6 / 6
第6話:妖精の聖剣
しおりを挟む現れた華美な細剣は美少女妖精となったレイが振るうのに適してるかのような美しさを秘めた剣だった。
その柄を握ってみて、まるで十年二十年と慣れ親しんだ剣のような感覚を抱いたレイは少し困惑する。
その細剣を見て、フレミアが声を上げる。
「そ、それは! 妖精の聖剣!」
妖精の聖剣? これはそういう名前なのか。
なるほど。妖精のためにある剣という訳か。
レイは妖精の聖剣を振るい、ドラギースに斬り掛かる。
ドラギースは長剣でその一撃を受け止めた。
だが、そこで止まらない。
レイは連続して妖精の聖剣で斬り付け、ドラギースを攻撃する。
ドラギースは舌打ちしつつ、それらの攻撃を全て受け止める。
戦況は不利から五分に戻った感じか。レイは思う。
そうしているとドラギースは後ろに飛び退き、お互いに距離があく。
その隙にレイはフレミアに訊ねた。
「フレミア! 妖精の聖剣って?」
「レイ様が、リリィ様。妖精聖姫リリィ様が愛用していた剣です! そこいらの名剣では比べ物にならないほどの力を秘めた剣です!」
それほどの剣なのか。
レイは自分の右手に握られた華美な細剣を見つめる。
確かに、この剣からは力を感じる。
華奢な美少女妖精の体になったレイが振るってもドラギースと打ち合えているのがその証拠だ。
そう思っているとドラギースが再びレイに攻撃を仕掛けてきた。
「死にやがれ!」
その長剣の斬撃をレイは妖精の聖剣で受け止める。
これが俺が前世で使っていた剣ならば手に馴染むのも当然か。
自分が妖精の前世を持っていたことには未だ自覚が湧かない身ではあるが。
ドラギースの長剣の攻撃を弾き返し、返す刃で斬り付ける。
ドラギースもさすがに魔将だけあり、そう簡単にはやられてくれないが、妖精の聖剣で連続攻撃を叩き込む。
ドラギースは次第に足が後ろに下がっていく。
このまま一気に斬り込む。
そう思い妖精の聖剣で斬り掛かる。
「この妖精風情が!」
するとドラギースが口を開いた。そこから火炎が吹き出て思わずレイは妖精の聖剣を盾にする。
するとどういうことだろう。
妖精の聖剣からは風のようなものが吹き出て、それがレイの体に纏い、炎を寄せ付けない。
ドラギースは仰天した様子だったが、驚いたのはレイも同じだった。
さすがは妖精の聖剣。
こんな力も秘めているのか。
感心し、再び妖精の聖剣を振るいドラギースに斬り掛かる。
一合、二合と斬り合って、ドラギースが後ろに飛び退いた隙に手をかざし、光線を放つ。
それはドラギースの不意を打ち、ドラギースの体に光線が突き刺さる。
「ぐ……この小娘が!」
いきり立ったドラギースは再び接近。
長剣を振るう。と、そこに火炎弾が命中した。
「効果は薄くても、全くダメージがない訳じゃないでしょう!」
フレミアの魔法だ。
そちらにドラギースが気を取られた隙を狙い、レイは妖精の聖剣をドラギースの腹に突き立てる。
「が、ぐ、は……!」
妖精の聖剣はドラギースの腹を貫き、鮮血がしたたる。
そのままドラギースは倒れ込み、レイは後ろに飛び退く。
倒したのか……慎重に様子を伺うと、ドラギースが息も絶え絶えといった様子で喋り出した。
「妖精の聖剣……それを、使える、ということは……貴様は妖精聖姫か……?」
「そうだ」
「ば、か、な……妖精聖姫は、死んだ、はず、だ……」
「死んだみたいだな。でも、人間として生まれ変わったんだ。それが俺さ」
「そ、んな、こと、が……」
ついにドラギースは息絶えた様子だった。
フレミアがレイのもとに駆け寄って来る。
「やりましたね、レイ様!」
「ああ、魔将を倒した! けど……」
レイは倒れ込んだシリアを見る。
長剣で斬られた傷が生々しい。
そのそばに寄ってふと思い立ち、妖精の聖剣を掲げてみせる。
すると、どういうことだろう。妖精の聖剣から発した光がシリアの傷を癒やし、シリアは意識を取り戻した。
「わ、私は……?」
何が起こったのか、分からないといった様子のシリア。
レイも今ひとつ分からなかったが、この聖剣には治癒の力もあることは明白だった。
「シリア! 大丈夫なのね!?」
「え、ええ、フレミア。なんとか……レイ様が助けてくれたんですね?」
「一応は……といってもこの剣のおかげだけど……」
そう思っていると妖精の聖剣が消える。
妖精の姿をしていたレイも光に包まれ、元の人間の姿に戻る。
魔将ドラギース戦はなかなかの激戦だった。
力を使い切ったのだろう。
レイは息を吐く。
「とにかく魔将ドラギースは倒した。この地区の平和は取り戻したんだ」
魔将は倒した。
それは確固たる事実であった。
レイの中にあった前世の力、妖精聖姫リリィの力がそれを成したのだ。
「やりましたね、レイ様」
「やったわね、レイ様」
「ああ」
三人で喜びを分かち合う。
そして、思った。
これから先、どうするのか。
とりあえずこの地区の魔将を倒すのを目的としていたが、それが成された今、レイの今後はどうすればいいのか。
それを悩む。
普通に考えれば村に戻り、元の生活に戻ることだろう。
魔将が倒れた今、魔物の襲撃もないはずだ。
だが。
「これからどうしよう、二人共」
レイの中には妖精聖姫の力が宿っている。
それなのにただの村人に戻るのはよくない気がした。
「私たちが強制できることではありませんが、レイ様には今後も妖精聖姫として、魔物たちと戦ってほしいと思います」
「あたしたちも勿論、協力します」
「そうだよな。やっぱり、そうなるよな」
予感はしていたので驚きはしない。
俺には力がある。
魔将すら倒せるだけの力だ。
それを無為に腐らせてはいけない。
その思いはレイも同じだった。
「これからも魔物退治の旅を続けることに異論はないよ。でも、とりあえず村に戻らせてもらっていいかな? 旅に出ることも告げないといけないし」
「そうですね、レイ様」
「あたしはレイ様の村に行くのが初めてなんだけど、まぁ、同行します、レイ様」
そうして、三人で来た道を引き返していく。
今度は急ぐ必要もないので空は飛ばす徒歩で、だ。
そもそもレイは妖精聖姫の力を使い切ってしまって、空を飛べない。
歩きながら、本当に魔将を倒せてしまったな、と今更ながら思うレイであった。
この身には本当に妖精聖姫リリィの力が宿っている。
ならば、それを腐らせる訳にはいかない。
今後の方針らしい方針も立っていない身であるが、この妖精聖姫の力を人々のために使っていくことができればいい、と思う。
そんなことを考えながら村への帰路を歩くのであった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~
楠富 つかさ
ファンタジー
ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。
そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。
「やばい……これ、動けない……」
怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。
「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」
異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる