俺の唾液はエリクサー！？～座右の銘がスキルになる異世界で寝ぼけて婆ちゃんの口癖答えてしまった件～

3．召喚した理由くらいは知りたい

　召喚士だという少女、メディファ・マナによって異世界に召喚されたらしい俺、薬師寺來生、25歳。

　未だ訳の分からない状況を少しでも理解すべく頭をフル回転させているが、とにかく情報が足りない！

　今唯一の解決の糸口はこのピンク頭の少女にかかっている。とにかくまずは彼女から話を聞こう。

「メディファさん」

「は、はい！」

「色々と聞きたいんだけど、まずはどうして俺を召喚したか、理由を教えてもらえる？」

「あ……えぇーと、それは、ですね…………」

　答えやすそうな質問を選んだつもりだったが、メディファさんはあからさまに口ごもった。

　かと言って後回しにできる疑問でもないので、とりあえず笑顔と無言の圧で答えを待ってみる。

　すると俺の視線に怯えた様子でメディファさんは慌てふためいた。

「わ、分かりました！　答えます！　答えますから！！　変な圧力かけないでくださいよぉ！」

「え？　そんなつもりはなかったんだけどなぁ」

「ひいぃ、異世界人怖い……」

　俺は突然異世界から人を召喚する君の方が怖いと思うよ？

　その思いは胸に秘めて彼女の答えを促す。

「で？　理由は？」

「ひっ……あの、どんな理由でも怒らないと約束できますか？」

「それを聞いて約束する気が無くなったよ」

「うわあぁ、私のバカぁ」

「とりあえず答えようか？」

　早くしてくれないと理由を知る前に怒っちゃうかもよ？

　こちとら聖人じゃないから、こんな意味の分からない状況であんまり焦らされるとさすがに苛つくよ？

　そんな苛立ちを抑えようと笑顔を作ってみるが何故か怯えられる始末。困ったものだ。

　しかし観念したのか彼女は黄金色の瞳を泳がせつつ、ぽつりぽつりと話し始めた。

「えっと～、話せば長くなるんですが…………」

「うんうん、どうぞ続けて」

「はぃ……えと、私の家系、というかこの村全体が代々召喚士を排出している特殊な村でして。
　その中でも私の先祖はかなり高難度の『異世界人』の召喚に成功したという優れた召喚士だったそうです。
　その話を私のお婆ちゃんがよく話してくれて、でも皆ボケ老人の戯言だって真に受けてなくて、私も100%信じてた訳ではなかったんですけど……その……つい出来心で…………」

「つまり特にこれといった理由なく俺の事召喚したんだ？」

「ひっ……ご、ごめんなさい、ごめんなさい！
　で、でも、仕方ないじゃないですかぁ、激レア異世界人召喚の方法をお婆ちゃんが連呼してるんですよぉ、気になっちゃうじゃないですか！」

　俺の圧に耐えきれなくなったのか、メディファさんは目に涙を溜めつつ遂に開き直って逆ギレっぽく叫んだ。

「だって成功するなんて思わなかったし！？　異世界人なんて召喚士千人に一人召喚できるかどうかって言われてるのに！
　ていうか貴方召喚獣のくせに何様！？　別に何か召喚するのに理由は必要ないし、そもそも召喚獣の都合とか知らないし！！」

　彼女は一通り叫び終わるとハアハアと肩で荒く呼吸を繰り返す。

　そんな少女の変わり様に驚きつつ俺は直感する。

　この異世界、思ってたよりヤバいかも。