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第44話:不意打ち
しおりを挟む「で、ぶっちゃけリリアさんはアドニスのことが好きなの?」
いきなりもいきなりの言葉であった。
サナの家での夕食、サナが作ったみーとそーすぱすたとやらを食べて、そのあまりに美味さにこんなものはスナイバル王国にはなかった、と感激している最中の問い掛けだった。
リリアが顔を赤くする。俺も思わず噴き出しそうになるのを堪えた。
「な、な、な……いきなり何を言う!?」
「あら、じゃ、違うの?」
「い、いや、アドニス殿のことが嫌いなどということは断じてあり得んが……しかしだな……」
ニヤニヤ笑うサナにリリアが言葉に詰まる。
そうなってしまっては一方的に会話のアドバンテージを握られるだけだぞ、と俺は思ったが、サナはニヤニヤ笑いのまま続ける。
「やっぱり好きなんじゃないの?」
「私とアドニス殿はいとこだ。そのような感情など……」
「いとこなら結婚もできるじゃない!」
楽し気にサナは言う。リリアは助けを求めるように俺の方を見る。
ここで俺まで会話に加わればさらにややこしいことになる気がしたが、やむを得ずリリアを庇う。
「サナ、リリアは俺に恋愛感情は持ってないと思うぞ」
「ホントにそう~? そうは見えないけどなぁ」
「そういう佐奈もアドニス君のことが好きじゃないのかな?」
意外な援軍、助け舟が入る。サナの父親、ヨーイチ殿だ。
「な、何を言うのよ、お父さん!」
慌てた様子でサナが父を睨む。これを好機と見てかリリアも追撃を放つ。
「そうだな。サナ殿の態度を見ているとアドニス殿に好意を持っているとしか思えん」
「そ、そんなことはないから!」
「では、嫌いなのか?」
「嫌いって訳でもないけど……」
先ほどとは完全に攻守が逆転している。リリアは笑みを浮かべ、サナに問いただし、サナは困り切った顔で答える。
「アドニスにはそりゃあ、世話になっているし、好きか嫌いかで言えば好きだけど……」
「それは恋愛感情ではないのか?」
「そういうのじゃないから!」
力強く否定される。それはそれで傷付くものがあったが、肯定されても反応に困るのでこれはこれでいいか。
「娘に思い人ができるなんて。父親としては嬉しいやら悲しいやらだねぇ」
「お父さんまで……そんなんじゃないっての!」
ヨーイチ殿までが攻撃に参加し、サナは追い詰められる。その果てに俺を睨んだ。
「そーいうアドニスの方こそ、好きな人とかいないの? 瑠璃にフェイフー、渚に光とより取り見取りでしょう!?」
「そ、そんな人は……」
攻撃の矛先を俺に変えることで自身への追及を躱そうという魂胆のようだ。しかし、こすぷれいやーの仲間たちにそんな感情は抱いていない。というかヒカルは男だ。
「みんないい仲間たちだと思うけど恋愛感情はないよ」
そう答える。事実だからだ。気を許せる仲間であると思うし、この世界でそんな仲間と巡り会えた幸運を喜びはするが、それは恋愛感情とは違う。
「なんだ、つまらない。瑠璃が聞いたら泣いちゃうわよ」
「何故、そこでルリの話になる」
「さて、なんででしょうね?」
ニヤリとサナは笑う。本当に何故、ルリの話になるのか。まるで理解できなかった。
「まぁ、私やアドニス殿にそんな話はまだ早いということだ」
場を収めようとリリアがそう言い切る。しかし、サナはまだこの話題を終わらせたくないようだった。
「みんなの中で絶対誰かはアドニスのことを好いているわよ」
「そうか? 俺なんて平凡なただの騎士だぞ?」
「この世界じゃ異端児すぎるのよ。異世界の平凡も」
それはそうかもしれないが。だからって恋愛感情を抱くとなるとまた別の話だろう。
珍品に興味を惹かれる人はいても珍品を愛する人はいない。
「話に出たから言うが、元の世界に我々が戻る方法はないのか、サナ殿?」
そこで話題を切り替えるリリアの言葉。別に恋愛話が嫌になった訳ではなく、本当に気になったのだろう。
「そんなこと私には皆目見当もつかないわよ。この世界には魔法も何もないんだから」
「そうか……」
「とはいえ、いつまでもここでサナやヨーイチ殿の世話になっている訳にもいかない。帰る手段を見つけないとな」
言いつつ、そんな手段に全く思い当たりがないことに頭を抱える。本当。どうやって帰ればいいんだ。俺たちは。
「まぁ、それまではコスプレイヤーとしてこの世界で生きていきなさいよ。そう悪いものでもないでしょう? この世界も」
「それはそうだがな……後、何度も言うが俺たちはこすぷれいやーではない」
今は私服姿でこの世界ではあの鎧はどれだけ異端なものかは理解したが、こすぷれいやー扱いは避けて欲しい所であった。
とりあえずは仲間たちと共にこの世界で過ごしつつ、帰る手段をなんとか見つけるしかないのか。そう理解し、ミートソースパスタをフォークの先に絡ませる。
それにしても俺が仲間たちと恋愛に発展するなんて、そんなことがあり得るのか。
みんな気持ちのいい連中だとは思っているし恋愛感情ではないが好意を持って接してはいるが。
そのことでも頭を悩ませる俺だった。
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