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第29話:ぷろでゅーさーとの出会い
しおりを挟むナツヤスミとやらが終わり、サナは朝から学問所に通うようになった。エキに行き、デンシャに乗って通うらしい。
俺とリリアは、というとナツヤスミとやらが始まろうが、終わろうが、仕事には関係ない。
今日もこすぷれしょっぷイスルギの店頭に立ち客引きを行う。
相変わらず俺たちの鎧の評判は上々で、ねっととやらの記事で俺たちを見たから実物を見に来たという人も少なくない。
それだけ宣伝できているのなら、文句はないのだが。誇り高き騎士の鎧を見世物にしているという点は少し気になる所である。
「我々は何をやっているんだろうなぁ……こんな模造刀を構えて」
リリアが模造刀をブンブン、振り回して言う。それも騎士の鎧姿が合わさればサマになって見える。
「仕方がないだろ。ヨーイチ殿に寝床と飯を提供してもらっているんだから。その分、働かないと」
「それは分かるのだが……」
働く内容に納得がいかない、と。俺だって完全に納得している訳ではないので無理はない話なのだが。
「悪党の一人や二人を捕まえてはどうだ? それでも仕事にはなるだろう」
「サナの話じゃそういうのはこの世界じゃケイサツって治安維持機関の仕事でケイサツじゃない俺たちはゲンコーハンじゃないと悪党を捕まえられないらしいぞ」
「ゲンコーハンとは何だ?」
「今、正に犯罪を行っている人のことらしい」
「なるほどな。窮屈な世の中だな」
リリアは嘆息する。確かに俺たちの世界に比べると少し窮屈だ。
だが、その分、治安の面は比べ物にならない程、良い。窮屈であってもそれに見合った対価はあるということだ。
「……と無駄話はこれくらいにして仕事に戻るぞ。客引きだ、客引き」
「……やれやれ我らの鎧は見世物ではないのだがな」
そう言いつつも仕事に戻るリリア。俺も立て看板を持ち、「いらっしゃい、いらっしゃい」と声を発する。
相変わらず、俺たちをすまほで撮影する者も多い。が、その大半が無断でだ。許可を取ってから撮れというものだったが、客にそんなことを言う訳にもいかず俺たちは客寄せ要員としてその責務を全うする。
実際、俺たちが店頭に立っていることでこの店に来る客は増えている、と思う。
数えた訳でもなく、俺がこの店に来る前のことは知らないので正確かどうかは分からないのだが。
「いやぁ、いいねぇ、君たち」
そんな時、俺とリリアに声がかけられる。声の主は胡散臭そうなおっさんであった。
「何か御用ですか?」
「君たち二人に用があるね」
「俺たちに?」
俺とリリアは怪訝そうな顔でおっさんを見る。おっさんは「ああ、いや、違うんだ」と声を発した。
「私の名は我妻清治(わがつませいじ)。テレビ局のプロデューサーをやっている」
「てれびの……?」
そう言って、名刺を差し出すワガツマ。
俺はそれを受け取りつつ、ぷろでゅーさー、とやらはなんだ、と思ったが、文脈からなんとなく意味を察する。
てれびのバングミを作る上でそれなりに上の立場の人間なのだろう。
「そのぷろでゅーさーが何の用だ?」
言葉に露骨に棘を尖らせ、リリアが問いただす。俺としても気になる所だ。
「今度、コスプレ特集の番組をやるんだけどさ。二人にも出て貰えないかな? その鎧姿なら文句なしだ」
「こすぷれ特集の……」
「……バングミ」
こすぷれ展とかのてれび版、か? 完全に理解した訳ではないが、そう意味を推察する。
「我らの鎧は見世物では……!」
リリアが怒りの視線を向け、ワガツマは一瞬、動揺するもすぐに笑みを取り戻す。
「笑いものにしようって訳じゃないよ。真剣に鎧の良さをアピールするつもりだ。そこは心配しなくていい」
「そうなのか、いや、そうなんですか」
嘘を言っているようには見えない。俺たちをてれびに映して、鎧の出来の良さを喧伝する、か。悪くはないかもしれないが……。
「ちょっと考える時間をくれ。俺たちはこの店に居候している身でもある。家主の許可も必要だ」
「分かった。気持ちが決まったらその名刺に書いてある電話番号までいつでも連絡をくれ」
「承知した」
リリアはいまだ憤っているようであったが、俺がそう言うとワガツマは帰って行った。
「出るのか、アドニス殿? てれびのバングミとやらに?」
「うーん、そこまで悪い話じゃないと思っている。この店の宣伝にもなるしな」
「それは、確かにそうかもしれないが……」
鎧姿の俺たち二人が映れば、どこにいるのかも取り上げざるを得ないだろう。
それはこのこすぷれしょっぷイスルギの宣伝に繋がる。
「だが、我らの鎧姿を見世物にされるのは我慢ならんぞ」
「それこそ今更な気がするけど……まぁ、笑いものにするつもりはないって言うあのぷろでゅーさーの言葉を信じよう」
とりあえず学問所が終わり、サナが帰って来るまでこの話は保留だな。
そう言うことで俺もリリアも一応の納得をして、仕事に戻る。
相変わらず俺たちの鎧姿は人目を引きつけるようであった。
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