俺の唾液はエリクサー!?~座右の銘がスキルになる異世界で寝ぼけて婆ちゃんの口癖答えてしまった件~

鈴咲絢音

文字の大きさ
3 / 10

2.召喚とか特異スキルとかなんだってんだ!?

しおりを挟む
 口の中が光り始めてビームでも発射してしまうのかと思ったが、そんな事はなくただただ舌が光っていただけだった。

 とはいえ、当事者である俺にとっては只事ではない。

「な、な、な、なんだこれ!?」

 パニックになりつつ、なるべく光を遮ろうと両手で口を抑えた。

 目の前の少女も訳が分からないといった顔で呆然と俺の方を見ている。

 その時、頭の中に無機質な声が響いた。

『メディファ・マナによるヤクシジ・ライの召喚契約完了。またヤクシジ・ライは召喚ボーナスとして特異スキル【回復唾液】を取得』

 ……は? 理解が追いつかない。

 召喚、って、ファンタジーっていうか、小説とかアニメとかでみる所謂『異世界転移』ってやつ?

 てか今の声何? 誰? 少なくとも俺と同じく混乱している色白美少女でない事は確かだ。

 あと最後の『特異スキル』? 聞き慣れない言葉だ。

 スキル自体は異世界ものあるあるだと思うが、『特異』って事は俺特有のスキルって事だろうか。

 【回復唾液】ってまたヘンテコな……いや待てよ、これってさっき言ってたやつじゃないか?

 『唾付けときゃ治る』=【回復唾液】……しっくりはくる。くるけども。

 ぶっちゃけかなり微妙というか……なんか変態チックでは?

 いや、一旦そこは置いておこう。それよりまずは現状把握だ。

 さっきの出処不明の声の言う通りなら、俺もとい薬師寺來生をここに召喚したのはメディファ・マナ……つまり目の前の少女だろう。

 確認も兼ねて未だ状況が飲み込めていなさそうな彼女に声をかけてみる。

「えーと、君がメディファ・マナ、さんで合ってる?」

「えっ!? どうして私の名前を?」

「え、だってさっき誰か分からないけど言ってたじゃん、メディファ・マナによる召喚契約がどーのこーのって」

「そ、それはまさか! 異世界人のみが聴くという『神のお告げ』……!」

 少女は黄金色の瞳を更に輝かせて、手を組み俺に対して祈るポーズをする。

「他には! 他には何か聴いていませんか!?」

「え、えーと? たしか、『召喚ボーナスとして特異スキルを得た』とか何とか……」

「『特異スキル』!! 本当にあったんだ……!」

 少女もといメディファさん(が苗字でいいのか?)は一人感激して鼻息荒く眼鏡のガラスを曇らせている。

 せっかくの美人が台無しだな……と思いつつ、だいぶ置いてけぼりにされているんだが。そろそろ俺にも状況説明して欲しいよ?

 少々俺の苛立ちが表に出てしまったのに気づいたのか、メディファさんはハッと我に返るとコホンと一つ咳払いをした。

「す、すみません、一人で盛り上がっちゃって……まさか本当に成功するとは思わなかったから……。
 えと、とりあえずまずは自己紹介から、ですかね。私はメディファ・マナ、貴方を召喚した召喚士です」

 当たり前のように召喚士だと名乗るピンク頭の少女に、召喚士なんてゲームでしか聞かねぇよ、という野暮なツッコミをぎりぎりのところで耐えたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...