないということと、次に会ったときに渡そうと思っていたノートがあるので、それを手紙と共に届けたかったのだという内容が美しい文字で書かれていた。
ノートを開くと、これから私が学習する範囲の教科別での学習内容が丁寧にわかりやすくまとめられていた。私が躓きそうなところを中心に、重要な箇所や注意点も書き込んであった。それは言うなれば私専用の参考書で――。
――忙しいはずなのに……。きっと大変な思いをしながら準備してくれたに違いないわ。本当に、ルイ様は……。
こうして私のキュンを根こそぎ奪っていくのだ。今回なんて遠隔操作だ。これ以上ないくらい好きでいるつもりでも、まだ上があるのかと毎回驚くほど愛おしさが募っていく。
――ルイ様、私はあなたを信じていますから。だから、次に会えたときには私の質問に答えてくださいね。
それから二週間たってもルイ様は忙しいままだった。宙に浮いた私の決意は未だに着地点を見つけられずにいる。
それでも日々は過ぎていくから、できるだけルイ様のことは考えないで、やらなければならないことに集中した。そうしないと頭の隅に追いやった不安が頭をもたげて私を支配しそうになるから――。
ルイ様の手紙の最後には、『時間ができたら必ず一番に会いに行く』そう書いてあったから。私にできることは彼の言葉を信じて待つだけだった。
✳︎✳︎✳︎
――それからまた二週間たった。奨学生となって約一ヵ月が過ぎたことになる。
奨学生になったことで実力が証明され、私は名誉を手に入れることになった。学園にはもちろんルイ様と私の婚約披露パーティーに出席していた親を持つ学生も多数いる。親から何か言い含められていたり、仲睦まじい私たちの姿を見て意識を変えたりして、学生たちの多くは私に対する態度も軟化したように感じられた。
王家やルイ様の影響力は偉大だと感謝する一方で、私への態度が「変わらない」もしくは「悪化する」人たちの存在も浮き彫りになった。その筆頭がカトレア・スカーレット公爵令嬢である。
カトレアも才色兼備の令嬢なので、私と同じタイミングで奨学生に選出された。同じ寮で過ごす関係上、会う機会も多かったのだが、最近はすれ違うこともなくなった。おそらく私は彼女に避けられているのだろうと思う。会うことがあっても挨拶は無視され、目も合わせてもらえないので取り付く島もない。
カトレアには会うたびに精神が削られていくので辛かったが、逆に入寮の日以来、ロザリア様が私にとても好意的に接してくれるので、私の精神は平穏を保てていられたのだと思う。
クラウスは今回のテストで成績が振るわなかったらしく、奨学生寮を出ることになったと噂で聞いた。寮で顔を合わせる事態を回避できて何よりだ。
また、私は奨学生になったことで手に入れた王宮図書館へ入れる権利も大いに活用していた。
ルイ様が私に授けてくれた専用参考書のおかげで勉強が捗り、私を死に至らしめる病気について調べる時間を作ることができていたのだ。
私の命の期限まであと三年あるはずだけれど、私が行動したことで未来は未知の方向へと進みつつある。だから今回もきっちり同じタイミングで体調が悪くなるのかはわからない。早めに準備しておくに越したことはなかった。
私の最後の記憶を正確に辿ると、確か「病気ではない、恐らく呪術ではないか」と言われていたことを思い出した。それでも一応自分で調べて納得したかったので、この一ヶ月間病気関連の文献も大量に目を通した。でも、当時流行った疫病についてはまだ資料が少ない……というか全くない状態だった。当然ながらまだ治療薬は開発されていない。
――確か、疫病撲滅のためのチームが組まれたのだったわね。そのおかげでたくさんの人が助かったと聞いたわ。でも、私の身体に現れた疫病に酷似した症状はその薬を飲んでも全く改善しなかった……。
つまり、私の身体を蝕んでいたのはその疫病ではなかったということだ。私を診てくれていた医師が言っていたのだから間違いない。「この疫病にかかって、あの治療薬を使用して治らなかった患者はいない」と――。
だから病気ではないのではないかという話になった。そこから、なぜ毒の可能性が排除されて呪術なのではないかという結論に達したのかはわからないけれど、家族は皆全力で私を治す方法を探してくれていた。
――今度はベッドで見て聞いているだけではなく、私の足で探せる……!
