オカンな幼馴染と内気な僕

kuno1234

文字の大きさ
上 下
17 / 37
第一章 恋人始めました

第17話 閑話-ちょっとしたお返し

しおりを挟む
 ある朝のこと。もう4月も下旬だけど、まだ朝は少し肌寒い。
そんな中、目覚ましが鳴るまで惰眠をむさぼろうとしていると。

「あーさーやーでー」

 あれ?なんか、真澄の声が聞こえてくるような。
 夢でも見てるんだろうか。

「あーさーやーでー」

 まただ。やっぱりまだ夢を見てるらしい。
 家にいるのに、真澄がいる夢をみるなんて。
 僕は欲求不満だったのだろうか。

「これでも起きんか……」

 何かため息声のような……?
 まあ、これも夢か。

 ふー。
 あれ?何か耳がぞわぞわってしてくる。
 ふー。
 まただ。変な夢だな。
 むにー。
 ん?何かが引っ張られてるような。
 こしょこしょこしょ。
 くっ。くすぐったい。

「はっ!」

 飛び起きると、目の前には見慣れたベッド。

「夢だったか……にしても、変な夢だったような」

「なーにが、「夢だったか」や」

 ん?声の聞こえる方を向くと、真澄が僕を見下ろしていた。え?

「て、なんで、真澄がここに?」

 どっきりか何かじゃないよね。

「さっきから、なんべんも起こそうとしたのに、起きんから……」
「てことは、今は現実?」

 頬をむにっとひっぱられる。

「目は覚めた?」
「あ、はい」

 どうやら現実のようだ。

「で、なんで僕の部屋に?」

 真澄がここにいるのは現実のようだけど、一体なんでまた。

「おばちゃんから、起こしてきてって頼まれたんよ」
「母さんが?」
「そうやよ」

 小学校の頃ならいざ知らず、今まで、母さんが僕を起こしに来たことなんて、数える程しかないはず。なんでまたそんなことを。

 ともあれ、真澄がこんなことで、僕に嘘をつく必要もないか。

 そういえば、息を吹きかけられたり、肌をむにーってされたり、こしょこしょされたりは、一体?

「ねえ、真澄」
「なに?」
「さっき、僕が寝ている間、何かしなかった?」

 まだ寝ぼけていた間に、何かされた気がするんだけど。

「何やと思う?」

 質問を質問で返されてしまった。
 考えてみると、さっきのは、真澄が僕にしたことなわけで……。

「あの、ふー、ってされたり、肌をむにーってされたり、くすぐられたりは全部!?」
「当然、うちがやったんやで」

 そう笑顔で返されてしまった。
 
「う……」

 寝てるときに、なんてことをしてくれるんだ。
 凄く恥ずかしい。

「こないだのお返しや」

 真澄がくすくすと笑う。

「こないだって……」

 そういえば、前に真澄の家に起こしに行ったことがあったっけ。

「僕は、普通に頬をむにってしただけだよ」
「どっちでもたいしてかわらんわ。うちやって驚いたんやで」
「いやいや、レベルが違うよ……」

 特に、息を吹きかけられたのは、ぞわぞわしてしまった。

「でも、これであおいこってことでええやろ?」

 全然おあいこじゃない気がするけど。

 まあいいか。
 そう思えてしまうような朝のひと時だった。
しおりを挟む

処理中です...