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1.貴方の座右の銘は?
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「あの!! いい加減起きてください!」
「ふぁっ!?」
耳元で響く大声に三徹目の俺も流石に飛び起きた。
声の主は桃色のミディアムヘアを耳にかけつつ小さくため息をつく高校生くらいの少女。
眼鏡越しに黄金色の瞳が不安そうに俺を見つめる。
「私の言葉が分かりますか? もう一度尋ねます、貴方の座右の銘を教えてください」
「…………えぇ……?」
質問の意図が理解できない。そもそも今の状況も理解できないぞ……?
たしか俺は大学の卒業論文を書いてる真っ最中で三日三晩寝ずに机に向かっていた。
つい居眠りしてしまったところを起こされて、急に『座右の銘』なんてものを聞かれている。
座右の銘っていつも自分の心に留め置いて自分の戒めだったり励ましにする言葉的なやつの事だよな?
なぜそんなに俺の座右の銘を聞きたがるのか……そんなもの人生で就活練習でしか聞かれた事ないぞ……。
そもそも突然そんな事を聞かれてまともに答えられる人はいるのだろうか? ましてや寝起きなんかに。
「……? あれ、質問間違えてる?……いや、合ってる……言葉が違うのかな……?」
俺の前にしゃがむ少女は何やらびっしり書き込まれた紙と睨めっこしながら首を傾げた。
その姿に日本ではあまり見ないタイプの色白美少女だなぁ、などと見惚れて……いる場合ではない。
日本であまり見ないのだから、もちろん俺の知り合いではない。
彼女の背後に見える部屋の内装も、石造りの地下室みたいな場所で、断じて俺が論文を書いていたアパートの一室ではない。
この状況から紐解くに今俺が置かれている状況は……いや、分からん。全くもって意味不明。
現実的に考えるなら誘拐だが、特に拘束されている様子はない。
唯一状況を理解していそうな彼女は紙一杯の文字の羅列を読み解くのに必死になっており、正直いつでも逃げ出せそうだ。
おそらく俺をここに連れてきた犯人であろう人間だが、彼女に悪意や害意は感じない。
それならばここは一つ賭けに出てみよう。被疑者に直談判だ。
「ねぇ、君、ちょっと聞いてもいいかな?」
「えっ!?……言葉通じてる…………」
俺の声に反応はあったものの返答はなく、なにやら考え込んでまた黙ってしまった。
「……えーと? もしもーし」
「はっ! すみません、えーと、そうですね、とりあえずまず先に貴方の座右の銘を答えてください! そうしたら貴方の疑問に答えます」
「またそれ……」
しつこいな、と思いつつ座右の銘を答えないと話が先に進まないようなので少し真面目に考えてみる。
普段はそんなものを意識した事がないのでいざ挙げようとするとなかなか思いつかない。
就活の練習では『一期一会』とか適当に答えてたけど……そもそもこれを答える事に何の意味があるんだろうか?
俺が頭を捻っているのを少女は不思議そうに見つめていたが、ふと怪訝そうに口を開いた。
「もしかしてさっき言ってた『唾付けときゃ治る』じゃないですよね……?」
「え、なんでそれ……んぁっ!?」
彼女がうちの婆ちゃんの口癖を唐突に発したので驚いたのだが、遅れて更に驚くべき事が起きた。
なんと俺の口から眩いまでの光が溢れてきたのだ!
「ふぁっ!?」
耳元で響く大声に三徹目の俺も流石に飛び起きた。
声の主は桃色のミディアムヘアを耳にかけつつ小さくため息をつく高校生くらいの少女。
眼鏡越しに黄金色の瞳が不安そうに俺を見つめる。
「私の言葉が分かりますか? もう一度尋ねます、貴方の座右の銘を教えてください」
「…………えぇ……?」
質問の意図が理解できない。そもそも今の状況も理解できないぞ……?
たしか俺は大学の卒業論文を書いてる真っ最中で三日三晩寝ずに机に向かっていた。
つい居眠りしてしまったところを起こされて、急に『座右の銘』なんてものを聞かれている。
座右の銘っていつも自分の心に留め置いて自分の戒めだったり励ましにする言葉的なやつの事だよな?
なぜそんなに俺の座右の銘を聞きたがるのか……そんなもの人生で就活練習でしか聞かれた事ないぞ……。
そもそも突然そんな事を聞かれてまともに答えられる人はいるのだろうか? ましてや寝起きなんかに。
「……? あれ、質問間違えてる?……いや、合ってる……言葉が違うのかな……?」
俺の前にしゃがむ少女は何やらびっしり書き込まれた紙と睨めっこしながら首を傾げた。
その姿に日本ではあまり見ないタイプの色白美少女だなぁ、などと見惚れて……いる場合ではない。
日本であまり見ないのだから、もちろん俺の知り合いではない。
彼女の背後に見える部屋の内装も、石造りの地下室みたいな場所で、断じて俺が論文を書いていたアパートの一室ではない。
この状況から紐解くに今俺が置かれている状況は……いや、分からん。全くもって意味不明。
現実的に考えるなら誘拐だが、特に拘束されている様子はない。
唯一状況を理解していそうな彼女は紙一杯の文字の羅列を読み解くのに必死になっており、正直いつでも逃げ出せそうだ。
おそらく俺をここに連れてきた犯人であろう人間だが、彼女に悪意や害意は感じない。
それならばここは一つ賭けに出てみよう。被疑者に直談判だ。
「ねぇ、君、ちょっと聞いてもいいかな?」
「えっ!?……言葉通じてる…………」
俺の声に反応はあったものの返答はなく、なにやら考え込んでまた黙ってしまった。
「……えーと? もしもーし」
「はっ! すみません、えーと、そうですね、とりあえずまず先に貴方の座右の銘を答えてください! そうしたら貴方の疑問に答えます」
「またそれ……」
しつこいな、と思いつつ座右の銘を答えないと話が先に進まないようなので少し真面目に考えてみる。
普段はそんなものを意識した事がないのでいざ挙げようとするとなかなか思いつかない。
就活の練習では『一期一会』とか適当に答えてたけど……そもそもこれを答える事に何の意味があるんだろうか?
俺が頭を捻っているのを少女は不思議そうに見つめていたが、ふと怪訝そうに口を開いた。
「もしかしてさっき言ってた『唾付けときゃ治る』じゃないですよね……?」
「え、なんでそれ……んぁっ!?」
彼女がうちの婆ちゃんの口癖を唐突に発したので驚いたのだが、遅れて更に驚くべき事が起きた。
なんと俺の口から眩いまでの光が溢れてきたのだ!
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