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第1話:俺の前世は妖精聖姫
しおりを挟む「魔物の襲来だー!」
「逃げろ~!」
カルシスの村に悲痛な悲鳴が響き渡る。
この村、カルシスはデュガグレス王国の中でも辺境に位置しており、そのせいで魔物の襲来が絶えない村であった。
国王もこんな辺境まで兵士を派遣してはくれない。
一応、自警団が組織されてはいるものの、凶暴な魔物を相手にしては力不足なのがホントの所であった。
「くそ! 俺がみんなを逃げるまでの時間を稼ぐ!」
「無茶言うなよ、レイ! ベヒーモスまでいるんだぞ!」
そんな中、自警団の少年剣士レイは勇猛果敢さを発揮し、魔物と戦おうとする。
しかし、友人で同じく自警団のラリアスの言う通りであった。
レイの剣ではベヒーモス相手に戦えない。
下級の魔物相手ならなんとかならないこともないのだが、それでも少し厳しい。
かといって、何もしないで逃げるのでは村中を魔物たちに荒らし回られてしまう。
それも嫌だ。
既に何度も蹂躙された村はボロボロだが、それを更にボロボロにされるというのは納得がいかない。
「やっぱり俺は残る! 魔物たちに一泡吹かせてやる!」
周りの反対を振り切り、レイは剣を構えると村に残った。
魔物たちがやって来る。
ブラッディウルフやハンマーコングと言った地上型の中型魔物に、デスハムスター、ヘイトスライムといった小型魔物。
そして、それらをまとめ上げるように突っ込んでくる大型魔物ベヒーモス。
とてもレイ一人でどうこうできる数ではない。
それでも、レイは剣を構え、抵抗できるだけ抵抗してやろうとした。
デスハムスターやヘイトスライムといった小型の魔物たちを斬り捨てる。
このレベルの魔物相手ならレイでも対抗できる。
そのまま中型魔物と刃を交えるが、レイの体にも傷が刻まれていく。
中型魔物も何匹か倒したが、レイの体力には限界が訪れようとしていた。
ハンマーコングの拳を腹に受け、革製の鎧を貫く一撃に後ろにふっ飛ばされ、倒れ込む。
立ち上がることは、できなかった。
青い空を見ながら、レイは「くそ……!」と呻く。
魔物たちめ。
こいつらは俺たちをやりたい放題にして、好き勝手やってやがる。
せめて、もう一矢報いることができたのなら。
そんなことを思うが、そんなことは夢物語だ。そう思っていると、
「魔物たち、好きにはやらせません!」
一人の少女の声が響いた。
見てみれば緑髪を腰まで垂らし、露出度の高い格好をした少女がいた。
こんな所に何故、少女が。危ない、逃げろ、とレイは思うが、その少女は胸の谷間を強調する服を着ていて、下半身はハイレグで太ももを晒していた。
何よりも注意を惹かれたのはその背中の部分の服がパックリ、開いており、そこから羽根が生えている点だ。
(人間じゃない……?)
