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第43話:ファン・ボウガン その1
しおりを挟む魔物の数は日増しに増えていった。
これを魔王の復活の前兆か、あるいは魔王はもう復活したのではないか。
人々はそんなことを口々に噂したが、事実は分からないままだった。だが、魔物が増えているという現実はある。
コーラル王国王都の冒険者ギルドでは魔物退治の依頼であふれかえり、冒険者たちは次々に魔物を、退治しに向かっていった。
そんな中、ボウガンを武器とする女冒険者カナンがいた。ボウガンに矢をつがえ、放つのだが、敵である魔物の数が増えると対処し切れない事態も増えてきた。
そんな中でカナンは噂の店を訪れた。
多数の目標を同時に攻撃できるボウガンがないか。そう思ってのことだ。
そんな都合のいい武器があるはずもないとは思いつつも、何でも揃い、来客の注文に確実に応えるとの噂の店ならばもしかしたら、と思った次第だ。
コーラル王国王都の少し外れ、森に踏み入った所にあるその店を訪れる。
「いらっしゃい」
赤髪を肩まで垂らした店主がカナンを出迎える。
「何がご所望で?」
「ああ、それなんだが……」
無茶を言っていることは承知の上でカナンは注文を告げる。店主は考え込み、その末に言った。
「お客さん、魔力の素養はある方で?」
「ん? ああ、一応な」
なんでこんな質問をされたのかは分からないが、カナンは魔法は使えないが体内には魔力を秘めていた。
もっとも魔法が使えないので持て余しているだけであるが。
「それならいい武器がある」
店主はそう言って、店の奥に引っ込んでいく。そして帰って来た時には独特のボウガンを持っていた。
「それは……」
思わずカナンは口にする。それはボウガンでありながら矢を発射する筒が5つある。扇状に広がったボウガンであったからだ。
「この武器なら多数の魔物にも対抗できる」
そのボウガンの全てから同時に矢が放たれれば確かに多数の魔物を同時に相手取ることも可能だろう。しかし。
「五本の矢が必要か? 戦闘中にそれだけの矢をあてがう暇などない」
「まぁまぁ、よく聞きなさって。この武器は物理的な矢を射出する武器じゃない。魔力を矢として射出する武器だ」
「魔力を……」
カナンは再びそのボウガンに視線を向けた。
この五本の筒から同時に魔力の矢が放たれる。
それならば多数の魔物にも命中し、多数の魔物を同時に倒せる。
問題はカナンにこれを使える魔力があるかどうかではあるのだが、カナンには自信があった。
「そうか。ではこれを購入させてもらおう。いくらだ?」
「金貨3枚に銀貨10枚といった所だな」
「分かった」
代金を払いカナンは扇状のボウガンを手にする。そして、ハッと思い立ち店主に訊ねる。
「このボウガンの名前は?」
「ファン・ボウガンだ。大事に使っておくれ」
疑問も解消し、カナンは外に出る。そして、木々に向かってファン・ボウガンを構える。
魔力を込めるイメージを懐き、ボウガンの引き金を引く。
五本の光の矢が放たれ、立ち並ぶ木々に命中した。
申し分ない。これなら多くの魔物と戦うことも可能だろう。
カナンは満足し、首都に帰る。冒険者ギルドに行くと依頼があふれていた。魔物の数が増えて依頼の数も増加しているのだ。
「これは……」
そこに大規模な依頼があった。
冒険者一人ではなくパーティーや複数人に出された依頼のようだ。
魔物の大群がやって来ているからそれを迎撃して欲しいというものだ。
この依頼には多数を相手にできるファン・ボウガンはうってつけに思えた。
カナンはこの依頼を受けることにし、他の冒険者やパーティーと合流した。
「魔物の大群は面倒な敵だ。だが、雑魚ばかりならどうともならないということはない」
そう言うのは狩人のシュートだ。竜落としの弓を構え、強気に言い放つ。
「俺たちなら魔物相手でも戦える」
冒険者ジェクトもそう言う。彼のマジックブーメランも赤髪の店主の店で買ったものだ。
「我が槍で貫いてくれよう」
赤髪の店主の店で買った貫きの槍を構え、冒険者イグルトも自信を示す。
他にも冒険者が数人とパーティーが一組いた。
無論、カナンとて魔物などにやられるつもりはなかった。
そうして、一行は出発し、魔物の大群の侵攻に備える。
日も沈もうかという頃、魔物たちはやって来た。
無数に狼型の魔物やゴリラ型の魔物などが侵攻してくる。
カナンは前に出てファン・ボウガンの引き金を引いた。五本の光がファン・ボウガンから放たれ、魔物五匹を同時に撃ち倒す。
他の冒険者たちも己の武器で魔物たちに立ち向かう。
各自、奮闘しているようであった。ファン・ボウガンから放たれた光の矢はそんな魔物たちを同時に倒し、この武器ならいける、との実感をカナンに抱かせる。
魔物たちを纏めてファン・ボウガンから放たれた五本の光の矢が倒していく。
この勢いなら魔物たちを撃退できる。その思いでファン・ボウガンを振るうカナンであった。
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