もう身体がうまく動かなかった私はいない。自分の力で未来を変えるのだ。そう決意を新たにし、王宮図書館で毒や呪術に関する本を探してみると、関連本がたくさんあって驚いた。
毒については、調べてみると最後は痙攣や心臓麻痺に陥って死に至る場合が多いみたいだ。私の最期の症状と似ているからあり得なくはないが、毎日少しずつ摂取したのだとしたら、犯人はジェセニア伯爵邸の人間である可能性が高い。
――うーん。お父様たちが屋敷の中の人間を調べないはずがないし、調べた上で「毒ではない」と結論づけたのなら、その判断は信頼できるわよね。
そうだ。だからきっと「呪術である可能性が高い」ということになったのだ。
病気も毒も違ったから呪術。消去法ではあるが、それも仕方ない。私たちは呪術について詳しく学ぶということをしてこなかったので、知識がなさすぎるのだ。古い文献によると、呪術は闇魔法がベースになっているので、闇魔法が使える人でないと使用することは不可能なようだ。
魔法を使える者は国へ報告する義務があるので、その記録を探して文献を読み漁ったが、スヴェロフ王国で闇魔法を使える人間は一人もいなかった。
――すごい。求めている情報がすぐ手に入る。王宮図書館は調べ物をするには最高の環境だわ……!
王宮図書館の蔵書数に感動していると、魔法の法律が詳しく書かれた文献に、小さく書かれた但し書きの欄が目に入った。
――ただし、どの属性の魔力持つ場合であっても、微量であれば報告の義務はない……。なるほど。報告していない微量の闇魔法を使って少しずつ何かしたとすれば可能ということか……。呪いたくなるくらい私を恨んでる人……。
逆行前の私が恨みを買うとしたら、おそらくクラウス関連だ。あの頃の私の中ではクラウスが全てで、クラウスを中心に世界が回っていたから、それ以外の原因というと全く思い当たらない。ある意味ありがたいことだ。
――当時からクラウスは浮気していたのかしら? そうだとしたらその浮気相手が怪しいけど……。
逆行前と今では状況が全く変わってしまっているから、調べようがないのだ。
報告義務のない微力の闇魔法の使い手を探す方法を調べつつ、クラウスと婚約していたときに私に恨みを持っていた人物を調べることを決めた頃――。
私の身体に、徐々に異変が現れ始めた。
「リリアーヌお嬢様、こちらをどうぞ」
目の前に置いてあるテーブルに音もなくティーカップとソーサーが置かれる。温かそうな湯気がたつカップからはいつもと同じ香りがしてほっとする。シエンナが私の好きな紅茶を淹れてくれたらしい。
「ありがとう。私、どうやって帰ってきたんだっけ?」
「つい先ほどのことですのに、もうお忘れになってしまったのですか?」
とぼけたような質問をしてしまって焦ったが、私がぼーっとしていたのを見ていたからなのか、シエンナはくすくす笑いながら答えをくれた。
「リリアーヌお嬢様はロザリア様と一緒に戻られましたよ。とても丁寧にご挨拶をいただきました。素敵なご令嬢ですよね。いつの間に仲良くなったのですか?」
「そうだったわね。……さっき、寮内の施設を確認しに出たときに出会って、おいしい紅茶をご馳走になったのよ」
シエンナに教えてもらって思い出した。顔を真っ青にした私を心配したロザリア様が自ら送ると名乗り出て、部屋まで付き添ってくれたのだった。
――最後まで素晴らしい方だった……。
「リリアーヌお嬢様は社交的でいらっしゃいますね。素晴らしいことです」
「うん。ありがとうシエンナ。悪いのだけど、少し一人にしてもらっていい?」
「もちろんです。では、失礼いたしますね」
侍女用の部屋は私が今いる居間を挟み、私が寝室として使う部屋とは反対側の扉を開いたところにある。侍女用の部屋の扉の向こうへとシエンナが姿を消すまで見送り、私は紅茶を持って立ち上がり自分の寝室のほうへと足を向けた。
――ルイ様にはずっと想っている方がいる。ロザリア様のような見た目も性格も完璧な女性に見向きもしなかったルイ様が、昔からひたむきに想っている方……。
