『こすぷれ』とは一体、何なのだ? 異世界から現代日本に転移した騎士、鎧姿のためコスプレ屋の看板男になる

和美 一

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第30話:てれびのシュウロク

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「ふうん、アドニスとリリアさんがテレビにねぇ、いいじゃない」

 学問所から帰ってきたサナの第一声がそれだった。
 休憩時間に入り、サナの家に中の居間で鎧姿のまま俺とリリアはサナに相談をもちかけた。
 俺とリリアがてれびとやらへの出演依頼を受けたことでサナは乗り気のようであった。
 しかし、こちらとしてはそう乗り気ではない。それを証明するようにリリアが眉根を寄せた。

「しかし、我らの鎧は見世物ではない」

 それは全くもってその通りであった。
 鎧は剣と並ぶ騎士の誇りだ。それを見世物にするような真似は抵抗がある。
 そう思ったのだが、なんてことはないようにサナは続ける。

「大丈夫でしょ。アドニスもリリアさんも鎧を完璧に着こなしているんだから、笑いものにはされないわよ」
「それはそうかもしれないが」

 確かにあのワガツマというぷろでゅーさーはそう言っていた。
 俺たちが鎧姿だからといってそれを笑いものにする気はない、と。
 だが、てれびとやらに出演すればどうしてもその存在をアピールしてしまうであろう。それが気がかりだった。

「俺もリリアもこの世界の人間ではない。あまり派手に目立つのはどうかと思う」
「ふぅん、でも帰れるアテはあるの?」
「それは……」

 ない。俺とリリアが元の世界にもどれるアテもメドも全く立っていないのが現実だ。
 ならばこの世界で生きていくしかないのではないか。
 この世界は金が全てで回っていることくらいは俺にも分かる。
 ならばてれび出演して小金を稼ぐのも悪くはない のではないか。いや、小金どころがそれなりに大金を貰えそうな口ぶりであった。悪くはない、か?

「そうだな、出てみるのもいいかもしれない」
「アドニス殿!」

 俺の言葉にリリアが異議申し立てをする。眉根を寄せて、自分たちが公衆の面前にでるなど論外だ、と言いたげな様子だ。

「大丈夫だろう。あのワガツマって人のことを信じよう。俺たちは見世物にはされないさ」
「そうかもしれないが……」

 リリアは黙り込む。てれびに出ることのメリットは把握しつつも、納得はできない。そんな顔だ。

 俺もそうだ。納得なんてしていない。
 この世界で鎧姿をあまりおおっぴらに晒すにはどうかと思う。
 いや、まぁ、みんなで鎧姿で町中を行軍した時点であれなんだが。それとてれびに出るということはまた別問題でもあった。

「わかった。てれびとやらに出よう」

 そう言ってリリアも了承の意図を示す。
 問題はあるかもしれないが、てれびに出ることで金稼ぎができるならためらう余地はない。
 元よりヨーイチ殿に世話になっている恩義はてれびに出て金を稼ぐくらいしなければ返せない。
 それ故の俺たちの決断であった。

「それじゃあ、早く連絡した方がいいんじゃない? その我妻ってプロデューサーに。あと、よければ私たちも見学に行きたいんだけど……」
「それも訊ねてみよう」

 俺はワガツマの番号をがらけーに入れると電話する。
 俺たちが出演を快諾したことにまずワガツマは喜びを表明した。
 その後、仲間たちがロケとやらの見学に行ってもいいか? と聞くと何人来てもいい、と快く了承してくれた。
 さて、サナは当然来るとして、ルリも来るだろう。フェイフーやナギサ、ヒカルも来るかもしれない。
 やっぱりサナは面白がっているだけなのではと思ったが、もう受けてしまった話だ。

 このままてれび収録とやらに参加することを俺たちは決めるのだった。



 早速、てれび収録されることになった。
 まずは俺とリリアが剣を(といっても模造刀だが)打ち合い、剣劇のシーンを撮影したいとのことだった。

 俺もリリアも久しぶりに剣を振るう。それでも腕前は錆び付いてはいない。
 俺は剣を振りかぶり、リリアに斬りかかり、それをリリアは受け止める。
 次いで、リリアの反撃が来て、それを俺は受け止め、さらなる反撃を繰り出す。

 俺もリリアも久しぶりの剣だったが、お互いに腕前は健在だった。
 結局、見学にはサナ、ルリ、フェイフー、ナギサ、ヒカルの全員が来た。
 彼女らが見守る中、俺は剣を振るい、リリアと打ち合う。
 ちゃんと俺たちがてれびに出れるか心配して様子を見に来たと言っていたが、絶対に好奇心だけだ。

 剣劇の撮影が終わり、すたじおとやらに移ると同じく出演するらしいゲイノウジンとやらから質問を受けた。
 鋼鉄製の鎧をどこで作ったのかを訊ねられ、スナイバル王国の標準鎧なので王宮の鍛冶師が打ったものだろうというと怪訝な顔をされたが、なるほど、そういう成り切りか、と納得された。

 成り切っているつもりはないのだが。ゲイノウジンたちと話せて羨ましいとサナたちには言われたが、どこが羨ましいのかよく分からなかった。
 そもそもゲイノウジンというのは何なのだ。
 俺とリリアは時折、相手を凍り付かせるようなことを言いつつも撮影は進む。

 まずい所はヘンシュウでカットする、とワガツマは言っていたが、どの辺がまずいのか。
 基準が分からなかったし、ヘンシュウでカットという行為もよく分からなかった。

 ともあれ、なんとか撮影を終えて、俺とリリアは解放される。
 サナに爆弾発言の連発だったわね、と言われ、ナギサに成り切りコスプレイヤーにしても限度がありますわよ、と言われたが、よく分からなかった。
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