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第67話:サンダー・ウィップ
しおりを挟むコーラル王国王都の少し外れ、森に踏み入った所にそのお店はある。
あらゆるものを取り揃え、来客の注文に確実に応えるとされるその店に今日もまた一人、客が足を踏み入れた。
「いらっしゃい」
赤髪を肩まで垂らした年齢不詳の店主が来客を出迎える。
来客は女性だった。その名はジャスミント。鞭を武器に戦う冒険者だ。
ここ最近、魔王が復活した、あるいはその前兆かと言われる魔物の活性化・大量発生で凶暴化した魔物たちが暴れまわっており、それの討伐に冒険者ギルドへの依頼も多かった。
ジャスミントもそんな依頼に応じて魔物を倒す冒険者だ。
しかし、凶暴化した魔物を相手にただの鞭では少し分が悪い。そこでジャスミントは新たな鞭を求めてこの店にやって来たのだ。
「鞭が欲しい。魔物たちをなぎ倒せるような、な」
来客の注文を聞き、店主は「ふむ」と頷く。
そうして、店の奥に消えていき、帰って来た時には一本の鞭を持っていた。
「サンダー・ウィップだ。これで対象を叩けば雷属性のダメージを与える」
「ほう。そうなのか。それは凄い」
雷の鞭、か。悪くはない。そう思いジャスミントは代金を訊ねた。
「金貨2枚に銀貨20枚って所だな」
「分かった」
そのくらいなら払える。ジャスミントは代金を渡し、代わりにサンダー・ウィップを手に入れた。
「毎度あり」
店主の言葉を聞きながら店を出る。
中空に向けてサンダー・ウィップを振るってみると雷鳴が鞭から放たれ、中空を舞った。
この鞭が雷の力を秘めているということ。
どうやら嘘ではないようだ。これなら今までの鞭とは段違いな威力が得られることだろう。
これまではできなかったこともできる。そう思い、ジャスミントは依頼を探しに王都に戻り、冒険者ギルドに行った。
狼型の上位魔物サベージ・ウルフが大量発生しているとの依頼を見つけ、これを受けることにする。
サベージ・ウルフは凶暴な魔物で剣で武装した程度の素人ではかなわないのだが、ジャスミントは素人ではないし、何より手にした新武器サンダー・ウィップもある。
この依頼を完遂できることを信じて疑わず、ジャスミントは依頼を受けて、現地に赴いた。
確かにサベージ・ウルフの集団がたむろしていた。
これらを討伐せねばならない。ジャスミントが前に出るとサベージ・ウルフたちは威嚇するように吠える。
しかし、それでひるむ程度の冒険者ではジャスミントはない。
逃げないと見ると襲い掛かって来たサベージ・ウルフの一匹にサンダー・ウィップを振るう。
鞭はしたたかにサベージ・ウルフの肌を打ち、雷撃が放たれ、サベージ・ウルフを絶命させる。
これに動揺したサベージ・ウルフたちだが、すぐに気を取り直し、一斉にジャスミントに襲い掛かってくる。
ジャスミントは華麗な鞭捌きでサベージ・ウルフたちに対抗し、そのほとんどに鞭による一撃を叩き込んだ。
鞭の一撃が雷の一撃となり、サベージ・ウルフたちを倒していく。
この武器は凄い。ジャスミントは素直にそう思った。
これまでの鞭と使用感は変わらないのに威力は段違いだ。
雷の力を秘めた鞭の一撃はサベージ・ウルフといえども一撃で倒しえる。
まだ残っていたサベージ・ウルフたちが襲い掛かってくるが、鞭を一閃。
その軌跡にいたサベージ・ウルフたちは雷の一撃を受けて、倒れ伏す。
サンダー・ウィップの一撃はサベージ・ウルフを絶命させるものがあった。
その勢いでどんどんサベージ・ウルフを討伐していくジャスミント。
サンダー・ウィップも歴戦のジャスミントの鞭捌きに振るわれ、次々にサベージ・ウルフの体を、雷を纏って打ち付けていく。
そうして、ほとんどのサベージ・ウルフを倒し終わったジャスミントは一息つく。
見る限り、サベージ・ウルフは全て倒したようだ。
そう思い、依頼の達成を確認し、王都の冒険者ギルドに帰還する。
サンダー・ウィップの凄さに身震いするものを覚えつつ、報酬を貰う。
この鞭があれば大抵の敵は大丈夫だ。そう言えば魔王が復活するやらなんやら言われているがあれは事実だろうか、と思う。
魔王が復活云々は抜きにしても魔物が活発化・大量発生しているのは事実だ。
自分たちはとりあえずそれの対処に当たるべきだろう。余計なことは考える必要はない。
そう思い、とりあえず今日は休むか、と家に戻るジャスミントであった。
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