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第二章 後輩少女が出来ました
第29話 懐いたきっかけ
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結局、奈月ちゃんの乱入もあって、そのまま家の前で解散したのだった。
その夜。そういえば、あの子があんなにも真澄に懐くきっかけは何だったのだろう。
ふと、さっき交換したLI〇Eで無料通話をかける。
「もしもし。宏貴先輩ですか?どうしたんですか?」
「いや、ちょっとしたことなんだけどさ。なんで、真澄にあんなに懐いてたのか気になってね」
「……少しだけ長くなりますけど、いいですか?」
「うん。ぜひ」
そうして、奈月ちゃんの話が始まった。
「私が料理部に入って少しした頃の話です」
「うん。4月の頃かな?」
「はい。そのくらいです。それで、その頃、部で新しい調理器具を買おうかって話が出たんです」
料理部と言えば、料理をするのが主な目的だろうけど、作るものによってはそれなりの値段がする器具が必要なんだろうな。
「それで?」
「恥ずかしながら、私は、ちょっとはしゃいでたんです」
「はしゃいでた?」
まあ、あの暴走っぷりを見るとわかる気もするけど。
「実は、部の会議では、予算が足りないから買えないって意見が出たんです」
「そういうこともあるだろうね」
それがいくらするのかは知らないけど、部の予算なんてそんなに高いものじゃない。
「それでですね。あんまり言いたくはないんですが、家は結構裕福なので、ここで活躍しなきゃ、と思って「私が出します!」って言っちゃたんです」
「あちゃあ」
部の調理器具だから、部の予算で買うことが前提だろう。
奈月ちゃんの善意での申し出であっても、さすがに受け入れづらかっただろうな。
「それでですね。私が言った後、場がしーん、と静まりかえってですね」
「ああ、うん。わかるよ……」
何を言ってるんだろう、この子。とか、そういう事を思っていたんだろうな。
「はい。今思うと、ほんとに恥ずかしいばかりなんですけど。それで、皆、どう声をかけていいか、わかりかねてたんだと思います」
「そうかもね」
「そこで、真澄先輩だけは違ったんです。「おおきにな、ナツ。ただ、ちょっと額が大きいからな、後で別にそのお話は聞くから」って。それで、話を収めてくれたんです」
そんなことが。
「私としては、ほんとに「やっちゃったー!」って感じで、気まずかったんですけど、真澄先輩がフォローしてくれたおかげで、その場は収まったんです」
「それで?」
「私と二人になったところで、真澄先輩が「部の器具はな。部の予算で買うもんなんや。ナツの気持ちは嬉しいけど、ナツの家のお金を使う訳にはいかんのよ」って優しく諭してくれたんです」
「皆の前で恥をかくところを、真澄がフォローして二人の時に諭してくれたわけか」
「はい。で、その後も、度々、真澄先輩には助けてもらったり、失敗のフォローをしてもらったり。それに、部の皆にも一目置かれていて……」
「ああ、はい。どうどう」
暴走しそうだったので、宥める。
「ああ、また。すいません」
「気にしないでいいよ」
そういう自覚があるんだし。
「それで真澄先輩には、ほんとに感謝しても感謝しきれないんです」
「そっか。それで。うん。ありがとう」
そうして、通話を切った。
窓から夜空を見ながら物思いにふける。
(真澄は高校でも、そんな風に後輩の面倒を見ていたんだな……)
僕に見せる姿とは違う、真澄の普段を、もっと知りたいな、とそう思った夜だった。
その夜。そういえば、あの子があんなにも真澄に懐くきっかけは何だったのだろう。
ふと、さっき交換したLI〇Eで無料通話をかける。
「もしもし。宏貴先輩ですか?どうしたんですか?」
「いや、ちょっとしたことなんだけどさ。なんで、真澄にあんなに懐いてたのか気になってね」
「……少しだけ長くなりますけど、いいですか?」
「うん。ぜひ」
そうして、奈月ちゃんの話が始まった。
「私が料理部に入って少しした頃の話です」
「うん。4月の頃かな?」
「はい。そのくらいです。それで、その頃、部で新しい調理器具を買おうかって話が出たんです」
料理部と言えば、料理をするのが主な目的だろうけど、作るものによってはそれなりの値段がする器具が必要なんだろうな。
「それで?」
「恥ずかしながら、私は、ちょっとはしゃいでたんです」
「はしゃいでた?」
まあ、あの暴走っぷりを見るとわかる気もするけど。
「実は、部の会議では、予算が足りないから買えないって意見が出たんです」
「そういうこともあるだろうね」
それがいくらするのかは知らないけど、部の予算なんてそんなに高いものじゃない。
「それでですね。あんまり言いたくはないんですが、家は結構裕福なので、ここで活躍しなきゃ、と思って「私が出します!」って言っちゃたんです」
「あちゃあ」
部の調理器具だから、部の予算で買うことが前提だろう。
奈月ちゃんの善意での申し出であっても、さすがに受け入れづらかっただろうな。
「それでですね。私が言った後、場がしーん、と静まりかえってですね」
「ああ、うん。わかるよ……」
何を言ってるんだろう、この子。とか、そういう事を思っていたんだろうな。
「はい。今思うと、ほんとに恥ずかしいばかりなんですけど。それで、皆、どう声をかけていいか、わかりかねてたんだと思います」
「そうかもね」
「そこで、真澄先輩だけは違ったんです。「おおきにな、ナツ。ただ、ちょっと額が大きいからな、後で別にそのお話は聞くから」って。それで、話を収めてくれたんです」
そんなことが。
「私としては、ほんとに「やっちゃったー!」って感じで、気まずかったんですけど、真澄先輩がフォローしてくれたおかげで、その場は収まったんです」
「それで?」
「私と二人になったところで、真澄先輩が「部の器具はな。部の予算で買うもんなんや。ナツの気持ちは嬉しいけど、ナツの家のお金を使う訳にはいかんのよ」って優しく諭してくれたんです」
「皆の前で恥をかくところを、真澄がフォローして二人の時に諭してくれたわけか」
「はい。で、その後も、度々、真澄先輩には助けてもらったり、失敗のフォローをしてもらったり。それに、部の皆にも一目置かれていて……」
「ああ、はい。どうどう」
暴走しそうだったので、宥める。
「ああ、また。すいません」
「気にしないでいいよ」
そういう自覚があるんだし。
「それで真澄先輩には、ほんとに感謝しても感謝しきれないんです」
「そっか。それで。うん。ありがとう」
そうして、通話を切った。
窓から夜空を見ながら物思いにふける。
(真澄は高校でも、そんな風に後輩の面倒を見ていたんだな……)
僕に見せる姿とは違う、真澄の普段を、もっと知りたいな、とそう思った夜だった。
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