皇女の私が下級貴族の娘と精神入れ替わり!? 美貌も立場も婚約者も奪われたけど下級貴族の娘として強く生きます! 今更、元に戻ってとか言われても

和美 一

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第15話:勝負の始まり

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 ついにルグベドとランスロットの勝負の日が訪れた。この勝負に勝った方がフォーン家令嬢エリカとの婚約者としての立場を手にする。王城の中庭を使って行われるその催しに見物客は多かった。多くは皇女エルミリアと婚約を破棄し、下級貴族のフォーン家の娘などに婚約を申し込もうとしているランスロットを揶揄する者たちであったが、私も見物客に混ざり、二人の戦いを見届けようとしていた。
 剣術ではルグベドに分があり、馬術ではランスロットに分がある。この二人の馬上試合。果たしてどうなるかは私にも分からない。分かるのはこの勝負を制した方が私の夫となるという事だけだ。私はどちらの応援もする事は出来ず、勝負の行方を見守る事にした。ルグベドにも、ランスロットにも、私は惹かれている。どちらか一人を選ぶ事など出来ない。その思いの果てがこの馬上試合なのだ。ルグベドとランスロットは馬を駆って現れた。互いに刃を潰した剣を持ち、お互いに向き合う。どうなるのか。私は心中穏やかではない心持ちで対決を見守った。
 まずはランスロットが攻めた。馬術では自分が上回っているのだから、それを活かして先手を取るという目論見だろう。しかし、その剣はルグベドの剣に防がれる。やはり剣術では傭兵として死線を掻い潜って来たルグベドに圧倒的な分がある。ルグベドに剣を弾かれ、ランスロットは一旦、馬を下げる。その隙を逃さぬとルグベドは斬り込むが馬の扱いではランスロットに分があり、攻撃を回避され、ランスロットは後ろに下がる。

「やりますな、ランスロット殿」
「ルグベド殿、貴殿もお見事」

 二人の男はお互いを称え合う。やはり共に器量の大きい男たちだ。どちらも私の心を射抜いている存在である。どちらかを選ぶなど出来はしない。
 そんな事を私が思っているとお互いに馬を走らせ、攻勢を仕掛ける。剣術のルグベド、馬術のランスロット。お互いの勝負は互角であり、一進一退の攻防が繰り広げられる。そのどちらも応援する事は出来ず、しいて言うなら二人共を応援し、私は勝負の行方を見守る。
 ランスロットが馬術を活かし、馬を使った攻撃を仕掛けるも、ルグベドはそれを己の剣術で防ぎ切る。馬の扱いはやはりルグベドの方が不得手としているようであったが、それを補う程にルグベドの剣術は見事であった。

「うーむ。あのルグベドという傭兵、なかなか見事……」
「平民の割にはやりますわね」

 観客たちもルグベドを評価する声を漏らす。それは不快な事ではなかったが、ルグベドとランスロットの双方を応援している私にとっては何とも言えない。ルグベドも、ランスロットも己の全てを込めて馬を駆り、剣を振るっている。私と、婚約するために。私はそんなに立派なものでもないのに、と思う。こんなに全てを懸けて争われる程、立派な女性であったつもりはない。

「はあっ!」
「せいっ!」

 ルグベドとランスロットの剣がぶつかり合う。お互いに一歩も退かない。勝利して私を手に入れるために、そのために全てを尽くしている。それだけに互いに退く所はない。この勝負で私の運命が決まる。それを思うと観戦していても心中穏やかではいられない自分がいた。

「しっ!」

 ランスロットの一撃。それを受けてルグベドが体勢を崩した。その隙を見逃さずランスロットは追撃を仕掛ける。ルグベドは馬の扱いに不慣れな事もあり、なかなか体勢を立て直せない。これで勝負は決まりか。そう思われたが、ルグベドは剣を振るい、ランスロットの剣を跳ね除け、体勢を立て直す。そして、逆襲とばかりにランスロットに斬りかかる。今度はランスロットが守る番だった。ルグベドの剣を自身の剣で受け止め、なんとか攻勢を凌ぐ。
 私を懸けて、二人の男性は本気で激突している。その様子を私は見守るしかないのであった。
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