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第5話:魔将ドラギース
しおりを挟む翌日。
一晩休み、再びレイたちは歩みを再開していた。
レイは妖精の姿に変身し、三人で空を飛んで魔将のもとに向かう。
夜はシリアが光線で火を付けた焚き火のそばで三人で眠ったのだが、美少女二人と隣合わせで寝るというのは全くもってレイにとっては落ち着かないことであった。
とはいえ、今、妖精の姿になって空を飛んでいる自分も紛れもない美少女ではあるのだが。
空を駆けて魔将の居城を目指す。
今回は空中型魔物の妨害もなく、真っ直ぐに突き進むことができた。
「もうすぐ魔将ドラギースの居城です」
「いよいよか……」
緊迫した色を帯びたシリアの言葉に頷く。
レイは自分の体を見る。
身長140cmほどの小柄な背に細い華奢な体躯。すらりと伸びているが筋肉などついていない腕や足。微かな膨らみをたたえた胸。何もぶら下がっていない股間。銀色の長い髪。背中から生える羽根。
それらを露出度の高い衣装で纏めた美少女妖精の姿。
全くもってこれが自分の姿だとは信じ難い。
これもレイの前世、妖精聖姫リリィの姿らしいのだが。
「大丈夫かな……」
不安な言葉をレイは口にする。フレミアが笑った。
「大丈夫よ! レイ様のお力ならドラギースぐらい楽勝で倒せるわ!」
「はは。そうだといいんだけどね」
「私もフレミアに同意です。魔将ドラギースは侮れない敵。ですが、レイ様のお力を持ってすれば決して勝てない相手ではありません」
二人にこう言われて、そういうものか、と思う。
魔将ドラギース。レイが普通の人間であった頃であればとてもかなわない敵であっただろうが、今のレイは前世の力と姿、妖精聖姫リリィとなっている。
これなら確かに対抗できるかもしれない。
レイはそう思い、前方に注意を集中させる。
また迎撃の魔物が出てきては堪らない。
幸いにしてそれ以上、迎撃の魔物が出ることはなくドラギースの居城に到着することができた。
大きな洞窟だった。
地上に降りた三人は歩きで中に入る、と。
大勢の魔物がレイたちを出迎えた。
「お出迎え、か……!」
レイは迫り来る魔物たちを睨み据えるが、シリアとフレミアがレイの前に立った。
「レイ様はお力を温存しておいてください」
「これくらいの敵はあたしたちで十分よ」
そう言う二人。
確かに、妖精聖姫リリィの力は魔物相手に浪費してしまってはあっという間に変身が解けてしまうものだということをこれまでの少ない変身回数で知っていた。
ここは素直に二人に任せることにしよう。
「分かった。二人とも、任せるぞ」
「お任せください」
「あたしたちに任せて!」
力強い返事を寄越した二人はそのまま魔物たちと戦う。
小型・中型の魔物は蹴散らし、ベヒーモスが一匹、やって来た。
「こいつはちょっと厄介ね……!」
舌打ちしてフレミアはそう言う、レイは自分が戦おうとしたが、それこそが二人の行為を無碍にする行為だと気付き、やめておく。
シリアとフレミアはベヒーモスに魔法を放ち、攻撃する。
なかなか致命打を与えられないようだったが、徐々にベヒーモスの力を削っていっているようであった。
そうして、二人はベヒーモスの打倒に成功する。
「やったわ!」
「なんとかなりましたね……」
歓声をフレミアが上げ、安堵の声をシリアが発する。
こうなれば後は魔将ドラギースのもとまで一直線だ。
ドラギースの居城を歩き、先に進むと玉座に腰掛けた竜人がいた。
こいつが、魔将ドラギースで間違いはないだろう。
「妖精どもが。このオレに何のようだ?」
鋭い視線をこちらに投げかけてくるドラギース。
レイは三人を代表して答えた。
「お前を倒す。お前を倒して、この地区の魔物たちの活動を停止させる」
「はっ! 言ったものだな! 妖精! 貴様らごときにやられるこのドラギース様ではないぞ!?」
怒りの感情をあらわにドラギースは立ち上がり、そばにあった長剣を取る。シリアモフレミアも臨戦態勢に入り、レイも戦いの準備に入る。
ドラギースは長剣を手に突っ込んで来る。
レイは手をかざし光線を連射した。
それらがドラギースに当たる前にドラギースは長剣を一閃。光線を薙ぎ払った。
「なっ!?」
驚くレイだが、それに構わずドラギースはこちらに向かってくる。
シリアとフレミアも魔法で攻撃するがドラギースはそれらをも打ち払い、レイに向けて長剣で斬り掛かって来る。
「く!」
レイは羽根を羽ばたかせ、後ろに退避する。
空を斬った長剣だが、ドラギースはそのままレイを追撃してくる。
レイは手のひらをドラギースに向けて、暴風を放ったが、あまり効いている様子ではない。
さすがは魔将、と言った所か。
などと分析している暇もない。
ドラギースの長剣は今にもレイの体を捉えんとしている。
「レイ様!」
シリアが叫びと共にレイとドラギースの間に割って入る。
「シリア!」と思わずレイは叫ぶが、振り下ろされたドラギースの長剣がシリアの体を斬り裂いた。
シリアはそのまま倒れる。
「まずは一人だ! 覚悟しろ、妖精ども!」
血気盛んにドラギースはそう言い、レイとフレミアを見る。
シリアがやられた! レイは怒りの感情で頭が真っ白になるのを感じた。
両手をかざし、必殺の極太光線を放つ。
「ちぃっ!」
これにはさすがにドラギースも厄介そうな声を上げるが、長剣を一振りして光線を薙ぎ払ってしまった。
レイの妖精聖姫リリィとしての最大の必殺技も通用しない。
レイは怒りに混じり、焦りの感情も覚える。
この魔将は強い。そこにフレミアが炎の妖精魔法を放ち、ドラギースに攻撃するが。
「炎が竜人のオレ様に効くと思ってるのか!」
吼えるドラギース。
その言葉通り、フレミアの炎の魔法はドラギースにあまり効果を発揮したとは言い難かった。
こちらに向かって、長剣を振るう。
レイは敏捷さに優れた妖精の体を後ろに跳ねさせそれを回避するが、こんなことをしていてもジリ貧だ。
いつかはドラギースに追い詰められてやられる。
敗北のイメージが脳裏をよぎり、レイはどうしたらいいか分からなくなっていた。
そう思っている間にもドラギースに距離を詰められ長剣が振るわれる。
(く……ここまでか……!?)
それを覚悟するレイだが、その瞬間、自身の手元が光った。
一刻後、レイの手には一本の華美な細剣が出現していた。
咄嗟の判断でそれでドラギースの長剣を受け止める。この剣は……?
「ち、妖精め。剣を具現化したか。だが、その剣は……まさか……」
困惑の声を漏らすドラギース。
レイ自身も困惑しつつ、現れた細剣を構える。
勝負はまだ分からない。その予感を感じるのであった。
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