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第2話:魔将退治へ
しおりを挟む可憐なるロリ美少女妖精の体になっていたレイの体はそれからしばらくすると元の少年の、男の体に戻った。
レイとしてはずっとあの妖精の体になるのは御免だったのでホッとしつつ、自らの体を見る。
「やはり完全に前世の姿を取り戻した訳ではないのですね、リリィ様」
残念そうにシリアは言ったが、レイとしてはありがたいことであった。それよりも、だ。
「もうすぐ逃げていた村人たちも帰ってくるだろう。そこで事情を聞かせてもらうぞ」
「分かりました、お話しましょう、リリィ様」
「俺の名前はレイだ。そっちで呼んでくれ」
「は、はい……レイ様」
様もいらないんだけどな、と思いつつも、帰って来た村人たちは驚いた顔をしていた。
村は多少荒らされているが、ベヒーモスがやって来た割には被害が少ない。
それどころかそのベヒーモスが死体となって村の中に転がっているのだ。
これを俺がやったんだよな、とレイは思う。自分でも信じられなかった。
「どうしたんだよ、レイ! まさか、お前が倒したのか!?」
信じられないというように友人のラリアスが言う。レイは頷いた。
「信じがたいことだと思うけど……俺が倒した」
「そんなバカな! ベヒーモスだぞ!?」
「俺が妖精になって、その力で倒した」
「はぁ!?」
頭のおかしい人を見る目で見られる。
それも当然か。レイ自身でさえ、何が起こったのかよく分からないのだ。
「そっちの人……いや妖精か? ……は誰だ?」
ラリアスに問われ、シリアが答える。
「私はシリア。妖精です」
「妖精……」
村人たちは奇異の目でシリアを見る。
妖精など噂話に聞くだけで実際に見ることなどレイも村人も初めてだから当然だった。
それよりも、だ。
「俺の前世がどうとか、聞かせてもらうぞ」
「分かりました。レイ様の家で?」
「そうだな、そうしよう」
他の村人がいる前で前世がどうだか、妖精聖姫がどうとかいう話は遠慮願いたかった。
レイまで奇異の目で見られてしまう。
訝しむ村人たちの視線を振り切り、レイは自分の家にシリアを案内する。
レイには両親も兄弟もいない。
一人きりで暮らしている家にシリアを招き、一応、居間の椅子を勧め、お茶を淹れる。
「レイ様にそのようなことをしていただく訳には……」
遠慮をするシリアだが、レイは「いいから」と言い、お互いに机をはさみ対面して座った。
「それじゃあ、聞かせてもらおうか。どうして俺は妖精なんかの姿になれたんだ?」
「あれがレイ様の、妖精聖姫リリィ様の本来のお姿だからです」
「その妖精聖姫ってのがよく分からないんだが……」
困惑するレイ。
俺の本来の姿ね、と思う。あんなロリ美少女妖精が本来の姿と言われても困るのだが。
「妖精聖姫は私たち妖精の中に生まれる強い力を持った妖精です。リリィ様はその力でこの世の悪を退治してきたのですが、魔王の一人、ドーハ・ズーラに敗れ、人間に成り果てて転生させられてしまったのです」
「それが、俺、か?」
「その通りです」
首肯される。
俺が元は妖精聖姫で魔王に敗れ、人間になった存在。
そう言われても、はい、そうですか、とは信じ難い。
しかし、妖精となり戦ったさっきの経験は嘘でもなんでもない。
「まさかこのような人間の男にまで貶められているとは予想外でしたが……会えてよかったです、レイ様」
「このような男で悪かったな……」
なんだかえらい悪口を言われているような気がして、レイは眉根を寄せる。ともあれ大体の事情は分かった。
「それで俺は前世の姿、妖精聖姫リリィの姿に戻れるってことか?」
「時間限定のようですけどね。我々、妖精の力があればそれも可能のようです」
「そうか。外見があんなんになるのはなんだけど、魔物どもと戦えるのはありがたいな」
「あんなん、だなんて……あれがレイ様の本来のお姿ですよ?」
「そう言われてもな……」
