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第40話:デーモンクラッシャー その1
しおりを挟むデーモンが現れたという。
デーモンは上級の魔物でドラゴンにこそ一歩劣るものの、市民にとって脅威に他ならなかった。
加えて言えばドラゴンは野生で現れることもあるがデーモンが野生で現れることなどまずない。
魔王軍の復活か、と騒ぎになる一方、冒険者ギルドにはデーモン討伐の依頼が出され、その依頼を受けようとしている冒険者パーティーがいた。
かつて赤髪の店主の店で癒やしの杖を買った治癒師(ヒーラー)、アリーシャを有するラッシュをリーダーとしたパーティーだ。
このパーティーはケイをリーダーとしたドラゴン殺しを成し遂げたパーティーに次いで、冒険者ギルド内でも強豪パーティーとして知られており、デーモン討伐の大任もこのパーティーなら果たせるだろうという意見が大半だった。
そうして依頼を受けたラッシュのパーティーであるが、流石にデーモンという強敵を相手にしては今のままの装備で挑むのには不安が残る。
ラッシュはどうしたものか、とパーティーメンバーに相談した。
「あの噂のお店に行ってデーモンに対して有効な武器を買ってはどうでしょうか?」
アリーシャがそう言う。
彼女はかつて噂のお店に行き、治癒の杖を買って回復魔法の効力を格段に上昇させただけにその言葉には説得力があった。ラッシュも頷く。
「そうだな。今度の依頼は難しい依頼だ。打てる対策は全て打っておきたい」
ラッシュは噂の店に行き、デーモン対策の武器を買うことに腹を決めていた。
パーティーメンバーたちからも反対の声は出ず、翌日、ラッシュは噂の店を訪れる。
コーラル王国王都から少し外れ森に踏み入った所にその店はある。店を訪れたラッシュを、
「いらっしゃい」
店主が迎える。赤髪を肩まで垂らした男でどことなく胡散臭い雰囲気が漂っているが、アリーシャに売った治癒の杖の効力は本物だった。
ラッシュはこの店の武具は評判通りの力を発揮すると信じて店主に声をかけた。
「我々はデーモン討伐の依頼を受けた者だ。デーモン対策になる武器があれば売って欲しい」
「デーモンか。厄介な魔物だね。そんなものが出たってことは魔王軍が動き出したのかい?」
「それはまだなんとも言えん……」
デーモンの出現には魔王軍が絡んでいる可能性が大であったが、まだ断言はできない。
ラッシュはそう言うと「少し待ってくれ」と言って店主は店の奥に引っ込んでいく。
やがて一本の斧を持って店主は現れた。
斧、か。ラッシュが使い馴染んだ武器は剣であるのだが、斧も使えない訳ではない。
この斧がデーモン対策に有効ならば使うこともやぶさかではない。
「デーモンクラッシャーだ。この斧には魔性の敵に対する特攻効果がある」
「ほう。それは是非とも欲しいところだな」
「ああ。金貨3枚に銀貨20枚だ」
安くはないがそう無茶苦茶な値段を言われている訳ではない。
ラッシュはこの斧を買うことに決めた。
魔性の敵に効果がある武器ならば今後、魔王軍が積極的な侵攻をかけてきた場合にも役立つ代物だ。
ラッシュは代金を払いデーモンクラッシャーを手にする。
「毎度あり」
店主からデーモンクラッシャーを買ったラッシュはそのまま店を後にする。
胡散臭い店主であるが、その商品の効能はアリーシャが買った癒やしの杖で証明されている。
帰路を行くラッシュの前に小型の悪魔であるプチデビルが襲い掛かって来た。
デーモンクラッシャーの試し斬りには丁度いいであろう。
魔性に効果を発揮するというのなら眼の前の悪魔にも効くはずだ。
ラッシュはそう思いデーモンクラッシャーを振るう。
プチデビルはその一撃を受け、一撃で倒され、地面に倒れ伏す。
残りのプチデビルもそうして斬り捨て、この武器が魔性のものに効果がある武器であるとの確信をラッシュは抱く。
「これならばデーモン相手にも効果はあるな」
そう思いパーティーメンバーの元に戻る。
「リーダー!」
「目当ての物はあったんですかい?」
アリーシャとゴルドーが反応してラッシュに声をかける。ラッシュは頷いた。
「ああ。デーモンクラッシャーだ。この斧ならデーモンにも対抗できる」
「何やら凄そうな斧ですな」
ゴルドーの言葉通り、デーモンクラッシャーには見るからに普通の武器ではない雰囲気が漂っている。
この武器ならデーモン相手にも勝てる。その確信をラッシュは強くする。
「これならデーモン相手にも不足はないだろう。明日、早速、デーモンの討伐に行くぞ」
ラッシュの言葉にパーティーメンバーたちは皆、頷く。
デーモンの討伐、大任だが、不可能なことではない。
ラッシュは買ったばかりのデーモンクラッシャーを眺め、頼むぞ、と声をかける。
この斧でデーモンを倒す。その思いを込めて、愛用の剣ではなく、デーモンクラッシャーを装備する。
明日のデーモン討伐に向けて準備は万全だった。
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