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第37話:フラッシュソード その2
しおりを挟む「君、私も力になろう。こう見えて腕には覚えがある身だ。盗賊たちからそのイルって女の子を助ける力になろう」
いきなりこんなことを言い出したイザベルに対してラチェットは驚きの目を返した。
「ですが、危ないですよ?」
「そんなことは百も承知だ。そのような卑劣な盗賊を放っておくことはできん。私の剣で退治してやろう」
「……分かりました。お力を借ります」
まだ何か言おうとしたラチェットだったが、ここは素直にイザベルの力を借りることにしたようだった。
頷き、共に盗賊の指定した場所へと向かっていく。
どうやらラチェットが留守にしている時、一人で出歩いていたイルが拉致されてしまったようだ。
盗賊から返してほしければ金貨10枚を用意しろ、と場所が指定されていたらしい。
その場所に向かう。
勿論、金を払う気などない。仮に払った所で人質を返してくれるかは怪しい所であったし、それだけの大金はそもそも手元にない。
ラチェットは足早に駆けたが、イザベルもそれに負けない俊足を披露し、この人は強い人だ、との認識をラチェットに与える。
そうして、指定の場所に付いた。
「ラチェット!」
そこにはイルという少女とその回りを囲む盗賊たちの姿。
ラチェットとイザベルは立ち止まり、盗賊たちを睨み付ける。
「へっへっへっ、よく来たな」
盗賊のリーダー格の男がそんなことを言って、抜身の剣をイルの首筋に付き当てる。
何かすればイルの命はないぞ、と言わんばかりに。
チャンスを伺うラチェットとイザベルであるが、盗賊の数は五人。
人質を取られていなければイザベルなら楽に倒せる数ではあるが……。
「金は持ってきたんだろうな?」
「……金はない」
盗賊の言葉にラチェットが慎重に答える。盗賊たちの顔色が変わった。
「なんだと!? この嬢ちゃんがどうなってもいいってのか!?」
盗賊のリーダー格はこれみよがしにイルに突き付けた剣を強調して見せる。
ぎり、とラチェットが歯噛みする。ともあれイルを助け出さないことには何もできない。それをイザベルも痛感する。
イザベルは周囲を観察した。イルという少女に剣を突き付けているのは一人だけで他は距離を開けてたむろしている。
今なら行ける。イザベルはそう考え、フラッシュソードを抜き、かざした。
一瞬のことだった。フラッシュソードから光弾が放たれ、イルに剣を突き付けている盗賊に命中する。
ぐわ、と悲鳴。盗賊は後ろ向きに倒れ、イルがこちらに駆け寄って来る。
他の盗賊たちが迫るが、イザベルは地を蹴り、前に出てその盗賊たちに斬り掛かっていた。
「くっ」
「こいつ!」
ラチェットの元にイルは駆け寄り、残りの盗賊もイザベルが牽制する。
ラチェットもゴーストキラーを引き抜き、盗賊たちに備える。
「ラチェット!」
「イル! 無事で良かった!」
「うん!」
イルを後ろに下げ、盗賊たち相手にゴーストキラーで斬り掛かる。
イザベルもフラッシュソードで盗賊たちに斬り掛かった。
人質が解放されたのだ。こうなればもはや盗賊など敵ではない。
ラチェットのゴーストキラーは本来、霊を斬るためのものだが、普通の剣以上の硬度はある。
盗賊たちのなまくら刀など楽に倒せるものだった。
そうして、イザベルとラチェットは盗賊たちを斬り伏せ、盗賊たちは「覚えていやがれ!」と捨て台詞を残して逃げ去っていく。
ホッとした所にイザベルがラチェットに話しかけてくる。
「ラチェットくん。イルちゃんも無事のようだな」
「はい! ありがとうございます、イザベルさん! イザベルさんのおかげです」
「何、当然のことをしたまでだ。盗賊の狼藉は見過ごせんからな」
イザベルは笑みを浮かべてそう言う。
そんなイザベルにラチェットは「あのー」と遠慮がちに声をかけた。
「なんだ?」
「その剣、なんですけど……ひょっとして例の赤髪の店主さんの店で買ったものですか?」
「ほう、よく分かるな。その通りだ。……ということは君の剣も?」
「はい。この剣も赤髪の店主さんの店で買ったものです」
そうだったのか。イザベルは思う。やはりあの赤髪の店主の店にはいい商品が揃っていると再認識しながら。
このビキニアーマーの防御力の高さはともかく露出度の高さどうにかならないかと思いはするが。
「何はともあれ、無事に済んでよかった。それでは私はこのあたりで帰らせてもらう」
「はい! ありがとうございます、イザベルさん!」
「ありがとうございます!」
踵を返したイザベルにラチェットとイルが礼を言う。
それに顔だけで振り返り、笑みで応え、イザベルは王都への帰路につく。
それを見送った二人もまた自らの家に帰るべく帰路につく。
(強くてカッコいい人だったな。……でも、あの露出度の高い格好は目のやり場に困るなぁ)
そんなことをラチェットは思いながら。
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