万能のアイテム屋さん あらゆる魔物・状況に対するチート級武器防具アイテムが揃う店

和美 一

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第56話:妖精の剣

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 コーラル王国王都の少し外れ、森に踏み入った所にその店はある。
 赤髪の店主の店。その店のことを友人のエルミーから聞いていたエルランはやや緊張して店を訪れた。
 エルランもまたエルミー同様、人間ではなく、エルフである。
 人間たちの領域にやって来るのは勇気のいることであった。
 しかし、エルフと人間は近しい種族。人間が使える武器ならばエルフにも使えるはずである。
 すなわちエルミー曰く、どんなものでも揃っているというこの店に行けば自分も目的が達成できるはずだ。
 そう思い、店の扉を開く。

「いらっしゃい。……おや? エルフのお客さんとは珍しいね」
「エルミーに弓を売ったそうだな、店主よ」
「ああ。あのお嬢さんの知り合いかい。まぁね」

 赤髪を肩まで垂らした店主は隠すこともなくエルランの言葉に頷く。別段、隠す理由もないか。
 一人、納得し、エルランは要件を切り出す。

「魔法の力を強める剣が欲しい。杖でもいいのだが、直接、敵を攻撃できる剣にその力が宿っているのならそちらの方がいい」
「なるほどね。魔法効果を高める剣か。少し待っておくれ」

 そう言うと店主は店の奥に消えていく。
 本当にあるのか? 疑問に思いつつもエルランは待つ。しばらくして店主が鞘に収まった剣を一本、持って帰って来た。

「この剣はどうだい?」
「抜いていいか?」
「どうぞ」

 エルランは店主から剣を受け取り、抜剣する。
 細身の剣であった。切れ味に若干の不安が残るが、強い魔力を感じる。
 エルフのエルランにはそれがよく分かった。この剣を持って魔法を唱えればそれは相応に強化され、放たれることだろう。

「確かに魔法を強化する力は申し分ないようだが……切れ味の方がいいんだろうな?」
「勿論。細身の剣だが、充分な切れ味はあると保証しよう」
「そうか。それならこれをもらおうか」

 少し疑わしくはあるものの、エルミーに売りつけたという必中の弓はその名の通りの効力を発揮した。
 この剣もこう見えて切れ味が鋭くあるのだろう。そう思い、エルランはこれを買うことにした。

「妖精の剣だ。金貨3枚に銀貨20枚って所だな」
「分かった」

 その程度の金ならエルフとて持っている。
 エルランは代金を払うと、妖精の剣とやらをマジマジと見つめ、鞘に直す。

「毎度あり」

 店主の言葉を背中で聞きながら、店を出る。
 人間たちの領域に長々と居座る気はない。さっさとエルフの里に戻ってしまおうとエルランは足早に平野を駆ける。
 そして、エルフの里に戻るとエルミーたちがエルランを出迎えた。

「おかえりなさい、エルラン! 目当ての物は買えました?」

 エルミーは先の店で買ったという露出度の高い鎧を着ている。
 ビキニアーマーという物らしい。防御力は低そうに見えるが、魔術的な加護が施されており、並の鎧などより遙かに防御力は高い。
 それをエルランも見て、知っていた。

「ああ。いい剣が買えた。これなら最近、凶暴になっている魔物たちにも立ち向かえるだろう」
「それはよかったです」

 我が事のようにエルミーは喜んでくれる。
 エルランは買った剣を見ていると、一人のエルフが慌てた様子で駆けて来た。

「大変だ! 魔物の襲来だ!」

 魔物。それならば迎撃に出なければならない。
 不謹慎ではあるが、エルランは買ったばかりのこの剣の力を試せる丁度いい機会だと思っていた。

「エルミー、行こう」
「はい!」

 エルミーも先の店で買ったという必中の弓を持って、魔物の迎撃に出る。
 魔物たちと相対したエルランは早速、剣の効果を試してみることにした。
 氷属性の魔法を唱えて、放つ。剣を触媒にしているため、剣の切っ先から放たれた氷の波動は普段より強く、魔物たちの一部を完全に氷漬けにした。

「こいつは凄い」

 思わず驚嘆が漏れる。この剣の魔力を高める力は本物ということか。
 そうしている間にもエルミーが必中の弓で矢を放ち魔物を仕留めて行く。
 エルランも再度、氷魔法を唱えて、魔物たちを再び氷漬けにした。
 無論、それを縫って迫りくる魔物もいる。エルランは妖精の剣を構える。
 剣としても強力という話だが、果たして。エルランは前に出て妖精の剣を振るう。
 それで魔物は斬り裂かれ、地面に倒れ伏した。細身の剣とは思えない。素晴らしい切れ味だ。

「あの店主の言った事に嘘はなかったか」

 それを実感する。魔物たちはまだいる。
 再度、氷魔法を唱え、魔物たちを蹴散らす。
 エルミーの必中の弓がその名通りの効果を発揮し、魔物たちの脳天に放った矢が突き刺さる。
 近付いてきた魔物は妖精の剣で直接斬り付けて倒した。
 そうしている内にエルフの援軍も駆け付け、魔物たちを倒す。
 しかし、一番活躍したのはエルランであることは誰の目にも明らかであった。

「エルラン、凄いですね」

 エルミーがそう言って、エルランを見る。エルランは「いや」と謙遜する。

「この妖精の剣のおかげだ。あの店は本当にいい商品を取り揃えているのだな」

 人間のことはあまり好まないエルランであるが、あの店主は認めてやってもいいかもしれない。
 そう思うエルランであった。
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