オカンな幼馴染と内気な僕

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第二章 後輩少女が出来ました

第28話 後輩少女の真意

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「先ほどは、付け回すような真似をして本当にすいませんでした!」

 そう深々と、折原(おりはら)さんは頭を下げる。
いや、そこまで謝るほどのことでもないと思うんだけど……

「折原さんだっけ?えーと……」
「いえ。呼び捨てにしていただければ。私の方が年下ですし」

 そういきなり言われるとちょっと困るけど。

「じゃあ、奈月ちゃん、だっけ?さっき付けていたことだけど、別に気にしてないよ」
「それなら助かります」

 心底ほっとしたようにそう言う。
 まあ、下手をしたらストーカーぽい行為だから、
 罪悪感を感じるのはわからなくもないけど。

「でも、なんで僕たちをつけていたのかな?できれば、教えて欲しいんだけど」

 真澄の後輩だから、別に変なことをするつもりじゃないだろうし……

「それは……」
「それは?」

 言いよどむ折原さん改め奈月ちゃん。
 一体どんな理由なのだろうか?

「真澄先輩と付き合っているという方が、ふさわし……いえ、どんな方か知りたくて。つい」
「は?」
「え?」

 僕と真澄は目を見合わす。

「真澄、この子と仲が良いの?」
「……まあ、そうやね。凄く慕われているというかなんというか」

 少し歯切れが悪い。

「真澄先輩は凄いんですよ!部員誰に対しても優しいですし、ミスがあっても笑って許してくれますし、ちょっぴりお茶目なところもありますし、……」

 延々と真澄の凄いところを列挙する奈月ちゃん。
 真澄が男子に勘違いされやすいというのは聞いていたけど、部でこんなに人望があるとは。

「い、いや。言い過ぎやよ。うちは、普通にしとるだけや。コ、コウもこの子のいう事を真に受けんといてな。ほんとに、もう」

 慌てて僕に向かって弁解する真澄。誉め言葉の雨あられに、居心地が悪そうだ。

「う、うん」

 もちろん、僕も真澄の良いところを一杯知っているつもりだけど、そんな完璧超人だとは思っていない。照れ屋なところもあるし、うまいこと距離を掴めなくて悩んでいたことも、それ以外も。

 真澄も慕われるのは悪い気はしないけど、ここまで崇拝されると困惑しているようだ。それに、悪口を言われているならともかく、褒められているのなら反論はしづらいだろう。よし。

「あの、奈月ちゃん。ちょっといいかな?」
「……は、はい」

 マシンガントークから現実に戻って来たようだ。

「あのね。僕も、昔から一緒に育ってきたし、真澄の良いところは一杯知っているし、正直僕には勿体ないくらい良い人だと思う」
「は、はい」

 居住まいを正す奈月ちゃん。

「他の人の前でそんなん言われるの照れ臭いんやけど……」

 小さな声でそう言われる。僕も照れ臭いけど、いい機会だし。

「でもね。真澄はそんな天使とか完璧超人じゃないんだ。色々悩むし、失敗もする」
「は、はい……」
「だから、そんなに崇拝するように扱うのは駄目だよ」
「……」

 こういう、ちょっと思い込みの激しい子には少しきっぱり言ってあげた方がいい気がする。ちょっときつく言い過ぎたようだろうか。あわてて、少し付け足す。

「あ、もちろん、真澄を慕ってくれるのは嬉しいけど、そんな扱いをされると真澄も困っちゃうよ」

 落ち込ませちゃったかな?そう思って、奈月ちゃんの様子を伺う。

「あの。えーと、松島先輩、でしたよね?」
「別に僕も名前でいいよ。なんならタメでも」
「いえ。さすがに。じゃあ、宏貴先輩でいいでしょうか」
「じゃあ、それで」

 確認を取ってくる。こういうところは好感が持てるな。

「その。なんていうか、感動しました。宏貴先輩と真澄先輩は、お互いのことを理解し合って、愛しあってるんですね」

 じーんとしたような声でそう言われる。え。何この反応。

「あ、ああ。もちろん、真澄のことは好きだけど」

 何か、この子の間で、凄い関係が出来上がってる気がするんだけど。

「それで、部室での真澄先輩の反応も納得行きました」
「真澄、何言ったの?」

 そう問いかけるけど、目を逸らされる。まさか、そんな惚気トークでもしたんだろうか。真澄は、そういうのは控えめな方だから、無いと思いたいんだけど……。

「その。私、お二人のことを心から祝福します!できることがあったら何でも言ってください。よろしければ、LIN〇交換してもいいでしょうか?」
「そ、それはありがとう。どうぞ」

 スマホのアプリを起動して、IDを交換する。

 真澄の方を見ると、

「この子も、色々極端なんよね。悪い子じゃないんやけど」

 諦めたようにそう言われた。

 そうして僕に、礼儀正しい、ちょっと思い込みの激しい後輩が出来たのだった。
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