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第36話:フラッシュソード その1
しおりを挟むどんな魔物に対抗する武器防具アイテムも揃う噂のアイテム屋。赤髪の店主が経営するその店に来客があった。
「いらっしゃい。お……あんたか」
それは店主に見覚えのある女性剣士であった。
ビキニアーマを纏っており、露出度の高い格好をしているが、このビキニアーマーを売ったのは他ならぬ赤髪の店主だ。
そう女冒険者イザベルが再び赤髪の店主の店にやって来たのである。
「その鎧にご満足いただけたみたいだな」
「ああ。この鎧に不満はない。少し恥ずかしいがな」
「なら、どんなご用件で?」
そう問われ、イザベルは剣を差し出した。
しかし、その剣は途中で折れてしまっていて、無残な姿を晒している。「これはまた」と店主は言う。
「愛用の剣だったのだが、この間、ロック・リザードとの戦いで折れてしまってな。長年使い続けた剣だから寿命もあったのだと思うが……」
「ロック・リザードは硬質な肌を持つ。そのせいもあるだろうねぇ」
「ああ。そこで、だ」
イザベルは笑みを浮かべ、店主を見る。
「ロック・リザードの肌も斬り裂ける剣を私に売ってくれ。私は剣を求めて来た」
「なるほどね」
それは納得できるものであった。ロック・リザードの肌も斬り裂く剣か。
確かに普通の店にはなかなかないだろう。だが、この店は普通ではない。
店主は店の奥に引っ込んでいくと、しばらく経ち、鞘に収まった一本の剣を持って出て来る。
イザベルはこの店のことも赤髪の店主のことも既に信頼している。不安はなかった。
店主が持ってきた剣を鞘から抜き放ち、解説を始める。
「フラッシュソードだ。普通に斬り付ける分にも標準の剣以上のものがあるが、光魔法を使うこともできる」
「ほう。剣自体が魔法を放つというのか」
「そうだな」
その刀身は曇りなく銀色に輝いており、名剣の威風を漂わせている。
ただ斬るだけでも強そうだが、魔法を使うこともできるとは。
イザベルは自力で魔法を使える冒険者だが、剣自体が魔法を放ってくれるのであればそれに越したことはない。
「それを貰おう。いくらだ?」
「金貨3枚でいいよ」
「分かった」
イザベルは代金を取り出して、払う。
代わりに受け取ったフラッシュソードを構え、一振り、二振り、としてみる。
文句はない。この剣ならロック・リザード討伐も楽にできることだろう。
店を出たイザベルは早速、冒険者ギルドに行き、ロック・リザード討伐の依頼を受ける。
ロック・リザードの生息地のカタライ山脈に赴き、ロック・リザード相手の狩りを開始した。
イザベルが身一つで行くと獲物に飢えたロック・リザードたちはその姿を現した。
だが、狩られるのはイザベルではない。ロック・リザードの方だ。
イザベルはフラッシュソードを抜き放つ。一匹のロック・リザードがイザベルに突進して来た。
それを回避し、その肌にフラッシュソードで斬り掛かる。
ロック・リザードの堅牢な肌を軽々と斬り裂き、フラッシュソードがロック・リザードの肉に喰い込む。
ロック・リザードは悲鳴を上げた。そのまま連続して斬撃を放ち、ロック・リザードの一匹を倒す。
次なるロック・リザードが向かってくるが、イザベルはフラッシュソードの機能を試すことにした。
光魔法を放つことができるというフラッシュソードの力を。
フラッシュソードを構えるとそこから光の弾丸が発生し、ロック・リザードに向かって飛んで行く。
それらが命中し、ロック・リザードは苦悶の声を上げた。
そこにすかさず接近し、頭部にフラッシュソードを突き立てる。これが脳髄に突き刺さり、ロック・リザードは絶命した。
「分かってはいたが、凄いものだな」
あの店主の店で買った品物だ。普通の武器以上の力があると分かってはいたが、これほどとは。
全く。あの店は、あの赤髪の店主は何者なんだ、と思う。
次いでロック・リザードが突進してくるのをイザベルは体を跳ねさせ、躱す。
ビキニアーマーは軽量で身軽な動きを邪魔しない。それでいて防御力も魔術的な加護で充分にあるのだからこの品物もあの店で買ってからというものの世話になりっぱなしだ。
イザベルはそのままロック・リザードを次々に斬り裂いていき、時にはフラッシュソードの光魔法も交え、ロック・リザードを倒していく。
そう時間が経たない内にその場のロック・リザードは全滅した。満足気にイザベルは頷く。
「うむ。この剣は新たな愛剣にするに相応しい」
フラッシュソード。いい剣だ。そう思い、山を下りて王都に帰ろうとしたイザベルだが、切羽詰まった顔で走る少年を見かけて思わず声を掛けた。
「どうした、君」
「貴方は冒険者の方ですか? すみません、今急いでいて……」
「何かあったようだな」
イザベルの言葉に少年は焦りを隠そうともせずに頷く。
「良ければ教えてくれないか? 力になれるかもしれん」
「はい。俺はラチェットって言います。イルって女の子が盗賊にさらわれてしまって……それを助けるために向かっている途中なんです」
「なんだと! それは見過ごせん!」
イザベルの中の正義感が燃え上がる。
なんという卑劣な盗賊だ。この少年と共にさらわれたらしい女の子を救出に行くことを決めるイザベルであった。
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