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第41話:デーモンクラッシャー その2
しおりを挟む赤髪の店主の店でデーモンクラッシャーを購入したラッシュ率いるパーティーはいよいよデーモン討伐に向かう。
強力な魔物だ。少しも気を抜くことなどできない。
しかし、赤髪の店主の店で購入したのはデーモンクラッシャーだけではない。
かつて戦士コルド―が負傷した時、それを治すための癒やしの杖を治癒師(ヒーラー)アリーシャが手にしている。
この二つがあればデーモン討伐とて不可能ではないと思える。
それでもデーモンは強敵だ。デーモンが人里近くに現れること事態、魔王の復活の前兆あるいは既に復活しているのではないかと危惧してしまうが不確定なことを気にして目の前の敵への注意を逸らすのはよくない。
俺たちはデーモンを倒すのみ。ラッシュは覚悟を決めて、パーティーメンバーを、仲間たちを見渡す。
「みんな、いよいよデーモン退治だ。難しい依頼であることは百も承知だと思うが、俺たちなら倒せない相手でもない。気合いを入れていくぞ」
戦士のコルド―、それに治癒師のアリーシャ、他の仲間たちもリーダーの言葉に頷く。
やるだけだ。表情がその意思に染まっていること、熱意を目に宿していることを確認し、ラッシュは満足する。
これならいける。これならやれる。
デーモンは強敵だが、俺たちなら勝てる。
そう思い、パーティーはコーラル王国王都を出立する。王都から大分離れた洞窟。そこにデーモンはいるらしい。朝に出かけたが、辿り着くまで片道で夕方までかかった。
これは帰りは一晩、野営だな、との思いを懐きながら、デーモンがいるという洞窟を目指す。
途中、現れた魔物たちは全て退治した。いよいよデーモンがいるという洞窟を前にする。
「緊張しますね……」
アリーシャが言う。いよいよデーモンを目前にしてその顔が言葉通り緊張に染まっているのを見る。
出だしは気合いが入っていると思ったし、それが消えた訳ではないだろうが、目標を目前にしてしまえば体が硬くなるのも分かる。
「大丈夫だ。アリーシャ、俺たちにはあの店で買った斧、デーモンクラッシャーがある」
ラッシュはデーモンクラッシャーを構えて見せた。
この道中の魔物を叩き潰してくれた斧の刃は光を受けて鈍く輝く。
その刃には魔法の紋様が刻まれており、魔性の敵に効果を発揮するようになっている。
この斧ならデーモンといえど敵ではない。
「よし、行くぞ」
皆の覚悟が固まるのを待ち、件の洞窟に足を踏み入れる。数歩歩いた所で、
「グオオオオオオオオン!」
魔物の咆哮が響き渡る。パーティーメンバーに緊張が走る。
この咆哮の主は目当ての魔物、デーモンに違いないであろう。
ラッシュがパーティーメンバーを見渡し、「いよいよだな……」の声を漏らす。
そして、そこからさらに進み、洞窟が開けた空間になっており、天井が開いていて太陽の光が差し込んでいる場所。
そこに、目当ての魔物はいた。
「グガアアアアアアア!」
巨大な悪魔、デーモンである。その背丈は5メートルはあり、体は紫色に染まっている。
羽根を広げ、咆哮をあげる口のある顔は獰猛な雰囲気を携え、その頭には二本の角が伸びる。
間違いない。こいつがデーモンだ。デーモンは侵入者を察知すると手をかざす。
「魔法が来るぞ! 散らばれ!」
ラッシュはとっさに叫んだ。パーティーが散らばり、爆裂魔法がそこに炸裂する。
固まったままでは全員吹き飛ばされていただろう。
パーティーメンバーの一人が爆発の余波を喰らって負傷したようでアリーシャが癒やしの杖で回復魔法をかける。
これもあの店で買ったものだ。
「リーダー! 行くぞ!」
戦士のコルド―が叫び、ラッシュは頷き、デーモンクラッシャーを手に駆け出す。デーモンは再び魔法を放ってきた。火炎が吹き荒れ、ラッシュとコルド―を狙ったが、それを回避し、コルド―が剣をデーモンに叩きつけようとする。
それをデーモンは回避する。だが、その隙は見逃さない。
コンビネーション攻撃であった。ラッシュがデーモンクラッシャーを振り下ろす。
デーモンの片腕はそれで切断され、デーモンが絶叫を上げる。
残った腕で魔法を唱え、ラッシュとコルド―は一旦、下がる。
デーモンはそうしている間にも魔法を連発して来た。パーティーメンバーの魔法使いが応戦するが魔法の腕前は悪魔であるあちらの方が上のようだった。隻腕でもこちらの魔法使いを上回る魔法を駆使している。
「うおおおおお!」
覚悟を決めてラッシュは突っ込んだ。デーモンの魔法が迎撃するが多少負傷してもこちらには癒やしの杖がある。
爆裂魔法の中を突っ切り、全身を焼かれ、体中から煙をたてながらもラッシュはデーモンに肉薄する。
そんなラッシュにアリーシャが遠距離から癒やしの杖で回復魔法をかける。
全身の傷がふさがっていく。そのままラッシュはデーモンクラッシャーでデーモンの体を斬り裂いた。
「グギャアアアアアーーーー!」
デーモンの絶叫が響き渡る。そして、デーモンは倒れた。デーモンクラッシャーの魔性特攻の力で倒せた形だ。
「リーダー!」
「やったのか!?」
パーティーメンバーの声。ラッシュは振り返り、笑みを浮かべる。デーモン討伐。見事達成。それに違いなかった。
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