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第74話:除霊の帯
しおりを挟む魔王の軍勢にも怨霊はいる。
それらを退治するのは普通の冒険者や騎士では無理だ。
必然的に怨霊除霊の巫女であるイルとその護衛のラチェットに話が回ってくる。
二人も魔王に対抗するため、怨霊を浄化するのは望む所であった。
今日も怨霊退治に乗り出していたのだが、
「く、こいつら手ごわい」
怨霊の強さも魔王の復活によりこれまでの比ではなくなっていた。
ラチェットがゴーストキラーで何度も斬り付け、怨霊を倒す。
イルも除霊魔法を唱え、怨霊にぶつけるが、一撃では倒せない。
浄化し切れない。これも魔王の復活により怨霊が強化されているからだ。
ラチェットとイルは怨霊相手の戦いを今のままでは十全にこなせないことを実感した。
こうなればラチェットたちに取れる手段は多くはない。
例の店に行くしかなかった。
コーラル王国王都の少し外れ。森に踏み入った所にある店にラチェットとイルは再び訪れた。
「いらっしゃい。お、あんたたちかい」
常連客、ということになるのだろう。赤髪を肩まで垂らした店主は笑みを浮かべてラチェットたちを出迎えてくれた。
「さて、今日はどんな要件かな?」
店主に問われ、二人は話し出す。魔王の復活で怨霊が強化されていること。それの討伐に難儀していること。
それらを聞いた店主は考え込み、そして、語りだす。
「ラチェット君に売ったゴーストキラーは最高峰の怨霊除去だ。それ以上の物はない」
「そうですか……」
少しラチェットは落胆する。ゴーストキラーより強力な怨霊退治の武器があれば買いたい所だったが、流石にこれ以上の武器はないということか。
「だが、イルちゃんの除霊魔法を強化するアイテムはある」
その言葉にハッとラチェットは顔を上げる。
イルの除霊魔法を強化する? それなら大歓迎だ。イルの魔法の力が上がれば、怨霊相手の戦いも格段に楽になる。
「ちょっと、待っててくれ」
そう言って店主は店の奥に引っ込んでいく。出てきた時には赤い帯のようなものを持っていた。
「こいつを腕に巻き付けて除霊魔法を唱えればその威力は倍加される」
「それは凄いですね」
店主の説明にイルが驚きの表情で頷く。
普通なら胡散臭いと思う所だが、ラチェットとイルは何度もこの店の世話になった身であり、疑うという発想は存在しなかった。
この帯は本当にそれだけの力を秘めているのであろう。
「これなら怨霊相手にも苦戦しないで済む。いくらなんだ、店主さん?」
「そうだねえ、金貨1枚と銀貨20枚でいいよ」
「そんなに安くていいのか?」
ラチェットが望外の値段に疑問を呈する。店主は笑った。
「こいつは除霊魔法にしか効果がないからね。買い手もなかなかいない。君たちに売れるのならこちらとしても助かるんだよ」
「そうですか、店主さん」
イルが頷く。そして、二人は代金を支払い、イルは買ったばかりの赤い帯を両腕に巻き付ける。
これで除霊魔法が強化されるはずだ。
「毎度あり」
店主の言葉を背中で受けながら、ラチェットとイルは自宅に戻る。
早速、怨霊が出現したと話が飛び込んできた。
ラチェットとイルはそこに駆けつける。そうして、日が暮れると怨霊が湧き出してきた。
「イル!」
ラチェットの言葉を受けてイルが除霊魔法を唱える。
その威力はこれまでと比べて圧倒的だった。
大量の怨霊が一気に消え失せる。
そのあまりの威力にラチェットも、放った当人のイルもしばし、呆然とする。
「これ、凄い」
イルが言う。言われるまでもなく、あの店で買った赤い帯の力であることは間違いなかった。
それでもまだ残っている怨霊がいたのでそれらはラチェットがゴーストキラーで斬り裂く。
イルの除霊魔法を受けて力が弱まっている怨霊などゴーストキラーの敵ではない。斬り裂かれ浄化されていく。
新たな怨霊も現れたがイルの赤い帯で強化された除霊魔法を喰らうとひとたまりもなく、一瞬で浄化されていく。
赤い帯を装備したイルの力は圧倒的で怨霊を瞬く間に葬り去っていく。
「俺の出番がないな、これは」
ゴーストキラーを構えつつも、ほとんどの怨霊はイルが除霊魔法で倒してしまう。
立つ瀬がないとはこのことであった。無論、完全に出番がない訳ではなく、除霊魔法に耐えた怨霊にトドメを刺すのはラチェットの仕事だ。
「これなら魔王の軍勢の怨霊にも立ち向かえるよ、ラチェット」
嬉し気にイルがそう言う。確かに。この威力なら魔王の配下の怨霊といえども楽に倒せてしまうものだろう。それを実感する。
「やっぱりあのお店は凄いなぁ」
そう言うしかラチェットにはできなかった。これなら魔王の軍勢の怨霊たちと戦える。
二人は自分たちに与えられた力を活かし、人々を救うため、今後も魔王配下の怨霊の討伐をすることを決意するのだった。
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