桜の勇者~異世界召喚されたら聖剣に選ばれ、可憐な少女が自分を頼ってくるので守ることにした~

和美 一

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第5章:新たな旅立ち

第63話:新たな旅立ち

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 アインクラフトの王都、クラフトシティからリアライド王国の王都までドラセナを送り届ける。その出発の日がついにやって来た。ナハトたち一行は謁見の間でアインクラフト王に挨拶に来ていた。



「それでは皆の者、気を付けてな」



 王が激励の言葉を発する。ドラセナを保護の名目で軟禁し、その力を研究しようとしているリアライド王国に身柄を引き渡そうとしている。

 この王に対して今ひとつ好印象を抱けないでいるナハトだったが、それは表に出さず、「はい」と頷いた。



「騎士グレース、ドラセナ嬢の護衛は任せたぞ」

「はっ! お任せ下さい。このグレース・アルミナ、命に変えてもドラセナ様をお守りいたします」



 王からの直々の言葉にグレースが膝を折り、頭を下げて答える。王は満足そうに頷くと、ナハトの方を向いた。



「桜の勇者殿もよろしく頼むぞ」

「……はい。お任せ下さい」



 ドラセナを守る。そんなことは王に言われるまでもないことだった。王への悪印象もあり、ぶっきらぼうな言い様になってしまったが、王は気にした様子もなく続ける。



「リアライドの研究でドラセナ嬢の力が自由自在に扱えるようになれば、ドラセナ嬢も誘拐などに怯えずに済む。これは重大な任務だ。皆、よろしく頼むぞ」



 そして、その自由自在に使えるようになったドラセナの力をこの国のために利用するつもりだろうが。

 ナハトはそう心の中で思ったが、表には出さなかった。

 それから謁見の間を出て、王城からも出る。再度、旅に出るにあたって荷物はもうまとめ終わっていた。

 クラフトシティを歩いていると「それにしてもリアライドか~」とイーニッドが気楽な声を上げる。



「わたしは行ったことがない場所だな~。どんな場所なんだ?」

「私も行ったことはありませんが……想力機やゴーレムなどの研究に長けた技術力に優れた国だと聞いたことがあります」



 イーニッドに対してイヴがそう答える。「ほう」とイーニッドは興味深そうに呟く。想力機……たしかラプラニウム鉱石の想力を使って動かす機械のようはもの、だったか。ゴーレムは、ナハトの元いた世界でのファンタジー作品などに出ていたあのゴーレムということでいのだろう。この世界に存在していても違和感はない。

 そんなことをナハトが思っているとアイネが口を開く。



「想力の研究に関してはこの大陸の国の中で随一の国ね。アインクラフトもヴァルチザンもその分野に関しては及ばないわ」

「それでドラセナの力に関する研究も進んでいるって訳か」



 ナハトが先回りして答える。その通り、とばかりにアイネが頷く。



「ま、ドラセナの力は未知数だけど、ひょっとしたらリアライドにもいるんじゃないの? ドラセナみたいに想力を身に秘めた人間が」

「わたしと……同じ……?」



 ドラセナは目をパチクリさせる。自分のような特別な力を持った人間が他にもいるとは考えたこともなかったのだろう。



「そんな人がいるのなら……わたしと友達になれるかな?」



 ドラセナはそんなことを口にする。「なれるんじゃないか」とナハトは答えた。



「同じ力を持った者同士、きっと友達になれるさ」

「そっか……そうだよね……」



 ナハトの言葉にドラセナは笑みを浮かべてみせる。まぁ、ドラセナと同じような力を持った人間がリアライドにもいるかもしれないといのはアイネの完全な推測なのだが。



「さて、それじゃあ一旦、ペルトーセまで戻って、そっからリアライド王国を目指すってことでいいんだな?」



 一同を見渡しナハトが言うと皆は揃って頷く。

 ペルトーセ、実家にまた戻るということでアイネは複雑そうな顔をしていたが、こればかりは我慢してもらうしかない。

 ここからリアライド王国を目指すのならペルトーセを経由するのが一番なのだ。

 ナハトたちはクラフトシティを出て、ペルトーセを目指した。道中は想獣に襲われることもなく、ヴァルチザンからの刺客に襲われることもなく平和なものだった。

 そして、ペルトーセに辿り着く。ここから先は、再びアイネの実家、ペルトーセ領主ベネディクトゥス家の屋敷に厄介になることになる。それから、ついにペルトーセからリアライド王国への道を歩みだすのだ。