レイはそう思った。その少女は手をかざすとそこから光線が放たれ、魔物たちの群れを吹き飛ばした。
これは噂に聞く妖精、と言うものだろうか? 魔物とも敵対し、人間を助けてくれるという。
そう思って妖精らしき少女の戦いぶりを見ていると妖精の少女はこちらに気付いた。
魔物の群れにもう一発、光線を放ち、レイのもとに駆け寄って来る。
「貴方、人間なのにあれだけの魔物と戦おうとしたのですか?」
「まぁ、俺たちだって、やられているだけじゃ堪らないからね」
「それはそうですが……え!?」
すると妖精の少女は驚いたように目を見開いた。
なんだろう、とレイは思うと「リリィ様!」と妖精の少女はレイのことを呼んだ。
「ああ、リリィ様。リリィ様なのですね……お変わりになられてしまって……ですが、このシリアには分かります」
「何を言っているんだ?」
シリアというらしい妖精の少女はレイのことをリリィと呼んだ。
しかし、レイの名はレイである。
断じてリリィなんて女の子のような名前ではない。
「記憶も力もなくされて、人間の、それも男に転生させられたのですね……これもドーハ・ズーラの呪いですか……」
「いや、だから、君は何を言って……」
「リリィ様。私の力を貸し与えます。リリィ様の前世の姿に戻るのです」
前世? レイが訳が分からないでいるとシリアはレイの胸に手を当てた。
そして何やら魔力を注いでくる。
「何をやって……あ……」
レイが困惑しているとレイの体が光り輝いた。
光の中でレイの肉体は変貌を遂げていく。
少年として165cmはあった身長は140cmほどに縮み、黒髪の短髪は銀色の長髪に変わる。
体付きも筋肉が削げ落ち、細っこい華奢で可憐な体躯になる。
そして、胸はほのかに膨らみ、股間からはあれの存在が消失したことが分かる。
(女の子に……妖精になってる……?)
それしか考えられなかった。
その華奢で華麗な体を薄布が包む。胸には小さな胸を隠す小さな胸甲が出現し、ハイレグで太ももはおろか股間が少しむき出しになった格好。背中からは羽根が生える。
気が付けばレイの体は妖精の美少女、いやロリ美少女のものになっていた。
「な、なんだ!? あんたは俺に何をしたんだ!?」
そう言う声も男の野太い声から可憐な少女の声に変わっていてレイはギョッとする。
「妖精聖姫リリィ様。貴方の本来の肉体に戻っていただきました」
「妖精聖姫リリィ……?」
何のことだろう。
そう思っている間にも村を襲った魔物たちは暴れまわっている。
今はアレを止めるのが先決か、と訳が分からないなりにレイは決断する。
正直、自分の体に起こった変化は認めてしまえば気が狂いそうなものだったから、というのもあるが。
「とにかくシリア、って言うんだろ? 魔物たちを倒すぞ」
「はい。リリィ様。リリィ様ならあの程度の魔物たち楽な相手です」
だからリリィ様じゃないっての。
そう思いつつもレイは羽根を羽ばたかせようとした。
すると小柄になった体が宙空に浮き上がり、魔物の元に迫っていく。
剣はない。しかし、この体が妖精のものになったのならできるはずだ。
「はあっ!」
手をかざし、叫ぶ。その手から暴風が放たれ、魔物たちを蹴散らした。
「もう一発!」
もう一度、手をかざす。今度は閃光が放たれ、やはり魔物たちを蹴散らす。
とんでもない力だ。レイはそう思った。
これが妖精魔法と言うものか。人間の使う魔法とは桁違いの威力を誇るという。
この力があれば魔物相手でも戦える。あのベヒーモスだって、倒せる。
そう思いレイはベヒーモスの元に飛んでいく。
ベヒーモスは咆哮を上げ、こちらを威嚇する。
思わずビビるレイだが、今のこの妖精の肉体なら、負けはしない。
そう思い、ベヒーモスに手をかざす。
そこから放たれた閃光はベヒーモスの体を揺るがし、後ろに吹っ飛ばす。
体が自然と戦い方を覚えているような感じであった。
レイは両手を合わせる。そこから極太の光線が放たれ、ベヒーモスの体を貫いた。
ベヒーモスは倒れ、他の魔物たちも恐れをなしたか逃走を始める。
「勝てた……」
実感の湧かないままレイは地上に着地する。
シリアがレイのそばにやって来た。
「さすがはリリィ様です。人間の男に成り果てようともその力は少しも衰えていませんね」
「なんだかよく分からないけど。シリア。あんたにはリリィがどうとか、妖精聖姫がどうとか、なんで俺が妖精になったのかとかを訊かせてもらうぞ」
そう言い、シリアを見るレイであった。
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