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2、ロマンチックのお手本
遅くなってすまない、もうすぐ着く、というヴィデロさんからのメッセージに、顔が緩む。
ヴィデロさん待ちということでまだ料理は誰も注文していない。お店の方にはその旨伝えていて、すでに了承してもらっていた。
「ヴィデロさんもうすぐ来るって」
「一緒の場所に住んでるのに待ち合わせに目を輝かせるなんていつまで経っても可愛いわね」
ワクワクと伝えると、ブレイブに突っ込まれてしまった。
そりゃ……ブレイブを見てると俺の男らしさっていう概念が揺らいでしまいそうだけど、美人の女の子から可愛いって言われるのはなんていうかうん。ちょっと複雑。
だって嬉しいんだもん、と口をとがらせていると、視線の端で、入り口からヴィデロさんが入ってきたのが見えた。
コートを手にしてシャツを羽織り、長い足をスラックスで包んでいるヴィデロさんは、とてもかっこよくて、そんなヴィデロさんがその手に花束なんか持ってる姿なんて、もう、至福以外の何物でもなかった。
って、花束……?
ヴィデロさんの手に釘付けになっていると、俺たちのテーブルに来たヴィデロさんは、皆に「遅くなってすまない」と謝った後、俺の椅子の前に片膝をついた。
そして、オレンジと黄色が基調の花束を俺に差し出して、ふわっと笑顔を見せた。
はい、眼福! 好き! 花束とヴィデロさんの笑顔なんて、最高のプレゼントいただきました! もう、ほんと好き! 素敵すぎて禿げそう……!
あまりの目の保養に心臓をバクバクさせながらガン見していると、ヴィデロさんが口を開いた。
「ハッピーバレンタイン。ケンゴ、このブーケを受け取ってくれ。先程フラワーショップの前を通った時、この花束が目に入って、これを持ったケンゴを見ることが出来たら俺にとって最高のプレゼントだな、と思ってつい買ってきたんだ」
「ヴィデロさん……!」
セリフまで素敵すぎる、と内心悶えながら花束を受け取ると、今度は胸ポケットから小さな包みを取り出した。
「こっちが本当のプレゼント。この間兄と出掛けた時に一目ぼれしたネクタイピンだ。俺の色を身に着けて欲しくて、グリーンの石を選んでしまった。使ってくれるか?」
ぐぅ……。
思わず変な声が漏れた。
何ですかこれ。このシチュエーションのすべてがサプライズプレゼントだよ……!
俺、なんていうか、こんな素敵なパートナーってだけでもう何物にも代えがたい最高のプレゼントをもらった気分なんだけど。
箱も受け取らずにヴィデロさんに抱き着くと、「ほらあ!」と増田の声が聞こえた。
「雄太! これが最高のお手本だから! ちょっとはヴィデロさんを見習ってもいいと思う!」
増田がヴィデロさんを指さし、雄太に食って掛かる。でも雄太はケロッとした顔をして、ヴィデロさんはヴィデロさん、俺は俺だろ、と増田の言葉を否定した。
「増田、考えてもみろ。俺がこんな風に颯爽と花束を差し出して、同じような言葉を言うとするだろ。ヴィデロさんならこんなにも似合うが、俺がやるとな、唯に熱があるのか心配されるんだよ! 唯に心配かけるくらいだったら、俺はかっこよさを捨てる! それが俺だ!」
すっごくかっこいいようなことを言ってるけれど、なんていうか、うん。そこはかと香る残念さが雄太らしい。
あんまりといえばあんまりな言葉に、ヴィデロさんも笑いながら、俺の横に腰を下ろした。
皆で楽しくご飯を食べて、各自解散した。
増田はブレイブの家族全員分の懐石弁当を予約したから、それを取りに行ってブレイブの家族とワイワイご飯を食べるらしい。いつもそんな感じらしい。私以上に家族に馴染んでるんだよ、と嬉しそうに教えてくれるブレイブは、凄くきりっとかっこいい顔でニヤリと笑った。それはまさにブレイブのニヤリ顔そのままだった。
俺は花を抱えて、タイピンの入った箱をカバンに大事にしまって、ヴィデロさんと共に帰路についた。
どこかにデートでもするか、と言われたけれど、夜のご飯を豪華にしたい俺は、家デートがいい、とちょっとだけわがままを言ったんだ。
今日はヴィルさんも佐久間さんも早めに仕事を切り上げると言っているし、豪華なご飯はヴィデロさんだけが食べるわけじゃないけれど、気合を入れて作りたい。
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