「ここから一番近いリアライドの都市はマインダースね。ペルトーセと直接、交易しているそれなりに大きい都市よ」



 流石にペルトーセの領主の娘だけあって、このあたりの事情にアイネは明るい。

 マインダース、か。自分たちが目指すのはリアライドでも首都だが、まずはそこから訪れることになるだろう。「険しい道なのか?」とナハトが訊ねるとアイネは呆れたような視線を返してきた。



「あのねぇ……ペルトーセとの間に険しい道なんかがあったら交易で発展する訳ないでしょ? ちゃんと整備された道で繋がっているわ」

「ああ、そうか……たしかに……」



 自分が愚かな質問をしてしまったことをナハトは悟る。

 アイネの言うことはもっともだ。ペルトーセと交易で栄えているのなら、ペルトーセとの間に楽に行き来できるだけの道が出来ていて当然だろう。

 そんなことを思いながら、ナハトたちは再びベネディクトゥス家の屋敷を訪れるのだった。









「ベネディクトゥス家にひそませていた間者からの情報です。ドラセナ・エリアスと桜の勇者たちはベネディクトゥス家の屋敷で過ごした後、マインダースに向けて出発したみたいですね」



 リリアーヌがそう言うとルゼはフン、とつまらなさそうに鼻を鳴らした。ヴァルチザン四獅が二人、リリアーヌとルゼ、そして、その配下となっているゴルドニアース傭兵団の面子は既にペルトーセの近くにいた。

 アインクラフトからリアライドを目指すのならこの経路しかない。だが、道中を襲うというのは難しい。ペルトーセからマインダースへの道は見通しが良すぎていて奇襲をかけるのには到底、向かないのだ。



「ならばマインダースだな。オレたちもそこを目指そう」

「マインダースで襲撃をかけるのですか?」

「無論だ」



 リリアーヌの言葉に頷く。マインダースで襲撃をかける。それは当然のことだ。道中を襲うことはできないが、ドラセナ・エリアスたちがマインダースに入った隙に包囲し、襲撃をかける。その計画が既にルゼの頭の中では構築されていた。



「こそこそとせこい真似はオレの性に合わんが……皇帝陛下の命令となれば仕方があるまい。マインダースでドラセナ・エリアスを奪う」



 ルゼの言葉にリリアーヌも頷いた。そうだ。自分たちの第一目標はあくまでドラセナ・エリアスの拉致。そのためならなんでもする覚悟で望まなければならない。



「リリアーヌ、もう一度、竜を召喚することはできないのか?」



 ルゼが問うてくる。リリアーヌは首を横に振った。



「残念ながら竜程の強大な想獣を召喚するだけの想力は今の私の鞭には残っていませんね。下級の竜、ドラゴンバードたちならなんとか、と言ったところでしょうが」

「それで十分だ。陽動にはなる」



 ルゼは腰にかけた太刀に視線を移した。

 ルゼの持つ幻想具、紅蓮刀フィアンマ。桜の勇者が持つ四大至宝・聖桜剣キルシェに匹敵するだけの力を秘めた名刀だ。

 ルゼの巧みな剣術とこの幻想具の力が合わさった際の戦闘力は並の人間など、否、並の幻想具使いをも遥かに凌駕する。

 リリアーヌが呼んだ想獣やゴルドニアース傭兵団の傭兵たちを囮につかい本命はルゼ自身が直接斬り込んで、ドラセナ・エリアスの拉致をする。そういう作戦になるだろう、ということはリリアーヌにも分かっていた。ククク……とルゼは楽しげに笑う。



「桜の勇者、せいぜいオレを楽しませてくれよ……」



 ルゼの笑みを前にリリアーヌは無表情を貫く。この男が秘めた狂気はどれほどのものなのだ、と思いながら。同じ四獅の一人とはいえ、この男ほど危険な男はいないだろう、とリリアーヌは判断していた。

 ドラセナ・エリアスが五体満足で確保できれば良いのだが、と一抹の不安を抱きつつも「それでは、我々もマインダースへ向かいましょう」と声を発した。



「メリクリウス殿に傭兵たちを動かしてもらうよう指示を出します」

「メリクリウス……あの小娘か。あいつもなかなかに強いが、今は手負いだろう?」

「ええ。ペルトーセの桜の勇者との戦いで負った傷をまだ回復し切れていませんね」



 本音を言えばマインダースの襲撃にはメリクリウスの力も借りたかった。だが、彼女は相当な深手を負っている。治療の幻想具で一応は傷を塞いだものの、まだまだ全快には程遠い。今回の襲撃には参加できないだろう。



「行きましょう、マインダースへ。そこで桜の勇者たちを倒し、ドラセナ・エリアスを確保します」



 自分に言い聞かせるように、リリアーヌは毅然と言い放つのだった。



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