万能のアイテム屋さん あらゆる魔物・状況に対するチート級武器防具アイテムが揃う店

和美 一

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第42話:疲労回復の塗り薬

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 コーラル王国王都の少し外れ、森に踏み入った所にその店はある。
 その店にはどんな武器防具アイテムも揃い、来客の注文に確実に応えるという。
 そんな評判をアテにして噂の店に訪れる客が今日も一人。

「いらっしゃい。おや?」
「こんにちは、店主さん」
「ああ、あんたかい」

 赤髪を肩まで垂らした店主が出迎えると、来客は怨霊の除霊を役目としている巫女の家系の少女、イルであった。
 彼女と彼女の護衛の少年・ラチェットはこれまでも何回かこの店に来店しているが、イルはいつも護衛のラチェットと一緒に来ていた。
 イルが一人で訪れるのは初めてのケースだ。それを訝しんだ店主は思わず訊ねてしまう。

「護衛の少年はどうしたんだい? お嬢ちゃんだけで来るなんてね」
「ラチェットはちょっと疲れがたまっていたみたいで家で寝込んでます」
「そりゃ、まぁ」

 なんと返答していいか分からなかった。店主はとりあえず頷いてみたものの、それだとこの少女が一人でこの店にやって来た理由をいまいち推測しかねる。

「それじゃあ、お嬢ちゃんが一人でわざわざ来るなんて何がご要望だい?」

 怨霊を退治するための剣。怨霊相手の耐性を付けるための特殊な衣服。それらはイルとラチェットに売ったものだが、イルが一人で来るとなると怨霊退治で何か困っている訳ではないと思える。
 店主の問いにイルは笑みを浮かべて答えた。

「はい。ラチェットの疲労回復に効く薬か何かないかと思いまして。ラチェットには日頃から世話になっているんで、その疲れを癒やしてあげたいな、って思いまして」
「なるほどねぇ」

 それは納得できる答えだった。
 護衛の少年が疲れで寝込んでいるというのなら、それを癒やしてあげたいと思うのはこの心優しそうな少女なら考えうることだろう。
 日頃の恩返しも兼ねているのかもしれない。
 そんな少女を前に店主はさて、どんなアイテムが相応しいか、考え出していた。

「分かった。ちょっと待ってくれ」

 店主は店の奥に引っ込んでいく。そうして、しばらく経ち、帰って来る。
 イルはラチェットのためになる物が手に入ると期待感をにじませた笑みを浮かべて店主を見る。店主は薬壺を差し出した。

「こいつは疲労回復の効果がある塗り薬だ。これを体に塗ればたちまちあの少年も元気になるよ」
「か、体に塗るんですか?」

 イルは顔を赤くする。どうしたんだろうと店主は思ったが察して笑みを浮かべる。

「別にお嬢ちゃんが塗ってあげる必要はないさ。恥ずかしがることはない」

 体に塗るということはラチェットという少年の肌身に触れて薬を塗らないといけない。
 とはいえ、それはイルが塗ってあげる場合の話だ。ラチェットに自分で塗らせればいいだけの話である。

「い、いえ! ラチェットに自分で塗らせるなんて真似をさせるのも疲れている身にはつらいでしょうし、わたしが塗ります!」
「そ、そうかい? まぁ、お嬢ちゃんがそれでいいならいいが……」
「それで、これはいくらですか?」

 予想外の大胆さを見せるイルに店主は戸惑いつつも、イルの問いかけに答える。

「金貨1枚でいいよ。お嬢ちゃんとあの少年はうちの常連さんだからね。値引きしとくよ」
「あ、ありがとうござます! それだけならわたしでも払えます!」

 イルは金貨1枚を取り出し、店主に渡す。それと引き換えに薬壺を店主はイルに渡した。

「毎度あり」

 それでイルは薬壺を手に店を出る。そのままラチェットの家に行き、ベッドで横になっているラチェットに声をかける。

「ラチェット、起きてる?」
「……イルか。ああ、まぁ」
「うん。それじゃあ、服を脱いでくれる?」
「はぁ!?」

 いきなりのイルの言葉にラチェットは困惑と驚愕の声を返す。イルは慌てて釈明した。

「べ、別に変な意味じゃないよ? 例のお店に行って疲労回復の塗り薬を買ってきたの。それを塗ってあげようと思って」
「あ、ああ……そうなのか。すまないな」
「ううん。普段、ラチェットがわたしにしてくれていることを考えれば当然だよ」
「じゃあ、上着を脱ぐよ」

 ラチェットは体を起き上がらせ、上着を脱ぎ、上半身裸になる。
 イルは頬を赤くしつつも、ラチェットも恥ずかしいだろうと思い、あまり恥ずかしさを表に出さないようにしつつ、その上半身に薬を塗っていく。
 少年の体は剣を振り回し、少女の護衛をしているだけあって、筋肉がついてガッシリ引き締まっていた。
 その体に塗り薬を丁寧に塗っていく。

「ん。ありがとう、イル。気持ちいいよ」
「それなら良かった。わたしにできることはこれくらいだから」

 イルは丁寧に塗り薬を少年の上半身に塗っていく。
 これで普段の恩返しが少しでもできるのならイルにためらう理屈はなかった。
 一通り塗り終わり、イルはふと思いついたことを言う。

「あ、下も塗った方がいいかな?」

 ラチェットは噴き出していた。

「い、いや、それはさすがに……いい。上だけで充分だよ」
「そ、そっか。分かった。ラチェット、早く元気になってね」
「ああ。イルが塗ってくれた薬のおかげで元気になれそうだ」

 そんな少女と少年の甘酸っぱい一幕が繰り広げられたのであった。
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