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第26話:鎧のコスプレ
しおりを挟むりむじんに揺られ、道路をゆく。
ジドウシャに乗ることが初めてのりリアは呆然として流れ行く景色を見つめている。
無理もない。最初は俺もそうだった。このジドウシャというものが馬車に取って代わり、この国、いや、この世界の主流な移動手段になっている、とリリアに言うとリリアは驚きつつも納得した顔だった。
これだけの速度を誇る乗り物だ。そりゃあ重宝されることだろう。
りむじんはしばらく道をゆき、大きな高い建物の前に止まる。
まんしょん、という名前らしかった。その中でもこのまんしょんはかなり高級なものだとか。
りむじんを降り、先を行くナギサに続き俺たちは歩く。玄関のような広い空間に鍵を挿し、扉を開く。ふむ。住居に繋がる所にも鍵をかけておくのか。それは防犯上効果的だな、と感心してしまう俺だったが、この後が驚いた。
えれべーたーとか言う箱の中に入ると、その箱は上に向かって浮かび上がった。
これに仰天する俺とリリア。他の面々は驚いていない所を見るとこれはこの世界の常識なのだろう。
また一つ、カルチャーショックを受けてしまった。
あまり驚いてばかりいるのも田舎者根性丸出しでよろしくないのだが、この世界にあるものはどれも俺の世界のものとは比べ物にならない程の利便性を兼ねているのが多く驚いてしまう。
この世界の技術力は驚異的と言うしかない。この世界と俺の世界が仮に戦うとしたら俺の世界は何もできずに負けることだろう。
「ここが私の家よ。光は既に着ているわ」
えれべーたーという箱から降りて、まんしょんとやらの上層部の一角。そこに扉があった。
「ここ億ションでしょ?」
「き、緊張しちゃいます……」
するとサナとルリがそんなことを言う。オクション? 何だろう、それは。
この世界の人間であるルリを緊張させるレベルに凄いものなのか、この世界の中でも。
「オクションってなんだ?」
「簡単に言えばすっごく高いマンションのことよ」
「高いのか」
「一般人にはまず買えないし、住めないわね」
そう言われて得心する。なるほど。それならルリの緊張も納得だ。
ここはこの世界の中でも特別な場所ということか。俺の世界で王城や、聖女の聖教会などがそうであったように。
ナギサが扉を開き、俺たちを招き入れる。
「広いな……」
率直な感想をリリアが言う。確かに。リリアの言う通り、中は開放的で広々とした空間が広がっている。これがオクションというものか。
「皆さん、待っていました」
そうしているとヒカルが出迎えに来た。彼女……いや彼もここに住んでいるのかと思ったが違うようだ。今回はナギサの友人の一人として先にここに着ていたらしい。
「この億ション、あんた一人で所有してるの? スケールがデカイわねー、金持ちは」
「それほどでも」
「褒めてないっての」
サナが嘆き、ナギサは優雅な笑みを浮かべる。ともあれ、ここに全員分の鎧のこすぷれ衣装があるのか。
ヒカルに先導されて先に進むとサンプルを除き五人分の鎧のこすぷれが置かれていた。
どれもよく出来ててパッと見では俺やリリアが今、着ている鎧との違いが分からない。
「へぇ、なかなかいい出来じゃないの」
「凄いです!」
「これなら文句ないわね」
サナ、ルリ、フェイフーが揃ってこすぷれの出来を褒め称える。その気持ちは俺にも分かった。
「しかし、触ってみると流石に違いは明白だな」
俺はこすぷれ鎧の一つに手を当ててみて、自分の鎧の感触と比べる。
ケイリョウプラスチックとかで作られたらしい鎧は俺が着ている鋼の鎧ほどの重量感もなければ、頑丈さもない。
「でも遠目には違いが分かりません」
「余程、目が良くて鎧に精通した人じゃないと遠目に見破るのは無理ね」
ルリとフェイフーがそう言って俺の意見に抗議……したのだろうか? とはいえ、その意見には同感だった。
これなら遠目には本物の鎧に見えることだろう。
「はいはい、それじゃあみんな着替えるわよ! 男はあっちいった! 光もね!」
俺とヒカルは追い出されてしまい、ヒカルは一人でこすぷれ鎧に着替える。
「アドニスさんは筋肉があって羨ましいですね」
「そうか? そう大したものでもあるまい」
「いえ、ボクも少しでも頼れる男になりたいと思っているんですけどなかなか上手くいかなくて……」
「急に自分を変えるのは難しいからな。ちょっとずつでもやっていけばいいさ」
「そうですね……」
そんな会話をヒカルとしている内に女性陣は皆、着替え終わったようだ。部屋に入っていいと言われ、中に入る。
「これは……なかなか壮健だな……」
中にはサナ、ルリ、フェイフー、ナギサ、そしてリリアの姿。鎧姿の女性が五人並んでいては華麗に過ぎる。
女騎士団。そんな単語が脳裏をよぎる。
「さて、アドニス。出番よ」
「出番? なにがだ?」
俺が問い掛けると企むようにサナはニヤリと笑い、
「この中で誰が一番綺麗かを選んで頂戴」
とんでもないことを口にするのだった。
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