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第46話:初めてのこすぷれ
しおりを挟む今回のこすぷれは小さなドウジンシソクバイカイで披露するらしい。
俺とリリアの分までこすぷれを作ったサナは俺たちに着てみるように言った。
俺たちがこすぷれか……。俺とリリアにはためらいがあったものの覚悟を決めて着てみる。
肌にぴったりすいつくタイツのようなスーツ。肩や胸には装甲らしきぷらすちっくで作られた板が張られており、この服はどういう服なのだろう、と疑問に思った。
「なぁ、サナ。この服はどういう時に着る服なんだ?」
「あんたたちの鎧と一緒よ。戦闘時、バンダムに乗って戦う時に着るの」
「なるほど。戦闘服か」
それならそこまで抵抗なく着れるというものだ。ばんだむとやらに乗って戦うというのはよく理解できなかったが。
とりあえずぱいろっとすーつ、とやらを着た俺とリリアを見てサナは満足げに頷く。
実のところ、これが俺のこすぷれ初体験だ。
鎧姿はこすぷれではないし、他はみんなのこすぷれを見ているだけだった。独特の服装に新鮮な気分になれる。
「うん。アドニスもリリアさんも問題ないみたいね」
「少し恥ずかしいがな」
リリアが言う。確かにこの服はぴったり肌身に吸い付き、体のラインがモロに出てしまう。
男の俺はともかく女のリリアは羞恥心を覚えても無理はないだろう。
「そういう服だから我慢してね。私たちもみんなこれで行くつもりだし」
サナやルリといった女性陣は(ヒカルは男だが)覚悟を決めているようであった。
このぱいろっとすーつとやらのコスプレを披露するのか。
俺もリリアもこすぷれ初体験として貴重な経験をさせてもらうことにしょう。
そう思い、いったん、コスプレを脱ぎ、元の鎧姿に戻る。
「ふぅ、やはり鎧は落ち着くな」
「全くだ。アドニス殿。先の服は少し恥ずかしいものだった」
「嫌なら無理して着ることはないと思うけど?」
「嫌という訳では……それに私一人拒否する訳にもいくまい」
拒む程ではないということか。体のラインがモロに現れるあのピチピチスーツを着ることに抵抗感を覚えつつも。余談だが、あのスーツ、原材料はかなりお高くついたらしい。
その辺は富豪のナギサが資金提供を受け持ってくれたようだ。
富豪が知り合いにいると便利なのは俺の世界もこの世界も変わりはないということか。
そのおかげでだいぶこだわって作れた、とサナはご満悦であった。
それだけの金をかけて作ったこすぷれ衣装だ。俺もリリアも拒むことは元から出来ないのであった。
・
そして、ドウジンシソクバイカイなるものの日がやって来る。
夏と冬に行われるというこみけとやらと比べると規模は遥かに小さいとのことだが、こういう小さなドウジンシソクバイカイもあちこちでよく開かれているようであった。
そこに俺たちはばんだむおーだぶるとやらのぱいろっとすーつを着て、乗り込む。今回は会場に更衣室がないので始めから全員着替えてナギサのりむじんに乗り、会場に行く。
そこで現れたぱいろっとすーつ軍団にドウジンシソクバイカイに訪れていた人たちは驚きの目を見せた。
「なんだか恥ずかしいな」
リリアが言う。こすぷれを披露するのは彼女も俺も初だ。気持ちは分かった。だが、いつもの自分とは様変わりした恰好でいるというのもそこまで悪い気分はしない。こすぷれはこれが醍醐味というヤツか、と分かった気になる。
そんなことを思っていると早速、シャシンいいですか? と訊ねられる。俺たちは快諾し、すまほのかめらに収まり、パシャパシャと撮られていく。
「うーん! 最高ね!」
サナはそう言い、満足げに笑う。
苦労して作ったこすぷれだ。
それを披露できて万感の思いなのだろう。その気持ちはなんとなく分かった。
こすぷれの醍醐味とやらを徐々に俺は理解し始めていた。
普段の自分とは全く違う恰好。
自分が自分でないようで、その感覚はこそばゆくも悪くはない。
他人が作った物を着ているだけでもこうなのだから自分で苦労して作ったものを着ていればこの感覚はさらに増すのであろう。こすぷれ、か。やはり奥が深い。
「俺もこすぷれの良さが分かってきたような気がするよ」
そう言ってサナに笑いかける。サナは少し意外そうな顔をした後、ニヤリと微笑む。
「アドニスがそう言ってくれるのなら作った甲斐もあったわ。リリアさんはどうかしら?」
「私か? ああ……恥ずかしいことは恥ずかしいが、悪い気分ではないな」
「そか。それなら良し!」
満足げに言い切るサナ。
リリアも悪い気分ではないのか。少し意外だったが、彼女もこすぷれの魅力に憑りつかれたということだろうか。
その日はしばらくドウジンシソクバイカイの会場をうろつき、最後にみんなで記念撮影をして、ナギサのりむじんに乗って帰る。
俺とリリアのこすぷれ初体験はこうして終わりを迎えるのであった。
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