俺の唾液はエリクサー!?~座右の銘がスキルになる異世界で寝ぼけて婆ちゃんの口癖答えてしまった件~

鈴咲絢音

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4.俺が召喚獣?って事は……

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『別に何か召喚するのに理由は必要ないし、そもそも召喚獣の都合とか知らないし!!』

 メディファさんのこの台詞は何故だかとても引っかかった。

 『召喚』なんて事象自体現実離れしているから、召喚士の常識とか召喚獣、つまり俺みたいな存在がこの世界でどういった扱いなのかなんて考えが及ばなかった。

 ただ、例えば現実で言うゲームにおける召喚獣と同じだったら?

 俺はゲーマーという程ではないし、最近は卒論の事もあってあまりゲームで遊べていなかったが知らないわけでもない。

 少なくとも俺の知る召喚獣は召喚士を主とし、命をかけて主人を守り、必要なくなったら──あっさり消される、そんな存在だった。

 もちろん絆要素とか出し入れ自由とかゲームによって仕様は異なる。

 ……ものによっては融合とか生贄とかってのもあったな…………。

 この異世界での立場はまだはっきりしないが、少なくとも今言えるのは──この召喚士の少女、メディファ・マナにあまり楯突かない方がいいのかもしれない。

 言葉は通じるし、今のところ同じ人間として対応してくれているが、テンパったとはいえ人の事を『召喚獣』呼ばわりするような女だ。

 もしかすると、召喚獣の主としての権限を持って無茶苦茶させられるかもしれない。

 そうなる前に、先手を打っておくか。

「メディファさん」

「な、何よ! なんか文句でもあるんですか!?」

 少し前までのおどおどしていた様子と打って変わって、逆ギレの勢いのまま喧嘩腰に食ってかかる彼女だがこちらと目を合わせようとはしない。

 よく見ればぎゅっと胸の前で握った両手は震えていた。

 急に強気に出てきたのは『召喚士』としての虚勢なのかもしれない。

 それならば俺は『召喚獣』としての誠意を演じてみるか。

 メディファさんの眼鏡の奥から突き刺すような視線を感じながら、彼女の前に跪いてみた。

「……え?」

「メディファさん、いや、メディファ様。異世界に来たばかりで混乱し、不躾な態度を取ってしまった事、お詫び申し上げます。
 私薬師寺來生、不肖ながらこれからは誠心誠意尽くしてまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします」

「え、え、えぇっ!? ど、どうしたんですか、急に! 人が変わっちゃった!?」

 メディファさんは俺の態度の急変に随分驚いているが、ちょっと前の君もなかなかだったよ、と心の中でぼやいておく。

 彼女が怪訝そうに俺の顔を覗き込むので温和な微笑みを返しておく。

 目が合った彼女は黄金色の瞳をぱちくりさせ、少し照れくさそうに頬を赤らめた。

 もう一押しかな、そう考え俺はスっと右手を差し出し彼女に乞い願う。

「メディファ様、どうかこの私めにこの世界の理をご教授ください」

「~~~~~っ!」

 メディファさんは口をぱくぱく動かすが声になっていないので何を言ってるか分からない。

 とりあえずはこれで俺に敵意がない事、そして従順であると装えていればいいのだが。

 そう、俺はこの異世界で生き抜く方針として、メディファさんが敵か味方か判断に迷う今はとりあえず懐に入る事に決めたのだ。
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