ルイ様に想う方がいるという事実は、私にとってはとても衝撃的だった。当然、ルイ様に想うお相手がいる可能性を考えたことがないわけではない。それでも、心のどこかで「それはもしかしたら私なのかもしれない」とおこがましくも期待する気持ちがあったのだ。それがロザリア様の一言で打ち砕かれてしまったから、私はこんなにもショックを受けているに違いないのだが……。
――どうして、他に好きな人がいるのに私にキスされたのだろう……。
私がルイ様にあの日キスされて舞い上がってしまったのは、「ルイ様も私のことを少なからず好ましく思ってくださっている」とその瞬間実感できたからだ。
でも、他に好きな女性がいるのだとしたら……。
――わからない。わからないけれど、ルイ様はクラウスのように不誠実なことをする方ではないわ。それだけは間違いない。
きっと理由があるのだと思った。
ドアを開けて寝室に入った私は、ベッドに腰掛けながら紅茶を口に含む。いつもより長く苦味が舌に残った気がした。茶葉の苦味に叱咤激励されるように、荒れそうになる心を落ち着かせながら考えをまとめる。
――憶測で決めつけるのはよくないわ。本人に聞いてみないと。……少し怖いけど。
不安に思う気持ちは頭の隅に追いやり、私はいつもの自分を取り戻した。
――くよくよするのは私らしくないわ。本人に直接確認しないと。悩むのはそれからでも遅くないもの。
そう決意した私は、翌日からルイ様に会える機会を窺っていたのだけれど。それからルイ様もアラスター様も学園に姿を現さなくなった。
一日だけアラスター様の姿を確認できた日があったけれど、その日も私にルイ様からの手紙を託すと、すぐに王宮へと戻っていったようだった。
手紙にはしばらく公務で多忙になるので学園には通えないということと、次に会ったときに渡そうと思っていたノートがあるので、それを手紙と共に届けたかったのだという内容が美しい文字で書かれていた。
ノートを開くと、これから私が学習する範囲の教科別での学習内容が丁寧にわかりやすくまとめられていた。私が躓きそうなところを中心に、重要な箇所や注意点も書き込んであった。それは言うなれば私専用の参考書で――。
――忙しいはずなのに……。きっと大変な思いをしながら準備してくれたに違いないわ。本当に、ルイ様は……。
こうして私のキュンを根こそぎ奪っていくのだ。今回なんて遠隔操作だ。これ以上ないくらい好きでいるつもりでも、まだ上があるのかと毎回驚くほど愛おしさが募っていく。
――ルイ様、私はあなたを信じていますから。だから、次に会えたときには私の質問に答えてくださいね。
それから二週間たってもルイ様は忙しいままだった。宙に浮いた私の決意は未だに着地点を見つけられずにいる。
それでも日々は過ぎていくから、できるだけルイ様のことは考えないで、やらなければならないことに集中した。そうしないと頭の隅に追いやった不安が頭をもたげて私を支配しそうになるから――。
ルイ様の手紙の最後には、『時間ができたら必ず一番に会いに行く』そう書いてあったから。私にできることは彼の言葉を信じて待つだけだった。
✳︎✳︎✳︎
――それからまた二週間たった。奨学生となって約一ヵ月が過ぎたことになる。
奨学生になったことで実力が証明され、私は名誉を手に入れることになった。学園にはもちろんルイ様と私の婚約披露パーティーに出席していた親を持つ学生も多数いる。親から何か言い含められていたり、仲睦まじい私たちの姿を見て意識を変えたりして、学生たちの多くは私に対する態度も軟化したように感じられた。
王家やルイ様の影響力は偉大だと感謝する一方で、私への態度が「変わらない」もしくは「悪化する」人たちの存在も浮き彫りになった。その筆頭がカトレア・スカーレット公爵令嬢である。
カトレアも才色兼備の令嬢なので、私と同じタイミングで奨学生に選出された。同じ寮で過ごす関係上、会う機会も多かったのだが、最近はすれ違うこともなくなった。おそらく私は彼女に避けられているのだろうと思う。会うことがあっても挨拶は無視され、目も合わせてもらえないので取り付く島もない。
カトレアには会うたびに精神が削られていくので辛かったが、逆に入寮の日以来、ロザリア様が私にとても好意的に接してくれるので、私の精神は平穏を保てていられたのだと思う。
