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第38話:必中の弓 その1
しおりを挟む万能のアイテム屋がある。
その店の赤髪の店主の元には様々な客が訪れる。
今日訪れた客はその中でもとびっきりの珍しい客であった。
来客、エルミーは人間ではなかった。エルフの少女である。
エルフが人里に訪れることも珍しいのにその上、店にやって来るとは。赤髪の店主は驚きつつも来客を迎えた。
「いらっしゃい。エルフのお嬢さんがやって来るとは珍しいね」
「このお店にはあらゆる物があるって聞きました」
「あらゆる物って程ではないが、まぁ、大体の物はある」
それにしてもエルフ族の間にまで店の評判が届いているとは。店主は驚きつつ、客の注文を聞く。
「それで何が欲しいんだい?」
「弓です。人間に対する護身用、でもありますが、狩りをするために必要なんです」
「それなら狙った獲物に確実に当たる弓がいいかな?」
店主の言葉にエルミーは驚く。そんな弓がこの店には置いてあるというのか。
この店にはなんでもあると聞いていたがそれは驚きだった。
「そんな弓があるんですか?」
「まぁね。一応、用意できる」
「でしたらそれをお願いします。それと身を守る防具も欲しいのですが」
「分かった」
店主は店の奥に引っ込み、しばらくすると帰って来る。
その手には弓と露出度の高い鎧、胸と股間だけを隠したビキニアーマーがあった。エルミーは憤慨する。
「なんですか! その鎧は!」
「こう見えて防御力は抜群だ。お嬢さんの身を守るのに役立ってくれると思うよ」
「本当にそうですか……? ですが、その弓は確かに使えそうですね」
鎧の方はともかく、弓の方は魔術的な紋様が刻まれていて、何らかの魔術的作用が働くと見て良さそうだ。
それが目標に必ず当たるという力なのだろう。
「弓と鎧、セットで金貨5枚に銀貨25枚といった所だな」
やはり弓と鎧を買うとなるとそれなりに高くつく。
加えて鎧の方は露出度が高めで防御力も低そうに見えて警戒してしまうのだが、噂通りならこの店の商品に外れはない。
エルミーはこれらを購入することにした。
「分かりました。払います」
「毎度あり」
エルミーは弓と鎧を持って店を後にする。そうして、エルフの里まで戻ると鎧を身に付けてみた。
「やっぱり、露出度が高いですね……」
胸と股間だけを隠した鎧はエルフの白い肌が露わになる。しかし、防御力は高いはずなのだ。
「エルミー、どうしたの、その鎧!?」
様子を見に来た友人のエルフが驚きの表情を浮かべる。
エルミーは恥ずかしく思いつつも、「これでも防御力は高いみたい」と言った。
「ホントにそう?」
友人は訝しむ。エルミーとてこの鎧を信用できていないのだから当然だった。
それでも狩りの時間だ。エルミーは買った弓を持ち、獲物を狩りに向かう。
猪型の魔物がいるのを見て、弓を引き、矢を放つ。
放たれた矢は中空で軌跡を変え、カーブし、魔物の脳天に直撃した。
この弓が狙った獲物に当たるのは嘘ではないようだった。
となれば鎧の方も防御力は高いのか。
猪型の魔物を前にエルミーは自分の体を晒して見た。猪型の魔物が突っ込んで来る。
それをエルミーの体は受け止めた。ビキニアーマーが防護効果を発揮し、受け止めてくれたのだ。
「こんな鎧でもホントに防御力高いんだ……」
エルミーは驚きつつ弓を引く。放たれた矢は魔物の脳天を直撃する。
こちらの弓の能力も疑うまでもない。確実に狙い通りの場所に命中してくれる。
それからエルミーは猪型の魔物を狩り、次に鳥型の魔物を狩ることにした。
空を駆ける相手に普通の弓では矢を当てることは困難だが、この弓であれば放てば矢は軌跡を変えて目標に向かっていき突き刺さる。
鳥型の魔物を何匹も射落としていく。面白いようによく当たる。
防御力低そうに見えても防御力の高いこの鎧といい、あの店主の店の商品は確かだと言わざるを得なかった。
鳥をある程度狩っていると、仲間のエルフたちがやって来た。
彼らと協力して狩った獲物を運びエルフの里に持ち込む。
「エルミー、そんな姿をしてどうしたんだい?」
仲間たちはやはりエルミーのビキニアーマーに驚きの目を向け、エルミーも恥ずかしさを覚えたが、これの防御力も確かなのだ。
それを説明するも仲間たちは今ひとつ訝しんでいる様子であった。
それからも鳥型の魔物相手に弓矢を放つ。
必中の魔術効果が施された弓から放たれた矢は空を駆ける相手にも確実に命中し、それらを射落とす。
あのお店で買った商品の効果は確かなのだな、と改めて実感する。
そうして、狩りを終えてエルミーたちはエルフの里に戻る。ビキニアーマーの露出度の高さには最後まで慣れないまま。
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