こちとら妖精聖姫リリィ時代の記憶は持っていないどころか、人間の男、レイとして過ごした16年間の記憶がある。
妖精の姿に困惑してしまうのは無理からぬことだと言えた。
「しかし、あの姿になるのも、いちいちあんたらの力を借りるのも面倒だし厄介だな」
「そうですね。それでは……」
手をかざし、シリアが力を込める。
そこに光が収束し、一つの腕輪が出現していた。
「これは?」
「妖精の力を込めた腕輪です。これを付けておいて、必要とあらば念じていただければレイ様はリリィ様のお姿に戻れます」
「それはありがたいな」
これならシリアや他の妖精がそばにいなくても妖精の姿になれる。
魔物と戦える。
腕輪を早速身に付けるレイであった。
「それよりもレイ様、リリィ様がいらっしゃるのなら、この地区の魔将を倒すことも容易いでしょう。早速、魔将退治に行きまそう」
「ま、魔将退治か……」
魔将とはその名の通り魔物たちを統括する魔族の将のことだ。
こいつらを倒せばその地区の魔物たちの行動はある程度抑えが効く。
確かに倒せるのなら倒しておきたい所だった。
「そうだな。魔将退治に行こう。でも、今日の所はとりあえず一休みしよう。俺も疲れた」
「そうですね、レイ様のご自宅で厄介になっていいですか?」
「ああ、部屋は空いてるから好きな部屋を使ってくれ」
そうして、一日休み、翌日、魔将退治にレイとシリアは出発することにした。
「レイ。魔将を退治するって、本気か?」
村人を代表して友人のラリアスが問いかけてくる。
他の村人も信じられない、という目でレイとシリアを見る。
「ああ。この地区の魔将を退治して魔物どもを抑える」
「いくら妖精の人の力添えがあるって言っても、レイじゃあ……」
「大丈夫さ」
レイは笑みを浮かべる。
妖精聖姫リリィ。
あの力があれば魔将を退治するのも容易い。
旅支度を整え、村から出る。
そうしてしばらく歩くと声がかけられた。
「あら? シリアじゃない、どうしたの?」
見ればシリア同様、露出度の高い格好をし、羽根を持つ赤髪の少女。
この少女も妖精か。レイはそう思った。
「フレミアですか」
「そんな冴えない人間の男と一緒にいるなんて……どうかした」
冴えない男で悪かったな。フレミアとやらをレイは睨んだ。
「フレミア、失礼ですよ。この御方は我らが妖精聖姫リリィ様です」
「妖精聖姫? そんな男が?」
「この御方はリリィ様の転生体です。それは確かです」
フレミアとやらが近寄ってきて、レイを見る。驚いたように目を見開く。
「ホントにそうみたいね……ああ、リリィ様。こんな人間の男に貶められて……」
「そう言われるのはショックだからやめてくれっての……」
こんな人間の男で悪かったな。こんな男で。
そんなレイの心情を知ってか知らずか、フレミアという妖精はレイの前に来る。
「リリィ様、フレミアです。覚えていらっしゃいませんか?」
「いや、悪い。俺にリリィ時代の記憶はないんだ」
「そうですか……」
露骨に落胆した様子のフレミア。
悪いとは思うレイであるが、実際に覚えていないのだから仕方がない。
「ねぇ、シリア。リリィ様、ずっとこんなむさい男のままなの? 元の姿には戻れないの?」
「それは大丈夫。私たち、妖精の力があればレイ様……リリィ様は前世の妖精聖姫の姿を時間限定とはいえ取り戻すことができるわ」
「それを聞いてホッとしたわ」
むさい男で悪かったな。
そう思うレイだが、フレミアは心底、安堵した様子だった。
「それでシリアと……リリィ様はどこに向かっているの? あてもなく歩いている訳じゃないんでしょう」
「ええ」
フレミアの言葉にシリアは頷く。
「私たちはこの地区の魔将を倒しにいこうと思うの」
「魔将を?」
「ええ」
少し驚いた様子のフレミアだが、すぐに納得したように頷く。
「そっか。それならあたしも一緒に行く! リリィ様とシリアだけに任せる訳にはいかないわ!」
どうやら魔将討伐の同行者は一人、増えるようだ。
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