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第57話:呪い払いの札
しおりを挟む怨霊払いの家系に生まれた巫女イルとその護衛の家系に生まれた少年剣士ラチェット。
二人は今日も怨霊を浄化するため、怨霊のたまり場となっているらしい峠に来ていた。
日が暮れれば早速、湧いて出て来る怨霊たち。
イルは祈りの力で浄化魔法を唱え、怨霊を消滅させ、ラチェットはあの赤髪の店主の店で買った霊を斬れる剣、ゴーストキラーで怨霊たちを斬っていく。
魔王の復活の前兆か、それとも魔王は復活したのか怨霊たちはこれまでと比べ格段に手強くなっていた。
ゴーストキラーでも一太刀では仕留め切れず、何回か斬り裂き、その霊体を破る。
イルの魔法にも耐性を持っているようであった。
「くそ、こいつら、厄介だな!」
思わずラチェットはそう言い、ゴーストキラーを振るう。
イルとしても同意だったが、祈りの魔法を行使する都合上、無駄口は叩いていられない。
そう思っていると一匹の巨大な怨霊が現れた。
怨霊退治をして長い二人であるが、こんな怨霊は初めて見る。驚きに目を見開く。
イルは複数の怨霊が集まって一つの巨大な怨霊になっている、と予測を付けた。
「なんだこいつは!?」
ラチェットの驚きの声。イルも驚きつつも速やかに退治すべく祈りに入る。そこに、
「あぶない!」
声が弾ける。イルが祈りの体勢に入った所に巨大な怨霊が襲い掛かって来たのだ。
ラチェットは自らの体を盾にイルを庇う。ラチェットの肉体に怨霊が取り憑く。
「ラチェット!」
「だ、大丈夫だ……早く浄化魔法を……」
大丈夫には見えなかったがイルにできることといえば浄化魔法を唱えるしかない。
いつもより数節長い祈りの詠唱を終えて、強力な浄化魔法を放つ。
浄化魔法は実体を持ったものには無害だ。ラチェットに向けて放っても、怨霊だけを浄化し、ラチェットに危害を加えることはない。
巨大な怨霊は浄化され、この場にいた怨霊は全て消え失せた。しかし、ラチェットの顔色は良くない。
「ラチェット! 大丈夫!?」
「ちょ、ちょっと、大丈夫じゃないかもな……これは、呪い、か……?」
フラフラしながら、なんとかゴーストキラーを鞘に戻すが、今にも倒れそうだ。
ラチェットに肩を貸したイルは二人して家に戻る。
それでも、ラチェットの状態は回復することはなかった。
一晩眠れば回復するかも、と希望的観測を抱いていたが、そう甘くはないようだ。
あの巨大な怨霊に一時は取り憑かれたのだ。それも無理はない。
これをどうすればいいか。悩んだイルは例の赤髪の店主の店に行くことにした。
あの店ならばこの状態のラチェットを治癒する……呪いを解呪するアイテムもあるのではないか。そう思っての、ことだった。
コーラル王国王都の外れ、森に踏み入った所にある店を訪れる。
イルにとっては何度も訪れた店だ。その店主の人柄は知っているし、そこで買える商品が優良な物ばかりであることも知っていた。
「いらっしゃい。おや、お嬢ちゃんか」
赤髪を肩まで垂らした店主がイルを見て、笑みを浮かべる。
彼にとっても常連客と見なしているのだろう。イルを見る目はやさしかった。
「こんにちは、店主さん。実はラチェットが怨霊の呪いを受けてしまって……」
「あの少年がか。なるほど。怨霊退治をやっているお嬢ちゃんたちなら起こり得る事だね」
「はい。解呪のアイテムか何か、ないでしょうか?」
真摯にイルは言葉を発する。ここでなければ他にアテはない。
ラチェットを治すことができなくなってしまう。そんな不安を抱えての言葉だったが、店主は笑みを浮かべて頷いた。
「ああ。呪いを解く札ならある。今から持ってくるからちょっと待っておくれ」
「助かります!」
店主はそう言い、店の奥に消えていく。
イルは心の底から安堵していた。これでラチェットも治せる。
自分を庇って受けた呪いから解き放つことができる。ややあって、店主が帰って来る。
「この札なら大概の呪いは解けるはずだ。こう見えて聖なる力が籠もっている」
店主が差し出した札は確かに聖なる波動を感じるものだった。イルはこれなら大丈夫だ、と確信を強くする。
「これをいただきます。いくらですか?」
「まぁ、安くしといたい気分なんだが、金貨2枚は貰わないとね」
「分かりました」
ラチェットの危機なのだ。金を出し渋る訳にもいかない。
イルは金貨2枚を差し出し、札を受け取る。そして、店主に一礼して、店を出る。
早速、ラチェットの家に帰って来たイルは寝台で横になっているラチェットの元に行く。「ラチェット」と声をかけると、
「うう、イル、か……」
苦しげな声が返って来る。しかし、その苦しみも取り払いてあげることができる。
イルは札をラチェットにかざした。
そこから聖なる白いオーラが出て、ラチェットの体を包み込む。
それが晴れた先にはラチェットの顔色は見るからに良くなっていた。
「これは……?」
ラチェットが疑問を口にする。
「あの赤髪の店主さんの店で買った解呪の札よ。効果は抜群みたいね」
「ああ。すっかり元通りだ。これなら俺もイルを守る役目をまた果たせる」
「今度は呪われたりしないでね」
そうして、二人笑い合う。こんな気楽な会話ができるようになったのもあの赤髪の店主のおかげだ。
イルは感謝の念を抱くのであった。
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