俺の唾液はエリクサー!?~座右の銘がスキルになる異世界で寝ぼけて婆ちゃんの口癖答えてしまった件~

鈴咲絢音

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5.漸く自己紹介も済んだところで

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 態度を改めた俺に困惑を隠せないメディファさんは、顔を赤らめつつしどろもどろ話し始める。

「あ、あ、あ、あの、その、私、そんな偉い召喚士でもないんで、その……『メディファ様』っていうの、止めてもらっていいですか?」

「かしこまりました。では」

 なんとお呼びしましょう? と尋ねようとした矢先、顔の前にビシッと人差し指を突きつけられる。

「その堅苦しい敬語もやめてくださいっ、話しづらいです。さっきまでのフランクな感じでいきましょ?」

 さっきまで緊張と不安で縮こまったり、逆ギレして喚き散らしていた少女が漸く笑った……酷くぎこちない愛想笑いだが。

 少しずつ心を開いてくれていると思って良いのだろうか。

 いまいち『召喚獣』としてのポジションが理解できないが、少なくとも彼女は俺を一応は人間として扱うつもりのようだ。

 膝も痛くなってきたので一旦跪くのも止めて立ち上がる。但しメディファさんに威圧感を与えぬよう少し姿勢は屈めて。

「分かった。じゃあお互い敬語はなしにしよう」

「そ、そうしましょ! あ、いや、そうだね!」

「うん。で、俺の事は『ライ』でいいよ。君はなんて呼べばいい?」

「あ、私も、『マナ』で大丈夫」

 下の名前を差し出した俺に対して彼女も同じように答えた。

 という事はこの世界では苗字・名前の順で名乗るようだな。

 メディファさん改めマナの容姿は色白だし目鼻立ちくっきりしてる西洋人寄りだから、西洋風異世界だと思ったんだがそこは違うのか。

 なんてこの異世界を考察しようにもまだほとんど情報を手に入れられていない。

 情報源となりうるキーパーソンと漸く落ち着いて話せるようになり、やっとスタートラインに立った所だ。

 さて、早速根掘り葉掘り聞いてくぞ、と意気込む俺の出鼻はしょんぼり顔のマナにくじかれた。

「え、どした?」

「あの、ライ……さっきは失礼な事を言ってごめんなさい」

「あー……」

 人を召喚獣扱いした事に対してだろうか。それともなんとなく召喚した事?

 とりあえず悪い事したっていう自覚はあるんだ。

 と、女の子がしおらしく反省しているのに放置は良くないな。

「ま、もういいよ。きっと俺の世界とは違う常識もあるんだろうし。
 そもそも俺は君にとってはただの召喚獣でしかないんだろ?」

「う……まぁ、それはそうなんだけど……まさか本当に人が召喚できるとは思わなくて……」

「そんなに人間の召喚って難しいんだ?」

「うん、召喚士千人いて漸く一人できるかどうかって言われてる。大体は獣型かな」

 だいぶ落ち着いて話せるようになってきたマナは、紺色眼鏡をクイっと上げながら召喚獣について解説を続ける。

「獣型は召喚した時に召喚士がいくつかスキル付与術を行って、ある程度自分好みにカスタマイズできるの。
 異世界人の召喚は成功例どころか、そもそも文献が少なくて噂程度の言い伝えしか知らないんだけど」

 マナは一度言葉を切ってチラリと上目遣いで俺を見る。

 小動物のような可愛いらしい動きについドキリとしてしまった。それを隠そうと俺はすぐ澄まし顔を取り繕い首を傾げてみせた。

 しかしその努力虚しく、次の彼女の言葉はより俺を動揺させるのだった。

「異世界人にスキル付与術は使えないけど、代わりに『座右の銘』を聞くとそれに因んだ『特異スキル』を得るんだって」
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