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第3話:妖精聖姫の力
しおりを挟むフレミアを同行者に加え、魔将のもとを目指す。
歩みを進めるかたわら、レイは少し不安になってシリアに訊ねてみた。
「なぁ、この地区の魔将って強いのか?」
「強いか弱いかで言えば強いでしょう」
「そうか……」
やっぱり、そうだよな。
魔物を束ねる魔将なんだからな。
レイが緊張した様子を見て「ですが」とシリアは続けた。
「レイ様の、リリィ様の御力があれば敵ではないでしょう」
「そりゃ、そうよね。妖精聖姫リリィ様なら、魔将の一人や二人、楽勝よ」
「そ、そうか……」
二人の妖精にそう言われ、レイは少し困惑しつつも頷く。
確かに。村でリリィの姿になった時の俺は圧倒的な力を誇っていたが、魔将をも楽勝で勝てるレベルなのか。
そう言っていると魔物の集団がこちらに向かってきていた。
ベヒーモスも二匹いる。
「っ……! 魔物たち!」
「この方向から来たということは人里を襲う目的ではなさそうですね。魔将が自分を守るために差し向けた、といった所でしょうか」
少し慌てるレイとは裏腹に冷静に分析するシリア。
フレミアはやる気満々、と言った様子で魔物たちを見据える。
「それじゃあ、リリィ様。御力、拝見させてもらいますよ?」
「あ、ああ……」
レイはシリアから貰った腕輪に力を込める。
するとレイの全身を光が包んだ。
男の肉体が可憐な少女の肉体に変わっていく。
黒髪の短髪は銀色の長髪になり、胸はこぶりな膨らみをたたえ、股間のあれは消失。腕も足も細く、短くなり、胸に胸甲が付き、股間はハイレグな着衣で太ももと股間の一部があらわになる。
背中からは羽根が生え、レイの体は妖精聖姫リリィのものへと変貌を遂げていた。
「驚いた。本当にリリィ様だったのね」
そんなレイを見ながら、フレミアはそんなことを言う。
レイ自身、二回目の変身とはいえ、未だに信じられない思いでいるのだから、無理もないが。
そうして、レイは迫りくる魔物たちを見据えた。
「よし。それじゃあ、魔物たちを倒すぞ」
その言葉にシリアとフレミアは頷く。
レイは羽根を揺らし、飛び上がると魔物の集団に向けて手をかざす。
そこから光線が放たれ、魔物たちを吹き飛ばす。妖精魔法だ。
魔物たちは結構な数がいるようだ。
この妖精となった身がいかに圧倒的な力を秘めていようとも少しは手こずることが予想された。
「フレミア、私たちも」
「ええ、あたしの力、見せてあげるわ」
そこにシリアとフレミアも羽根を羽ばたかせ、空を駆けて援軍に参ずる。フレミアが両手をかざすと、そこから火炎が放たれ、魔物たちを襲う。
シリアは光線を放ち、魔物たちを攻撃した。
妖精魔法の凄まじさであった。魔物たちは三人の妖精を前に手も足も出ず、蹴散らされていく。
だが、二匹のベヒーモスは血気盛んにこちらに突っ込んでくる。
レイは両手を合わせ、そこに力を込めた。
その開かれた手のひらから極太の光線が放たれる。
それはベヒーモスの一匹の体を貫き、その命を断った。
「さすがはリリィ様!」
歓声を上げるフレミア。
それをしつつも自身も火炎放射を続け、魔物たちを倒す手を止めはしない。
シリアも魔物たちを蹴散らしていた。
(本当に妖精の力ってのはとんでもないもんだな……)
我が力ながら信じ難い思いでいるレイであった。
本当に俺の前世は妖精聖姫だったことをうっすらと自覚する。
完全に自覚するまではまだ遠いものの、こうして妖精として力を振るっていると段々、そんな気がしてくるのだ。
もう一匹のベヒーモスに狙いを定め、レイは手から光線を放ち、ベヒーモスを攻撃した。
宙空に飛行している妖精に対して、地上を這う魔物たちができる攻撃方法は少ない。
可憐に体を動かす。
その体が幼い美少女のもの、だということは未だにレイの中で違和感のあることだった。
この華奢で可憐な体が俺の体なんだよな。
そんなことを思いつつもベヒーモスに光線を放つ。
光線を受けたベヒーモスはいきり立った咆哮を上げるも、それでどうにかなるものでもない。
レイは両手を合わせ、必殺の光線を放つとそれはベヒーモスの体を貫き、絶命に追い込んだ。
残りの魔物たちもシリアとフレミアが撃退したようだ。
三人の妖精は着地し、一息つく。
「ふぅ、なんとかなったな」
レイの安堵の声にシリアが頷く。
「リリィ様の御力を持ってすればこの程度の魔物相手、楽に勝てて当然です」
「そうよね。あたしたちでも倒せるレベルの魔物だものね。リリィ様なら楽勝でしょ」
「これでも結構、必死だったんだけどな……」
妖精聖姫リリィの力は確かに圧倒的なものだが、その力を振るうのには慣れない。
なにせレイは16年間、人間の男として過ごしてきたのだ。
今のこの美少女の体も違和感でしかなかった。
「それとやっぱりリリィって呼ぶのはやめてくれ。今の俺はレイだ」
「……そうですね、分かりました、レイ様」
「あたしたちにとってはリリィ様なんだけどね。まぁ、そうお望みならば分かったわ、レイ様」
頷く二人。
といっても、レイの体が妖精聖姫リリィになっている以上、なんともいえない違和感のつきまとうものであったが。
「あー、これ、任意で元の体に戻れないのかな?」
レイはそうシリアに訊ねる。シリアは少し困った顔をした。
「多分、レイ様のご意思で戻れるとは思いますが……」
「別にいいじゃない。戻らなくて。このお姿の方が素敵よ、レイ様」
「そういう訳にもいかなくてな……」
意識を込める。元の体に戻るように。
するとレイの体を光が包み、可憐な美少女妖精の体が元の男のものに戻っていく。
光が晴れた先にはレイ本来の(と、少なくともレイは認識している)体に戻っていた。
「あーあ、戻っちゃったんだ。さっきまでのお体の方が素敵なのに」
そんなことをフレミアは言うが、さっきまでの姿の方がレイにとっては違和感でしかない。
二回目だが、元に戻れてレイはホッとする。
「とにかく、このまま先を歩いて魔将を倒そう。確かに、俺の力なら魔将ぐらい倒せる気がしてきた」
「その意気です、レイ様」
妖精聖姫の力は確かにとんでもないものだ。
あれならば魔将をも倒せるだろう。
そう思いレイは歩き出す。
魔将を倒し、とりあえず、この地区に平和を取り戻す。
その思いを胸に秘めて。
それにしても。
(二人の妖精と一緒ってのは少し気まずいな)
それを思う。
シリアもフレミアも露出度の高い格好をしているとびっきりの美少女だ。
こんな二人と一緒というのはこれまでの人生で経験がなかった。
そのことを少し苦手に思いつつも、さすがに口に出して言えることでもなく、悶々とするレイであった。
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