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最終話:こすぷれと共に
しおりを挟むアキハバラの有名こすぷれいやー。
それが今の俺の称号だ。俺の鎧姿は最高のコスプレと見なされ、こすぷれしょっぷイスルギの前に同じく鎧姿のリリアと共に立つ。
リリアもまたこすぷれいやーとして有名になっていた。
俺もリリアも本物の鎧を着ているのであって、こすぷれしている気は一切ないのだが、それでも有名になってしまうもののようであった。
サナもヨーイチ殿も俺たちが有名になると店が有名になるから鼻高々だ。
寝床と食事を提供してくれる彼らに少しでも対価を払えているのならこちらとしても引け目がなくなるというものだ。
今日も大勢の客がーーその内、俺とリリアの鎧を見ようとする人も多かったがーーこすぷれしょっぷイスルギに訪れる。
こすぷれか。最初は訳の分からない文化だと思ったがこれはこれで味があるものだと思うようになっていた。
一文化を築き上げるだけのことはあるということだろう。
この世界にやって来て、驚きの連続であったが、今はこの世界も悪くはないと思える自分がいる。
そりゃあ、できれば元の世界に戻りたいが。この世界に骨を埋める覚悟であった。
「アドニス殿、シャシンサツエイの依頼だぞ」
「おう」
やって来た人にシャシンを撮っていいですか、と言われ、快諾し、俺とリリアは二人そろってポーズを取り、シャシンに撮られる。
これももう慣れたものであった。店頭で客引きをしつつ、俺たちはシャシンサツエイもされ、十二分に宣伝の役目は果たせているとみていいだろう。
そうやっていると日も暮れて、店の中に入り、鎧を脱ぎ、私服に着替える。
サナやヨーイチ殿と共に夕食を食べる。むにえる、という白身魚を使った料理のようであった。
この世界の料理レベルは本当に高い。それを実感しつつ、「いただきます」の挨拶の後にはそれをたいらげていく。今回も絶品だ。最高の美味さである。
「美味い! やっぱりサナは料理が上手だな」
「そんな大したことじゃないわよ」
サナは謙遜するが、実際、大したものだと思う。これだけのレベルの料理の様々なレパートリーを持っているのは凄いことだろう。そう言っているとヨーイチ殿も笑う。
「佐奈は料理上手だからな」
「もうお父さんまで。褒めても何も出ないわよ?」
照れ臭そう笑うサナ。ヨーイチ殿も笑みを浮かべていた。そうして、食事も終わり、俺は俺の部屋に戻る。
後はお風呂に入って、寝るだけだ。俺の世界で騎士として生活していた時とはまるで違う生活であるが、それを悪くないと感じる自分も確かにいる。
風呂の順番が回って来たので風呂に入る。しゃわー、というこの世界の文明の利器を使い体を洗う。
実に心地良い。これも俺の世界にはなかったものだ。
風呂上がり、これもこの世界で購入したぱじゃまという服に着替え、部屋に戻る。
後は寝るだけである。部屋の片隅には鋼の剣が置かれている。
この世界に来てからは全く無用の長物と化したものであるが、放っておくのもなんなので定期的に手入れはしている。
今日も手入れをするか、と思い剣を鞘から抜き放ち、その刀身を磨いていく。
この世界でこれが必要になることなど再三言っているが、まずないだろうが。
剣の手入れも終わるといい時間になっていたので、俺は電気を消し、ベッドで横になり、眠りに就く。
これがこの世界での俺の一日。日常。それを過ごしつつ、こすぷれ展やぷーる、ユウエンチなどにたまに遊びに行ったりもする。ひーろしょーのひーろー役は未だに続けているのでその仕事もある。
幸せな日々なのだろう。そんなことを思いながら、俺の意識は眠りの中に落ちていった。
翌日。今日も鎧姿でリリアと共に店頭に立ち、客引きを行う。
今日も盛況で大勢の人がこすぷれしょっぷイスルギに訪れる。
俺たち目当ての客も多いようだ。この店の宣伝ができるのならこすぷれいやー扱いも我慢できるというものだ。
やはりこれはこすぷれではなく本物の鎧だ、という思いは禁じ得ないのではあるが。
「アドニス殿」
そんな俺にリリアが話しかけてくる。
「ん、なんだ?」
「この日々、我らは幸せなのだろうか?」
いきなりの問い掛けであったが、答えは決まっていた。
「ああ、幸せなんじゃないか? 十二分に恵まれていると思うぞ」
「そうか、そうだな」
リリアも頷く。その顔は満足げで不満など微塵も感じられない。
俺とリリアは鎧姿で客引きをして、太陽の昇っている時間を過ごす。
見世物にされているようで何だが、純粋に俺たちの鎧姿をカッコいいと思ってくれている客も大勢いる訳でその分には悪くはない。
俺たちの生活はこれからも続く。この世界で俺たちはこうして日々を送っていくのだった。
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