クラウスは今回のテストで成績が振るわなかったらしく、奨学生寮を出ることになったと噂で聞いた。寮で顔を合わせる事態を回避できて何よりだ。
また、私は奨学生になったことで手に入れた王宮図書館へ入れる権利も大いに活用していた。
ルイ様が私に授けてくれた専用参考書のおかげで勉強が捗り、私を死に至らしめる病気について調べる時間を作ることができていたのだ。
私の命の期限まであと三年あるはずだけれど、私が行動したことで未来は未知の方向へと進みつつある。だから今回もきっちり同じタイミングで体調が悪くなるのかはわからない。早めに準備しておくに越したことはなかった。
私の最後の記憶を正確に辿ると、確か「病気ではない、恐らく呪術ではないか」と言われていたことを思い出した。それでも一応自分で調べて納得したかったので、この一ヶ月間病気関連の文献も大量に目を通した。でも、当時流行った疫病についてはまだ資料が少ない……というか全くない状態だった。当然ながらまだ治療薬は開発されていない。
――確か、疫病撲滅のためのチームが組まれたのだったわね。そのおかげでたくさんの人が助かったと聞いたわ。でも、私の身体に現れた疫病に酷似した症状はその薬を飲んでも全く改善しなかった……。
つまり、私の身体を蝕んでいたのはその疫病ではなかったということだ。私を診てくれていた医師が言っていたのだから間違いない。「この疫病にかかって、あの治療薬を使用して治らなかった患者はいない」と――。
だから病気ではないのではないかという話になった。そこから、なぜ毒の可能性が排除されて呪術なのではないかという結論に達したのかはわからないけれど、家族は皆全力で私を治す方法を探してくれていた。
――今度はベッドで見て聞いているだけではなく、私の足で探せる……!
もう身体がうまく動かなかった私はいない。自分の力で未来を変えるのだ。そう決意を新たにし、王宮図書館で毒や呪術に関する本を探してみると、関連本がたくさんあって驚いた。
毒については、調べてみると最後は痙攣や心臓麻痺に陥って死に至る場合が多いみたいだ。私の最期の症状と似ているからあり得なくはないが、毎日少しずつ摂取したのだとしたら、犯人はジェセニア伯爵邸の人間である可能性が高い。
――うーん。お父様たちが屋敷の中の人間を調べないはずがないし、調べた上で「毒ではない」と結論づけたのなら、その判断は信頼できるわよね。
そうだ。だからきっと「呪術である可能性が高い」ということになったのだ。
病気も毒も違ったから呪術。消去法ではあるが、それも仕方ない。私たちは呪術について詳しく学ぶということをしてこなかったので、知識がなさすぎるのだ。古い文献によると、呪術は闇魔法がベースになっているので、闇魔法が使える人でないと使用することは不可能なようだ。
魔法を使える者は国へ報告する義務があるので、その記録を探して文献を読み漁ったが、スヴェロフ王国で闇魔法を使える人間は一人もいなかった。
――すごい。求めている情報がすぐ手に入る。王宮図書館は調べ物をするには最高の環境だわ……!
王宮図書館の蔵書数に感動していると、魔法の法律が詳しく書かれた文献に、小さく書かれた但し書きの欄が目に入った。
――ただし、どの属性の魔力持つ場合であっても、微量であれば報告の義務はない……。なるほど。報告していない微量の闇魔法を使って少しずつ何かしたとすれば可能ということか……。呪いたくなるくらい私を恨んでる人……。
逆行前の私が恨みを買うとしたら、おそらくクラウス関連だ。あの頃の私の中ではクラウスが全てで、クラウスを中心に世界が回っていたから、それ以外の原因というと全く思い当たらない。ある意味ありがたいことだ。
――当時からクラウスは浮気していたのかしら? そうだとしたらその浮気相手が怪しいけど……。
逆行前と今では状況が全く変わってしまっているから、調べようがないのだ。
報告義務のない微力の闇魔法の使い手を探す方法を調べつつ、クラウスと婚約していたときに私に恨みを持っていた人物を調べることを決めた頃――。
私の身体に、徐々に異変が現れ始めた。
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